都心タワマンからワンルームに転居……ある炎上YouTuberのV字回復に見る「うまい謝罪テクニック」とは

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都心タワマンからワンルームに転居……ある炎上YouTuberのV字回復に見る「うまい謝罪テクニック」とは

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秋カヲリ(ライター、心理カウンセラー)

昨今、著名人や企業などの「炎上」とそれに伴う「謝罪」をたびたび見聞きします。一度落ちた好感度を取り戻すのは簡単なことではありません。しかし、謝り方を間違えなければ再び支持を得られることもあると、ライターで心理カウンセラーの秋カヲリさんは指摘します。

近年増加する「炎上」と「謝罪」

 近年、著名人の「炎上」とそれを受けた謝罪案件を数多く目にするようになりました。SNSの普及によってさまざまな意見が飛び交うようになった現代、著名人が好感度を保ちファンを獲得するためには「いかにうまく謝罪するか」が問われているようです。

もし万が一「炎上」してしまった場合、どのように「謝罪」するのが効果的なのか? ある女性の事例を基に考える(画像:写真AC)



 こうした流れは芸能人だけでなくネットで活躍するインフルエンサーにも及んでおり、年々影響力を増しているYouTuberはその筆頭格です。失敗と評される謝罪会見によって好感度を取り戻せない著名人が少なくないなか、炎上後に「完璧」などと称される謝罪対応をして人気を回復させたインフルエンサーがいます。

 抜群の知名度を武器にビジネスで成功し、東京都心の超高級マンションに住むなど若くして巨富を築いていた、ある女性YouTuberの例です。

 彼女は、自身がプロデュースした美容関連商品に誇大広告があったとして多くのバッシングを受け、炎上直後はチャンネル登録者数が2万人も減りました。

 謝罪を伝えるYouTube動画では、“支持率”のバロメーターとも言える「高評価」が5.4万なのに対して「低評価」は12万と、約7割が低評価。視聴回数は654万回で、芸人・宮迫博之さんが吉本興業退社後に公開した謝罪動画の564万回を大きく上回っており(2021年2月時点)、かなりの注目と批判を集めたことが分かります。

 失った信頼を取り戻すのは難しく、スキャンダル後は好感度を維持できない人がほとんど。しかし彼女は謝罪から1か月後にYouTube動画投稿を再開し、わずか2か月でチャンネル登録者を約20万人も伸ばして150万人を突破しました。

 復帰から4か月経った2021年2月現在は164万人と伸び続けていて、むしろかつて以上の人気(登録者数)を獲得しています。

 人々に受け入れられたとも捉えられる彼女の謝罪。そこにはどのような理由があったのでしょうか。

日本人に響く「謝り方」5法則

 この極めて例外的な再起力は、日本人受けする「五つのポイント」を押さえた対応によるものだと筆者は考えます。

1.“切腹”

 その女性は騒動が起きてすぐに謝罪動画を公開し、「返品希望者への返金を自費で行う」ことを表明。それに掛かる手数料も全額負担するとして、返金窓口をアナウンスしました。

 販売会社ではなく彼女自身が支払うわけで、文字通り自腹を切ったことがイメージ回復に少なからず貢献しています。

 結果、復帰後の報告動画では高評価が5万、低評価が2.8万と64%が復帰を好意的に捉えました。謝罪動画では7割だった低評価とほぼ逆転する形になっており、復帰時点ですでに一定程度の好感度を回復していることがうかがえます。

 また、いかに早く謝罪し対応するかといったスピード感も明暗を分けます。時間が経つほど「逃げている」「仕方なく謝った」といったネガティブイメージが色濃くなり、好感度回復が難しくなるからです。

 さらに彼女は、返金にかかる費用などの金額も随時公表し、現在の状況を報告し続けることで“誠実な印象”を演出しました。謝罪後の対応をできる限りオープンにして「見える化」することで、信頼回復の一助としたのです。

 彼女は事務所に所属せずフリーで活動していたため、こうした迅速かつ柔軟な対応がしやすい状況でした。

2.重労働

 ヒット商品だったため返品の数も多く、彼女が負った返金推定額は数億円というケタ違いの数字。彼女はそのおよそ半分をまず支払い、足りない分を稼ぐために銀座と六本木の飲食店を掛け持ちで働くと公表しました。

「週7で昼も夜も働く」と宣言

 日中はYouTube撮影、平日の夜は銀座、土日の夜は六本木で働くという過密スケジュールで、返金額の重みが感じられます。

 YouTubeの視聴者も直接会いに行ける接客業であり、かつ出勤スケジュールも公開するなど、ここでも「見える化」を駆使。有名インフルエンサーとしては勇気の要る切迫した行動に、手のひら返しをして応援に回る視聴者も多く見られました。

夜の銀座のイメージ。きらびやかなこの街には、さまざまな思いを抱えて集う人たちがいる(画像:写真AC)



 銀座の店では出勤初日から破竹の勢いで成果を出し、2021年の年明けには返金額を支払う目途が経っています。

 また、単に「重労働」というキャッチーさだけで煙に巻くのではなく、仕事に臨むその姿勢にも一連の謝罪対応の一端が垣間見えました。

 彼女は「お金のためでもあるが、仕事としてやりたいと思ったからやる」というスタンスでプロ意識を前面に出して臨み、その様子を動画でも公開。すると女性視聴者からは「憧れる」、男性からは「支えたい」といった声が集まり始め、人気や信頼の回復へつながっていったのです。

3.“土下座”

 復帰第1弾として公開した動画は、街角インタビューという形で彼女が一般人に謝罪する企画ものでした。実際は土下座しませんが、有名インフルエンサーが見ず知らずの人に頭を下げて回るのはそれに近いインパクトがあります。

 最初は酷評していた人も、いざ本人が目の前で頭を下げるとそれ以上責めません。視聴者も一般人と自分自身とを重ね合わせやすく、留飲を下げる効果があったようです。こうしたインパクトのある謝罪動画を復帰第1弾に持ってきた点も、驚きをもって受け止められていました。

視聴者の共感を集める巧みな行動

 この「謝罪動画」企画は、さらなる人気を集めるというよりも“火消し”に貢献したと考えられます。

4.都落ち

 彼女は騒動が起きるまで東京都心のタワーマンションに住み、さらに新築の高級マンションも購入して頭金をすでに支払っていたといいます。しかし返金や違約金が膨らんだことから平凡な賃貸ワンルーム(1階)に引っ越し、新築マンションの購入もキャンセルしました。入金済みの頭金はキャンセル料として相殺されるそうです。

栄華の象徴ともいえる、東京都心にそびえるタワーマンションのイメージ。そこから急にワンルームでの生活に切り替えた「覚悟」とは?(画像:写真AC)



 現在も都内には住んでいると思われますが、環境のランクは格段に落ちています。ずっと高級マンション住まいを見ていた視聴者からすると衝撃的で、冷蔵庫すら置かずにクーラーボックスで生活している様子を公開した動画は高評価が約7割。親近感ある生活と苦労をにじませることで高い好感度を獲得したものとみられます。

5.口コミ

 ここまで巧みな謝罪対応を見せている女性ですが、それだけでは自作自演と受け取られるケースも間々あります。好感度回復における最後の決定打となったのが「彼女を救いたい」と掲げる多くのYouTuberたちの動画でした。

 たとえば正規の広告やテレビCMよりも第三者の口コミの方が信頼されることが少なくないのと同じように、ほかのYouTuberたちの参入は「彼女の人柄ゆえのもの」と捉えられ、謝罪の信ぴょう性を高めました。

 コラボ動画や応援動画で支援するトップYouTuberたちは、叱ったり禊(みそぎ)企画をさせたりして、あえて彼女を「下げて」います。こうすることでただの馴れ合いだと捉えられないようにし、うまく笑えるエンタメに昇華しているのです。友人が叱咤激励しているような見え方になり、視聴者もまた一緒に応援したいといった気持ちにさせられたのでしょう。

謝罪はチャンス 「弱い人」は愛される

 この女性の謝り方のポイントを大きくまとめると、「速攻で謝り、何度も謝る」「経済的 or 精神的痛手を進んで引き受け、公開する」「自虐・他虐ネタにしてエンタメ化する」の三つです。

 謝罪はピンチですが、場合によってはチャンスでもあります。たとえ大きな失敗をしても、誠実に非を認めて謝罪し、「応援したくなるキャラ(立ち位置)」に転身することで、今まで以上の支持を集められることもあるようです。

 人は感情で動く生き物ですから、感情移入できない“強い人”よりも、感情移入できて共感できる人のほうが愛されます。この女性のケースは、失敗しても自分をごまかしたり取り繕ったりしようとせず、弱さをさらけ出して前進する姿勢を持つのが良いということを示唆する事例だったと言えるでしょう。

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