都立中高一貫校「高校募集停止」の衝撃 受験も結局「カネ次第」なのか?

近年、高校受験ができない都立学校の完全中高一貫化が進んでいます。そのメリットとデメリットについて、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。


高校からの入学募集停止が招くもの

 東京都内の難関私立学校は完全中高一貫である学校が少なくありませんでした。現在、その動きはさらに加速しています。

 男子校の本郷中学校・高等学校(豊島区駒込)は2021年度入学者試験から、女子校の豊島岡女子学園(豊島区東池袋)は2022年度入学者試験から、高校での生徒募集停止を決定しました。

 都内の難関私立学校で高校入試を実施しているのは、早稲田大学(新宿区戸塚町)や慶応義塾大学(港区三田)といった有名私立大学の付属校や系列校が中心。そのほかで例外なのは開成中学校・高等学校(荒川区西日暮里)くらいです。

 完全中高一貫校化は、6年間という長い時間をかけて生徒を育てたいという学校側の思惑や、先取り学習ができる分、進学実績で結果を出しやすいメリットがあります。

 一方、高校からの入学募集を停止するため、

・中学受験の激化
・通塾の低年齢化

の懸念だけでなく、家庭の経済力によって子どもの進路が早く決まってしまう恐れがあります。

 そんななか、学費面などから人気を集める都立の中高一貫校も、近年は高校からの入学募集を停止する動きがあり、波紋を広げています。

公立学校でも完全中高一貫校化へ

 国の教育方針もあり、21世紀に入ってから公立の中高一貫校が全国的に誕生しています。

 東京都では2005(平成17)年に開校した白鴎高等学校・ 付属中学校(台東区元浅草)を皮切りに、現在10校の都立中高一貫校があります。倍率は年度や学校によって変わりますが、おおむね5倍前後で推移しており、合格を勝ち取るのは容易ではありません。

台東区元浅草にある白鴎高等学校・ 付属中学校(画像:(C)Google)



 東京都の中高一貫校は、

・前期3年と後期3年に分けている「中等教育学校」
・都立中学校と都立高校の顔を持つ「併設型」

の2パターンがあります。

 中等教育学校では完全中高一貫校、併設型では高校入試が行われますが、近年この方式が大きく変化をみせているのです。

ツイッター上でも話題に

 2019年2月に東京都教育委員会が発表した「都立高校改革推進計画・新実施計画(第2次)」から、併設型の学校も高校での生徒募集停止の計画が公表されました。

「都立高校改革推進計画・新実施計画(第2次)」(画像:東京都教育委員会)

 実際、五つある併設型のうち、すでに4校が2021年度や2022年度入学生の募集停止を決定しています。

 そして5月下旬、前述の白鴎高等学校・ 付属中学校でも、令和5年度入学生(現在の中学2年生)から高校での生徒募集を停止することが発表されました。

 東京都の方針に、ツイッター上では全てが完全中高一貫校になることで中学での募集定員が増えるという指摘がある一方、中学受験の過熱を懸念する声も上がっています。

 私立学校はその教育理念から、募集要項の変更は珍しくありませんが、都立学校はそう簡単に片付けられません。

「持つ者」「持たざる者」が鮮明化

 実際、高校からの生徒募集を停止した都立の中高一貫校では中学入試の定員が増えています。その結果、

「高校入試からではチャンスが少なくなるので、中学受験させなければ」

と不安にかられた保護者が現れることで、中学受験はますます過熱するでしょう。

 ほかの地域に比べてもともと中学受験が盛んな都心では「受験する・しない」を発端とする学力格差が以前から指摘されています。都立中高一貫校の方針変更は、少なからずこの格差を助長させる可能性も秘めています。

 また、難関私立学校を目指すと教育費が膨れ上がるため、金銭的にある程度余裕がないと足を踏み入れることができません。もちろん都立の中高一貫校の合格を目指す場合も同様です。

中学受験のイメージ(画像:写真AC)



 首都圏では、

・私立中学や国立大学付属中学を中心とした受験に強い塾
・公立の中高一貫校の受験に強い塾(適性検査や面接対策に特化)

が棲み分けられています。いずれにせよ合格を目指すなら私立中学と同じように通塾する方が有利です。家庭の経済力次第で子どもの学習機会の差も顕著に出るため、子ども本人に関係なく「持つ者」「持たざる者」が鮮明化します。

 そして、都立高校での募集停止は「遅咲きタイプ」の子どもを持つ親にとって、選択肢が狭まります。

 小学生のなかには勉強への意欲を増すのに時間がかかったり、マイペースになったりする子どもも少なくありません。中学受験に間に合わなかったばかりに、中学校で学力が向上しても自分の成績にマッチする学校が少ないという現実が待ち受けているのです。

落ち着いた環境で6年間学べるのは魅力

 保護者としては高校受験がない分、6年間落ち着いた環境で学びつつ大学受験に備えられることは理想的です。

 多感な時期に、腰を据えて何かに取り組むことは子どもにとってもメリットが大きいことは明らかです。しかしながら、東京に住んでいる子ども全員が中学受験に挑戦できるわけではありません。

東京都のイメージ(画像:写真AC)



 東京都は公立小の児童数が令和6年度まで、公立中の生徒数が令和7年度まで増加すると見込んでいます。東京都心では子どもの数は減るどころか増えています。

 そのためにも、過熱する中学受験に乗り遅れてしまった子どもたちの選択肢を作ってあげることが、私たち大人たちに課せられているのです。


【事前に要チェック】東京都の「公立小学校の児童数」「公立中学校の生徒数」の推移

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