いよいよ明日スタート 「レジ袋有料化」が招くのは環境意識の向上か、はたまた単なる家計の負担増か?
有料化と環境問題の関係性 明日7月1日(水)から、スーパーやコンビニなどで当たり前のように無料配布されてきたレジ袋が有料化されます。 レジ袋有料化のイメージ(画像:写真AC) すでに一部のスーパーは有料配布に切り替えている店もありますが、少しでも家計負担を軽減するため、マイバッグを持参している人は少なくありません。 レジ袋を有料化する流れは、環境問題から出発しています。それは、旧来のレジ袋が石油由来の原材料で製造されていたためです。 石油は有限な資源です。枯渇すれば、私たちの生活は成り立たなくなります。 今般、ガソリン車から水素を動力とする燃料電池車への切り替えが進められてきていますが、旧来のレジ袋も石油を原材料にしているので、使用を抑制する機運が高まったのです。 また、旧来のレジ袋は海洋生分解性の素材をあまり使わずに製造されてきました。そのため、廃棄された後も分解されないまま海や河川を漂い、海洋汚染の原因とされてきました。 また、動物がレジ袋をついばみ、体内に入って死に至る事例も報告されています。著しく生態系が狂うと、それは気候変動の要因にもなります。 そうした環境汚染の問題を解決するには、これまでの非エコだったレジ袋をエコな素材に切り替えて製造すればいいだけの話です。 無料配布の条件とは 実際、多くのレジ袋メーカーはバイオマス素材を使い、海洋生分解性の基準もクリアしたレジ袋への製造に切り替えています。 買い物用のマイバッグを持つ女性のイメージ(画像:写真AC) 日本国内でもエコなレジ袋は普及していますが、政府は有料化を開始するにあたり 1:海洋生分解性プラスチックを100%使用していること 2:バイオマス素材を25%以上配合していること 3:繰り返し使えるように袋の厚さを50μm以上にしていること の3条件のうち、ひとつをクリアすれば無料での配布を認めています。 コンビニやスーパーで無料配布されていたレジ袋のほとんどは、これらの基準をクリアしています。引き続き無料で配布できますが、多くの小売店はこれを機にレジ袋を有料に切り替えます。 コンビニ大手も相次いで有料化へコンビニ大手も相次いで有料化へ 海洋汚染を悪化させないという意義のほかにも、レジ袋有料化によってレジ袋の消費量を低減させる目的がもうひとつあります。 それがゴミの減量化です。 コンビニコーヒーを買った女性のイメージ(画像:写真AC) コンビニなどでは、ちょっとした待ち時間にコーヒー1本だけ買う、小腹がすいたから1個だけおにぎりを買うといった小さな買い物をすることがあります。 この小さな買い物の際に受け取るレジ袋は、ほとんど活用されません。そのまま使い捨てられるのです。無駄に受け取るレジ袋ひとつひとつは影響が小さくても、それらが積み重なれば膨大なゴミの量になります。 そうした少しの無駄から削減していくことを目的にして、多くのスーパーやコンビニではエコなレジ袋でありながらも有料化へと踏み切ったのです。 ゴミを捨てるためにビニール袋を買う矛盾 それでは、レジ袋を有料化すれば目的通りにゴミの減量化は進むのでしょうか? 実は、その効果にも疑問が呈されています。 東京23区は、2009(平成21)年3月末をもって東京23区推奨ごみ袋認定制度を廃止しました。 同制度の廃止により、一般家庭用のゴミをレジ袋で出しても収集してもらえるようになりました。制度が廃止される前から、23区の一部では一般家庭用ゴミをレジ袋で捨ててもよいとしていた地域もありました。 制度廃止により23区すべてで、レジ袋でゴミ出しができるようになったのです。つまり、レジ袋は無駄にならずにゴミ袋として再利用されることになり、それが無駄削減につながっています。 レジ袋有料化のイメージ(画像:写真AC) 7月1日からレジ袋が有料化されれば、レジ袋の削減は進みます。 一方、ゴミ出し用の袋を購入する必要に迫られます。人間が生きる上でゴミは必ず排出されます。そのゴミを捨てるために、ゴミ出し専用のビニール袋を買うことになるならば、レジ袋の削減はまったく本末転倒です。 コロナ到来で再評価されるレジ袋コロナ到来で再評価されるレジ袋 現状のレジ袋有料化は、皮肉なことに東京23区に居住する住民にとってゴミ袋を半強制的に購入させられる制度でもあり、結果として金銭的な負担増と手間が増えるというデメリットが際立っています。 そして、昨今は環境面からマイバッグが推進されてきましたが、社会情勢の変化もあってマイバッグにも疑問がつきはじめています。 新型コロナウイルスの感染拡大によって、繰り返して使うマイバッグは不衛生という負の面がクローズアップされているからです。使い捨てできるレジ袋は衛生的でもあるため、防疫の観点からも再評価されるようになりました。 アルコールで手を除菌するイメージ(画像:写真AC) 無駄なレジ袋を受け取らないことは意味のある行為ですが、技術の進化やライフスタイル・社会情勢の変化など、時代に合わせて環境問題の対応策は異なってきます。 それまでは“燃えるゴミ”“燃えないゴミ”と分別されてきましたが、焼却炉の性能が向上したことで “燃やせるゴミ”“燃やせないゴミ”と表現が変わりました。 そして、“燃やせるゴミ”の種類は大幅に増えています。また、焼却炉から排出されるCO2も格段に減っています。一昔前なら「最善手」と思われていた施策が、わずかな歳月で通用しなくなることは珍しくないのです。 求められる官民一致団結 レジ袋のメーカーは絶えず研究を進めています。旧来の環境に負荷の大きいレジ袋は、すでに過去のものになりました。 そのため、レジ袋だけを「目の敵」にするのではなく、 ・Reduce(リデュース。発生抑制) ・Reuse(リユース。再使用) ・Recycle(リサイクル。再生利用) の3Rを推進し、ゴミの総排出量を減らすことが環境問題を考える上で重要になっているのです。 豊かな環境を未来の子どもたちへ引き継ぐために(画像:写真AC) メーカーはさらなるエコなレジ袋を開発し、行政がそれらを無駄なく使用する生活サイクルを構築する。そして、住民はゴミの減量化に協力する――。 できるだけ負荷をかけない暮らしを目指すためには、多くの住民・自治体・団体・企業が一致団結することが求められています。
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