シェアサイクル需要急増で「パンク」「バッテリー切れ」の嵐 整備が追いつかない現状で利用者が協力できること

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シェアサイクル需要急増で「パンク」「バッテリー切れ」の嵐 整備が追いつかない現状で利用者が協力できること

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昼間たかし

ルポライター、著作家

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近年、東京でも注目されるシェアサイクル。その現状と課題について、中央区の見解を基にルポライターの昼間たかしさんが解説します。

実験導入に先んじた練馬区

 最近都内で、シェアサイクルをよく見かけます。自転車が「環境に優しい交通手段」として推奨されていることや、コロナ禍で「密」を避けるために利用する人も増えている印象です。

 ところで、日本のシェアサイクル導入数が世界トップクラスなのをご存じでしょうか。

 国土交通省の資料によると、2019年12月末時点で日本国内においてシェアサイクルを導入した都市は225で、中国の693、アメリカの310に次いで、なんと世界第3位になっているのです。

 都内では、練馬区が1992(平成4)年に社会実験として実験導入したのを皮切りに、世田谷区が2005年にレンタサイクルを一部拡充して、導入。10年あまりをかけて徐々に認知度を高めてきました。

シェアサイクルのイメージ(画像:写真AC)



 都内では自治体と連携して、四つのレンタサイクル運営会社が

1.ドコモ・バイクシェア
2.HELLO CYCLING(ハローサイクリング)
3.PiPPA(ピッパ)
4.COGICOGI(コギコギ)

の各サービスを展開しており、最大手はコモ・バイクシェアとなっています。独特の赤い車体が目立つこともあり、銀座辺りを歩いていると、よく目につきます。ちなみに同社は、

・千代田区
・中央区
・港区
・新宿区
・文京区
・江東区
・品川区
・目黒区
・大田区
・渋谷区
・中野区

の都心11区が導入しています。

利用者増の理由を中央区に聞いた

 実際、コロナ禍で利用者は増えているのでしょうか。平地が多く、利用者も多いように感じる中央区に聞いてみました。

シェアサイクルのイメージ(画像:昼間たかし)

 シェアサイクルを管轄する中央区環境政策課によれば、導入したのは2015年とのこと。2020年度はまだ集計中であるものの、認知度は高まり利用者は右肩上がりだそう。

 集計の出ている各年の年間利用回数は、次のとおりです。

・2017年4月~2018年2月:107万6731回
・2018年4月~2019年2月:128万6610回
・2019年4月~2020年2月:133万5751回

 コロナ禍で爆発的に利用が伸びているわけではなく、原因は、むしろ認知度の高まりによるものといいます。

 実際、集計中の2020年度のデータでは、緊急事態宣言期間中の2020年4月や2021年1月の利用者は減っているそうです。

区を越えて利用する人も多い

 自治体もシェアサイクル需要が増えたことで、新たな対応を迫られています。

 中央区によれば同区のシェアサイクルは自転車200台でスタート。その後400台まで数を増やし、以降は運営するドコモ・バイクシェアが状況に応じて数を増やしていくという協定になっていました。

 ところが、予想を超えて需要が伸びたことで、2020年度に新たに300台を購入しています。

シェアサイクルのイメージ(画像:昼間たかし)



 これに加えて、中央区では周辺区(千代田区・港区・江東区)で使われている自転車が区内のサイクルポート(駐輪場)に返却されてることが多いといいます。平地で自転車が使いやすいということもあってか、区を越えて利用する人も多いようです。

 そのようなこともあり、多くのシェアサイクルで便利になったはずの中央区ですが、実情は必ずしもそうなっていません。追加購入しているのもかかわらず、供給が追いついていないのです。

中央区で最も使われているエリアは?

 とりわけ追いつかないのは、月島・勝どき・晴海の湾岸エリアです。

 この地域は日本橋・有楽町・銀座に近いエリアですが、同時に最寄りの交通機関がバスになりがちのエリアです。そのためバスよりも待たずに、手軽ということで利用者が急増しています。

 通勤・通学の時間帯に晴海通りの築地交差点周辺で観察してみると、勝どき橋方面から多くの赤い自転車が走ってきます。

 このような状況では、スマートフォンで最寄りのサイクルポートを検索し、向かってみても自転車が1台もなかったということになりかねません。筆者もそうのような事態に何度か遭遇しています。

 自転車が出払っているだけならまだよいものの、地域の住民に聞いてみると

「自転車はあるのに使えなかった」

という声も聞かれます。

シェアサイクルのイメージ(画像:写真AC)

 ようは、利用者の急増で整備が追いつかず、バッテリー切れやブレーキの故障、タイヤがパンクになったままの状態も増えているのです。

 中央区はこの状況について、「故障の場合はコールセンターに連絡してくれるとありがたい」とのことでした。

気持ちよく使い続けるためにすべきこと

 シェアサイクルが抱えるもうひとつの問題は、サイクルポートに自転車が乱雑に置かれているケースです。

 中央区に限らず、どの区でもサイクルポートの拡充は頭の痛い問題で、各区も公共施設だけでは十分と考えていません。すいている土地を見つけては土地所有者と交渉して設置場所を増やしている状況です。

「あくまでお借りしている土地ですから、今後も設置できるよう、丁寧に使ってほしいです」(中央区の担当者)

 シェアサイクルは、低料金で手軽に移動できる便利なシステムです。それゆえ、次に使う人のためにもバッテリー切れや故障を見つけたらすぐに連絡するなど、利用者が主体的になって行動することが求められます。

 言うまでもなく、共有物だからといって乱雑に扱ってはいけません。これらが一般マナーとして浸透すれば、皆が気持ちよく使い続けられるはずです。

シェアサイクルのイメージ(画像:写真AC)



 さて、そのような日はいつ訪れるのでしょうか? すべては私を含めた利用者にかかっています。

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