日本から1万km超 広大無辺のケニア山麓で育った「天空のお茶」紫茶って何?

  • おでかけ
  • 中づり掲載特集
日本から1万km超 広大無辺のケニア山麓で育った「天空のお茶」紫茶って何?

\ この記事を書いた人 /

アーバンライフ東京編集部のプロフィール画像

アーバンライフ東京編集部

ライターページへ

「紫茶」というお茶をご存じでしょうか? 目にも鮮やかな色の茶葉は、ケニアの豊かな自然が生み出した希少な新品種。目黒区にあるケニア大使館を訪ねて、その魅力について聞きました。

五輪まで100日、世界の国を知るチャンス

 東京オリンピックの開幕まで、2021年4月14日(水)でちょうど100日。世界中の国と地域からトップアスリートたちが集結し、白熱の競技が展開される予定です。

 選手たちが活躍する姿を目の当たりにして、彼らの母国についてもっと知りたいと興味を持つのは大型国際大会ならではの楽しみです。この機にあらためて、さまざまな国へ目を向けてみるのも面白いでしょう。東京には数多くの「大使館」が立地していて、そのためのチャンスにも恵まれています。

 今回まず注目したのはケニアです。過去の夏季オリンピック陸上競技で華々しい成績を収めてきたケニアについて知るべく、目黒区にある大使館を訪ねて話を聞きました。

 そこで紹介されたのが、ケニアで生まれた新品種という紫茶(パープルティー)。

ケニア山麓(左)で育てられる希少な「紫茶」とは?(画像:オリザ油化)



 世界的にも極めて希少だという、鮮やかな紫色の茶葉にたっぷりの栄養を含むお茶なのだそう。一般的な紅茶とも緑茶とも違う紫茶、その魅力はどんなところにあるのでしょうか。

ケニア大使館・ワングェさんインタビュー

 東急東横線の自由が丘駅から徒歩15分ほど。閑静な住宅街のなかに駐日ケニア共和国大使館(目黒区八雲)はあります。

 アフリカらしい鮮やかな色合いの調度品が並ぶ館内で、フェスタス M.ワングェ臨時代理大使が出迎えてくれました。2021年4月現在、来日して2年4か月ほどになるといいます。

ケニアのこと、紫茶のことについて話す、フェスタス M.ワングェ臨時代理大使(2021年2月、遠藤綾乃撮影)

「ようこそいらっしゃいました。どうぞ何でも聞いてください」と気さくな表情のワングェさん。明るく優しくウエルカムだという、ケニア人の人柄そのものという印象です。

東アフリカ主要国、紅茶生産量は世界3位

 ケニア共和国は、インド洋に面した東アフリカの主要国。

 国のちょうど真ん中を赤道が通り、国土は日本の約1.5倍の約58.3平方キロメートル。およそ5300万人が暮らしています。平原地帯サバンナのほか首都ナイロビにある国立公園も、ライオンやヒョウなどの野生動物を見ることができる人気観光スポットのひとつです。

東アフリカの主要国ケニア。日本からの距離はおよそ1万1000km(画像:(C)Google)



 東京にケニア大使館が開設されたのは1979(昭和54)年。以来、地元自治体である目黒区との友好関係を深めてきました。

 あの有名な「目黒のさんま祭り」にケニアブースを出展したり、目黒シティランに大使館職員たちが出場したり、小中学生を大使館に招いてケニアの文化や歴史を紹介したりしているのだそう。

 そんなケニアの主要産業のひとつが農業です。中でも紅茶は生産量で世界第3位。コーヒーや切り花などを上回る最大の輸出品目になっています。

「ケニアではどの家庭でも、ゲストが来ると必ず紅茶を出します。食事の時間はもちろん、それ以外のときにも飲みますし、大切な会議の席でも(お砂糖とミルクを入れた)チャイを出します。紅茶はあらゆる場面で欠かせない重要な飲み物なのです」(ワングェさん)

ケニアにしかない気候が生んだ希少茶葉

 そんななか2011年に誕生したのが、鮮やかな紫色の茶葉が特長の紫茶。ケニア茶業研究財団がおよそ25年の歳月をかけて開発された新品種だといいます。

 赤紫に近い茶葉の色は、ブルーベリーやプルーンなどで知られる色素成分アントシアニンが含まれているから。さらに抗酸化物質として知られるポリフェノールも、たっぷり含んでいるといいます(※紫茶と緑茶・ウーロン茶・紅茶の乾燥茶葉の成分分析による)。

ケニア山麓にある紫茶の農園(画像:オリザ油化)



 その理由は栽培環境にあります。

 ケニア山の麓(ふもと)1500~2000mの高地で栽培されることから「天空のお茶」とも称される紫茶。赤道直下で強い紫外線にさらされる環境に育つため、抗酸化作用に優れた茶葉が育つのだそう。

 冷涼な高山地帯と赤道直下というまれな条件下で栽培される茶葉は、世界的にもここケニア以外に見当たらないといいます。

 湿度が低いため茶葉に虫がほとんど付かないおかげで、農薬を一切使わない完全無農薬で栽培されているのも特長のひとつ。味は、緑茶に似た渋みがあって、日本人の好みによく合います。

 レモン汁をたらすと、赤茶色からピンク色に変化するのも“動画映え”として人気を集めそう。

「天空のお茶」がケニアにもたらす恵み

 ケニアがこの紫茶の開発と生産拡大に力を注いできた背景には、栽培に携わる生産者たちに安定した収入をもたらしたいという重要な狙いもありました。

「一般的な紅茶は流通量が多いため、価格が下がることもしばしばあります。しかし紫茶は、その希少性からアメリカや中国など海外で注目を集めており、価格を高く維持することができています。それはつまり、ケニアの生産者たちにとっても大きなメリットをもたらすということなのです」(ワングェさん)

 高低差があるため機械化が難しい茶葉畑で、生産者たちが新芽と若葉をひとつひとつ丁寧に手摘みして収穫する紫茶。加えて、近年、日本でも意識が高まりつつあるSDGs(持続可能な開発目標)という観点にもかなったお茶なのです。「日本の皆さんにも、ケニアや紫茶について、より関心を持っていただけたら」と話すワングェさん。

目黒区八雲にある駐日ケニア共和国大使館(2021年2月、遠藤綾乃撮影)



 日本国内でも通信販売などで流通し始めていて、今まさに知名度を上げつつある段階です。例えば美容関連商品などを扱うラウディ(港区北青山)は、2021年4月中旬に紫茶のECサイトを立ち上げ販売をスタートします。

 また、ケニア大使館で紫茶を楽しむ「オンライン お茶会」を計画しているという情報もあります。

 製品原料を輸入するオリザ油化(愛知県一宮市)の担当者は、

「ダイエットや美容だけでなく、運動のパフォーマンスアップや運動後の疲労感軽減などの効果についても研究が進められており、日本での注目が高まると期待しています」

と話します。

 ケニアの気候と地形、そして人々の努力が生み出した「天空のお茶」。来る東京オリンピックでケニア人選手の活躍を見守りながら、その貴重な味を楽しんでみてはいかがでしょうか。

関連記事