銀座で青汁一筋35年 「おいしさにはこだわらない」と断言、いったいどんな店?
メニューは青汁「小」と「大」のみ 高級ブランド店やスナックが立ち並ぶ煌びやかな街、銀座。その柳通りから少し歩いた先に、一角だけ昭和のまま時を止めているかのような、味わい深いレンガ造りの建物があります。 「銀座青汁スタンド」の外観(2019年5月23日、高橋亜矢子撮影) 見上げると、白地の看板に太い字で書かれた「青汁スタンド」の文字。その看板が示唆するとおり、この店のメニューは、高さ10センチほどのコップになみなみ注がれた「青汁 小」(180ml、税込320円)と、その2倍の容量の「青汁 大」(360ml、640円)、2種類のみです(持ち帰り可能。ペットボトルは500mlサイズ50円、2リットルサイズ100円)。 「岡山の自社農園から届いた無農薬のケールを、毎朝お店で絞っています」と話すのは、同店を運営するグリーンライフ(岡山県倉敷市)の取締役、田邉さん。 ケールの葉は、顔が隠れるくらいの大きさ。それを「青汁 小」1杯あたり約3~4枚(季節によって異なる)、ペースト状につぶして圧縮し、ぎゅっと絞っているそうです。 「そのまま生で食べようとすると、ちょっと難しい量ですよね」(田邉さん) 木のぬくもりを感じる色合いの店内には、長机がひとつと、パイプ椅子が2つ。あとは、壁に張り付いた椅子のみの簡素なつくりで、レジの上部には、味わい深いタッチで描かれたトマトやバナナとの栄養素比較図がずらり。1985(昭和60)年にオープンして以来、店舗の改装は行ってないといいます。 なぜ「青汁」だけしか置いていない? ところで、なぜ「青汁だけ」しか置いていないのでしょうか? 「他のものを置いてしまうと、ブレてしまうといいますか。説得力もなくなってしまうので」とはっきりした口調で答えてくれた田邉さん。 「『青汁だけで、成り立つんですか?』と聞かれたこともありますね。ギリギリですが、青汁だけでやっています。スタンドで飲めるもののほか、粉末や顆粒の通信販売も行っていますが、ケール100%の青汁以外は扱っていません」(田邉さん) 創業は70年以上前。岡山から横浜、そして銀座の地へ創業は70年以上前。岡山から横浜、そして銀座の地へ グリーンライフの創業は約70年前にさかのぼります。創業者は田邉さんの祖父。初めのころは岡山で、牛乳配達のように青汁の配達業を行なっていたそうです。転機が訪れたのは、1962(昭和37)年ごろ。 「銀座青汁スタンド」の店内の様子(2019年5月23日、高橋亜矢子撮影)「その頃、『健康ブーム』が訪れたと聞いています。その影響から、周囲の勧めもあり、岡山から関東へ出てきて、今のような業態がスタートしました。最初は横浜の桜木町で出店していたのですが、閉店しなければいけなくなり、次の場所を探している最中で見つけたのが、ここ(銀座)だったそうです」(田邉さん) 時は経ち、今やすっかり銀座に根を張る同店。来店者の多くは近隣で働いており、毎日通いつめる人もいるそうです。 「常連さんばっかりです。オープンの頃からずっといらっしゃってる方もいます」 なかには、同店の影響で店を立ち上げた人もいるのだとか。 「23年ほど前、『自分もお店を始めてみたい』と、渋谷で青汁店を始めたお客様がいらっしゃいました。ですがその方は、体調を崩され、店を続けられなくなってしまいまして。そこは、現在は弊社が引き継ぎ、姉妹店『渋谷青汁スタンド』として営業しています」 夏と冬とで味が変わる青汁、おすすめの飲み方は?夏と冬とで味が変わる青汁、おすすめの飲み方は? 通年同じ商品のみを扱い続ける同店ですが、夏と冬とでは、ケールの味が異なるといいます。 「全然違いますよ。夏場は苦味が強いのですが、冬、特に1~2月くらいは、砂糖が入っているんじゃないかってくらいに、ものすごく甘いんです。お客さんのなかには、『夏のは苦手なので、夏は来ない』という人もいますし、特定の季節だけ買いに来る人もいますね」(田邉さん) 深い緑色の「青汁 大」(2019年5月23日、高橋亜矢子撮影) おすすめの時期はありますか? と聞いたところ、「好みは人それぞれだとは思いますが、一般的には冬の方が飲みやすいかもしれません」とのこと。 「私個人としては、あんまり甘いと青汁っぽくないと感じてしまうので……(笑)、春から初夏にかけての青汁が好きです。苦すぎず、すっきりとした味わいです」 記者も飲んでみました。なみなみと注がれた青汁を手渡される際、店員さんに「服にかからないように、気をつけてくださいね」と一言添えられたのですが、確かに。布地に染み込むと、一大事になることが想像に難しくない、パンチの効いた深緑色です。 飲んでみると、畑がそのまま口の中に直送されているかのよう。緑の葉の持つ青々とした風味が口いっぱいに広がります。目が覚めるようなみずみずさ。猛ダッシュでケールが体内に押し寄せてくる……。 総じて「生の野菜を飲んでいるんだなぁ」と実感する味わい。ですが、手加減のない姿勢ゆえ、大好物のように手放しで「おいしい!」とは言い難いです。そんな感想を正直に伝えたところ「うちは『おいしさ』にはこだわっていませんから。こだわっているのは、フレッシュさです」と田邉さん。 「もし、他の飲料を混ぜて飲むのであれば、豆乳やジュースでしょうか。りんごや人参のジュースは、ビタミンを壊してしまうのでNGですが、ほかは基本大丈夫です。あとは、お酒に混ぜる人もいるみたいです。おいしくないので、あまりオススメはしませんが……(笑)」 最後に、確認するように尋ねました。今後もやはり青汁以外は置かない方針でしょうか? 「はい。店を増やす予定もありません。ですがこのお店は、続けられる限り続けます」 迷いのない、力強い言葉でした。 嗜好品のようなおいしさとは違う。でも、ここで青汁を口にすると、もう一息がんばろうかなぁという気持ちになる――。「銀座青汁スタンド」は、きっとそんなお店です。手加減なしのケール100%を味わってみたい人はぜひ。 ●銀座青汁スタンド ・住所:東京都中央区銀座1-6-7 谷口ビル1階(みずほ銀行裏) ・アクセス:東京メトロ有楽町線「銀座一丁目駅」から徒歩1分、JR「有楽町駅」から徒歩3分 ・営業時間:8:30~19:00、土:9:30~18:00(青汁がなくなり次第終了) ・定休日:日、祝日
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