都内の国公立大受験「前期日程」志願者が増えた大学は? コロナ禍・安全志向の影響とは

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都内の国公立大受験「前期日程」志願者が増えた大学は? コロナ禍・安全志向の影響とは

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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「安全志向」「浪人生の減少」「コロナ禍」で混迷した2021年度の大学入試ですが、都内の国公立大学前期日程の志願者はどのようになっているでしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

都内には12の国公立大学がある

 波乱の連続だった2021年の大学受験も終わりを迎えつつあります。国公立大学の前期試験の合格発表は2021年3月5日(金)から順次行われ、後期試験は3月12日(金)以降に実施されます。

 コロナ禍という誰もが想像もしない事態が起き、大学選びも例年のように「行きたい大学を受ける」「合格しそうな大学を受ける」ではなく、経済状況や感染症リスクなどを考慮する必要がありました。

 そのため、地方の受験生が都内の大学を敬遠する動きや受験大学の絞り込みがあると見られていました。実際、私立大学の志願者数の動きを見てもコロナ禍の影響は大きく、多くの大学では「安全志向」による志願者の減少をさらに加速させた結果になっています。

 都内には、次の12の国公立大学があります。

・東京大学(文京区本郷)
・東京工業大学(目黒区大岡山)
・一橋大学(国立市中)
・東京外国語大学(府中市朝日町)
・東京農工大学(同市晴見町)
・お茶の水女子大学(文京区大塚)
・東京医科歯科大学(同区湯島)
・東京芸術大学(台東区上野公園)
・東京学芸大学(小金井市貫井北町)
・東京海洋大学(港区港南)
・電気通信大学(調布市調布ケ丘)
・東京都立大学(八王子市南大沢)

 これらの大学にも私立大学と同様、軒並み志願者減少傾向が見られました。国公立大学を受ける場合、絶対条件となるのが大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の受験です。共通テストは1次試験、そして各大学の個別試験が2次試験となります。

 2020年12月8日に文部科学省所管の大学入試センター(目黒区駒場)が公表したデータによると、共通テストの出願者数は同年まで実施されていたセンター試験より2万2454人少ない、53万5245人になりました。

 いわゆる現役生である「高校卒業見込み者」の出願は44万9795人と前年比2440人減でしたが、浪人生の出願は約2万人減の8万1007人でした。つまり、2021年の大学受験は「例年よりも浪人生が少ない年」となったのです。

東大は浪人生減少の影響を受けたのか

 文部科学省の「令和元年度学校基本調査」によると、2019年度の大学入学者63万1273人のうち、現役生は77.6%にあたる48万9984人で、既卒生は22.4%にあたる14万872人でした。センター試験を受験せずに私立大学へ入学した学生が一定いることを踏まえても、2021年がいかに既卒生の少ない受験だったかがわかります。

 既卒生の志願者・入学者の割合は、難関大学や医学部で一般的に高くなるとされています。例えば、東京大学の2019年度入学者のデータを見ると、現役生の割合が一番高いのが文科一類で75.9%、次いで理科一類の70%、理科三類の69.1%が続きます。

文京区本郷にある東京大学(画像:写真AC)



 東京大学で既卒生の割合が最も高い理科二類では現役生の割合が59.5%となっており、既卒生の割合が前述の「令和元年度学校基本調査」の数値よりはるかに高いことがわかります。

 そんな「安全志向」「浪人生の減少」「コロナ禍」ですが、2021年の東京大学の前期日程の志願者数に劇的な変化を与えたかといえば、そうでもありません。

 数字を見ると2019年度入学者試験は9483人、2020年度は9259人、そして2021年は9089人と減少が続いています。しかし、2021年の国公立大学受験で必須の共通テストに出願した既卒生が2020年よりも約2万人も少ないことを考慮すれば、2020年度から2021年度までの「170人減」は、現役生の上位層が安全志向に走らなかった証しだと捉えられます。

 実際、文部科学省が2月24日に発表した「令和3年度国公立大学入学者選抜確定志願状況」を見ても、文科三類や理科一類、理科二類では2020年より志願者数は増えており「東大受験」を避ける動きは鈍かったと言えるでしょう。

志願者が増えた大学は3校のみ

 しかし全体的に見ると、都内国公立大学の前期日程の志願者は減少しています。

 大学進学率は年々上昇しているものの、総務省統計局が毎年10月1日を基準に発表している「統計推計」を見ると、近年は年単位で、現役生に該当する17歳または18歳の人口が約2万人前後減っています。こうした人口減少も大きな要因のひとつと考えられます。

 さらに2021年は浪人生が減少し、現役生が例年以上に主役となった国公立大学受験となったこともあり、都内大学では志願者数の伸びを期待できない状況でした。

 そのなかで都内12校のうち、2020年よりも志願者が増えたのは

・一橋大学
・東京農工大学
・東京海洋大学

の3校です。

国立市中にある一橋大学(画像:写真AC)



 特に、東京農工大学は前期日程の志願者数が2019年度入学者試験で1371人、2020年度で1220人と落ち込んだものの、2021年は1496人と276人増えました。2020年度減少の反動という見方もできますが、コロナ禍による就職難も取り沙汰されているなか、就職に強いとされる理系学部に人気が集まったとも考えられます。

 一方、伝統校である一橋大学も2018年度を境に前期日程の志願者減が続いていましたが、2020年の2490人を底に2021年は2564人と74人増加。経済学部では2020年・538人からの反動で695人まで回復しました。

 2021年の受験生は大学入試改革初年度以外にもコロナ禍に直面し、緊張状態が続く1年となりました。しかし大学入試のゴールはすぐそこです。明るい春を迎えられることを祈っています。

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