大量廃棄問題でブームも下火 「恵方巻き」に残された復活の道とは

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大量廃棄問題でブームも下火 「恵方巻き」に残された復活の道とは

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日沖健

日沖コンサルティング事務所代表

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売れ残った商品が大量に廃棄されるなど、ブームから一転、逆風が吹く恵方巻き。今後の行方について、日沖コンサルティング事務所代表の日沖健さんが解説します。

ブームへの強い逆風

 2021年の節分は2月2日(火)です。37年続いた2月3日から変わること、124年ぶりに2月2日になることで、話題を呼んでいます。節分と言えば昭和の頃は豆まき、今は恵方巻きですが近年、恵方巻きに強い逆風が吹いています。

 2019年、売れ残った恵方巻きが大量に廃棄されていることが社会問題になり、農林水産省は作りすぎを控えるよう業界団体に要請しました。

 廃棄される恵方巻きが全国で約10億円分に上るという試算が公表され、恵方巻きには「エコじゃない」というバッシングが起こりました。

「平成の流行」で終わるのか

 博報堂生活総合研究所の調査によると、「1年以内に恵方巻きを食べた」という人は、2016年の54.0%から2020年は50.2%に減少しています。特に首都圏では、2016年の47.3%から2020年には43.2%まで落ち込んでいます。

恵方巻き(画像:写真AC)



 恵方巻きの起源については諸説あるようですが、関西の限られた風習をセブン―イレブン舟入店(広島市)が「恵方巻」と名付けて販売したのが1989(平成元)年のことです。1998年にコンビニエンスストア各社が大々的にキャンペーンを打ったことで、全国的に知名度が高まりました。

“誕生”から32年、全国デビューから23年がたった恵方巻きですが、バレンタインデーやハロウィーンのような国民的行事として定着するには至らず、「平成の流行」で終わってしまうのでしょうか。

恵方巻きがピークアウトした理由

 恵方巻きに急ブレーキがかかったのは、エコ意識の高まりが大きいですが、国民的行事に発展するのは、以下のように元々かなり無理がありました。

 まず、日本人は太巻きずしをそれほど好きではないという事実があります。

 すしと言ってもにぎりずしほどおいしいわけでなく、おにぎりのように食べやすいわけでもありません。太巻きずしは、主ににぎりずしの添え物として提供されているように、日本の食卓ではあくまで脇役です。脇役を主役に仕立て上げるには、恵方という意味付けだけではインパクトが不足していました。

すしの王道・にぎりずし(画像:写真AC)



 次に、コンビニエンスストアやスーパーマーケットの猛烈なプロモーションが消費者の反感を買っています。

 小売店は2月と8月が閑散期で「ニッパチ」と呼ばれます。バレンタインデー・クリスマス・ハロウィーンも商業的な働きかけの影響が大きいのですが、とりわけ恵方巻きは小売店が2月に何とか目玉商品を作りたいという思惑が露骨です。クリスマスなどでも商品が廃棄されているのに恵方巻きの廃棄が大騒ぎになったのは、消費者の反感が底流にありそうです。

 加えて日本国民、特に関東人は「関西発」の流行に違和感を覚えます。

 よく関西の人は、「関西ではずっと昔から恵方巻きを食べとるんやで」と恵方巻きが関西発のブームであることを強調します。世の中にはブームに乗りたいという人もいる一方、他人に遅れてノコノコとブームに乗ることを良しとしない人も多く、関西人から「俺たちに続け」と言われて、引いてしまう関東人が多いのでしょう。

 先週、出張先の名古屋で鰻(ウナギ)料理の名店に入ったところ、「鰻恵方巻」を売っていました(食べませんでした)。

 店長に売れ行きを聞くと、「うーん、ご予約は少ないですね。2021年はコロナ禍のステイホームで、家族で恵方巻きを食べるというお持ち帰り需要を期待しているんですが、ちょっと厳しそうです」とのこと。コロナの状況でも、恵方巻きの退潮傾向に大きな変化はなさそうです。

恵方巻きが世界的なイベントになる?

 では今後、恵方巻きが復活し、国民的行事に発展する大逆転劇はあるのでしょうか。以上の分析が正しいとすれば、単純な恵方巻きの復活はかなり困難。かなり思い切った改革が必要です。

 まず巻物という枠を外して、もっと食べやすく、親しみやすい食材の方が良いでしょう。エコに優しいというアピールも大切です。「恵方おにぎり」も良さそうですが、保存できて廃棄問題の心配があまりないもの、例えば、フォーチュン・クッキーにちなんで「恵方クッキー」とかはどうでしょう。

フォーチュン・クッキー(画像:写真AC)



 また、関東を含めて全国区にするには、関西色を薄めたいところです。そのためには、こうした新バージョンが全国各地から登場することが期待されます。東京から恵方もんじゃ、静岡から恵方シラスおにぎり、軽井沢から恵方クッキーという具合です。

 理由はなんとでも後付けできます。シラス漁の漁師がおにぎりを食べて漁の無事を祈った(かも?)とか、昭和天皇と美智子妃殿下がテニスコートでクッキーを食べた(かも?)とか。

 全国にご当地の「恵方○○」が続々と生まれて競い合えば、消費が増え、地域も活性化します。AKB48のコピーが全国各地で、さらにインドネシア・台湾・タイで誕生したように、国民的行事どころか世界的イベントに発展するかもしれません。

 このまま恵方巻きは廃れてしまうのでしょうか。それとも国民的行事、さらには世界的イベントに発展するのでしょうか。2021年は久しぶりに恵方巻きを食べながら将来を占ってみたいと思います。

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