コロナ禍で尊敬を集める医療従事者を育成 今年で開校20周年「国立看護大学校」とはどのような学校なのか

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コロナ禍で尊敬を集める医療従事者を育成 今年で開校20周年「国立看護大学校」とはどのような学校なのか

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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2001年開校。清瀬市にある看護師や助産師の養成機関「国立看護大学校」について、ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

文部科学省の管轄外の大学校

 大学といえば一般的に国立大学や公立大学、私立大学をイメージしますが、こうした大学は文部科学省が管轄しています。

 それ以外には防衛省管轄の防衛大学校(神奈川県横須賀市)と防衛医科大学校(埼玉県所沢市)、気象庁管轄の気象大学校(千葉県柏市)というような省庁管轄の教育機関もあり、それらは省庁大学校と呼ばれます。

 これらは公的教育機関の色が濃く、入学試験は他の国公私立大学よりも早い時期から行われます。

 例えば、防衛医科大学校医学科の2021年度入学者試験は第1次試験が2020年10月24~25日、第2次試験が12月9~11日に実施されたため、本年度から導入された大学入学共通テストを利用していません。なお合格発表は2月14日と、通常の大学よりも時間がかかります。

元清瀬病院の跡地に立地

 さて文部科学省の管轄外にもかかわらず、校名に「国立」が付く大学が東京都にあるのをご存じでしょうか。それは、厚生労働省所管の国立国際医療研究センター(新宿区戸山)が設置する国立看護大学校(清瀬市梅園)です。

清瀬市梅園にある国立看護大学校(画像:(C)Google)



 同大学校の開校は2001(平成13)年4月。清瀬市という23区外とはいえ、工事期間を考慮しても90年代の都内でまとまった土地を確保することは簡単ではありません。それをクリアできたのは、清瀬市にかつてあった東京府立清瀬病院の跡地を利用したからです。

 地図を見る一目瞭然ですが、清瀬市を走る西武池袋線の清瀬駅より西側に病院が集中してある地域があります。その一角に国立看護大学校があります。

結核療養施設が集中していた清瀬市

 清瀬市は昭和初期から戦後にかけて、当時は大病とされた結核の療養施設が集中した場所でした。

清瀬市の所在地(画像:(C)Google)



 清瀬病院は1931(昭和6)年、中野区江古田にあった東京市療養所に次いで開院。都心から適度な距離のある清瀬にはそれ以降、次々に結核療養施設が設立されていきました。

 こうした歴史的背景もあり、国立看護大学校の周辺地域には結核予防会結核研究所(同市松山)や救世軍清瀬病院(同市竹丘)を始めとした病院施設が今でも多く存在しています。

 まだ結核患者が多かった1962年、清瀬病院はほど近い場所にあった国立東京療養所と合併。名称を国立療養所東京病院(現・国立病院機構東京病院)と改めました。その後は国立看護大学校の新設まで2病棟体制が続きました。

看護基礎教育のモデル校

 国立看護大学校が設置された目的は、全国六つの国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)で働く看護職(看護師、助産師)を養成するためです。

 2020年度の入学料は28万2000円、授業料は年額53万5800円と国立大学の看護学科と同じです。またこのほかにも、実習などによる経費が発生します。

国立看護大学校の全景(画像:(C)Google)

 看護学部看護学科のみの単科の教育機関で、定員は100人。看護基礎教育のモデル校で、学費は国立大と同じということもあり、看護師や助産師を目指す受験生からの人気は高く、志願倍率は例年4倍を超しています。

 受験生は1次試験(学力検査)と2次試験(面接)の2回で、合格までの道のりは決して容易ではありません。入学生の性別は女性が多く、2019年度の入学生101人のうち91人が女性でした。

宗教や文化を学ぶカリキュラム

 2021年度入学者試験は新型コロナウイルスの影響もあり、例年行われている2次試験はなく、1次試験を2月6日に行い、最終合格発表は2月15日に変更となりました。

 カリキュラムの特色のひとつが1年次に仏教やイスラム教、キリスト教という世界三大宗教を学ぶ点です。就職先の病院で外国人患者と接する際、信仰する宗教への理解がないと心を開いてくれなかったり、トラブルに発展したりすることもあります。単に看護の知識だけではなく、現場で求められる教養をカリキュラムに組んでいることは注目に値すべきことです。

 2019年度卒業生を見ると、101人のうち88人が国立国際医療研究センター病院(新宿区戸山)や国立がん研究センター中央病院(中央区築地)などの国立高度専門医療研究センター関連施設に就職しています。

国立看護大学校のウェブページ(画像:国立看護大学校)

 現在、新型コロナウイルスの感染拡大で医療従事者の過酷な労働状況が浮き彫りとなっています。各国で総力を挙げてワクチン開発が行われ、徐々に希望の光が見え始めてきました。

 かつてあれだけ多くの日本人を苦しめた結核も、医療の進歩により患者数が激減しました。かつて結核の療養施設が集中した清瀬の地で看護師を目指す学生が日々学んでいることは単なる偶然ではないでしょう。

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