定額制orお店巡り いつもワクワク洋服選び、幸せなのは結局どちら?

定額課金サービス「サブスクリプション」は、音楽や動画配信だけでなくファッションの分野でも広がりを見せています。かつて、たった1着のお気に入りの服を探し求めて街を歩き回った時代を知るライターの宮野茉莉子さんが、ふたつの時代の違いについて考えます。


「サブスク」はファッション分野にも

 少し前まで音楽CDや洋服などのモノとは「所有」するものであり、何を所有しているかはその人らしさを表す象徴でもありました。ブランドもののバッグや服、高価な時計や車などを持つことが、ひとつのステータスという時代もありました。

 しかし近年、サブスクリプション(定額課金。以下、サブスク)サービスの登場により、その価値観も徐々に変化しつつあります。

洋服が、定額で何着でも着られるようになった現代(画像:写真AC)



 サブスクとは、定額料金を払うと一定期間サービスを受けることができるサービス。商品を購入するのではなく、契約期間中に決められた商品を自由に使うことができるため、その利便性とコストパフォーマンスの良さで利用者が拡大しています。

 最も有名なのは「Netflix」や「hulu」、「Amazon Prime Video」などの動画配信サービスでしょう。国内外の映画やドラマ、アニメなどの作品が数万本以上登録されていて、月額1000円前後で見放題。DVDを購入したりレンタルしたりするのに比べるとかなりお得といえ、新型コロナウイルス禍の外出自粛も利用者の拡大を後押ししました。

 映像作品だけでなく飲食、音楽、家具、洋服、バッグから車や住宅など、さまざまな分野でサブスクは広がりを見せ、同時にモノに対する価値観も変化しています。

サブスクがレンタルを上回る

 マーケティングリサーチのマクロミル(港区港南)が運営するサイト「ホノテ」によると、全国15~59歳の男女1000人に行った調査で、サブスクの認知度はわずか26.3%(2019年1月、同社と翔泳社の共同調査)。

 しかし利用状況を見てみると、「現在使っている」「以前使っていた」の合計は46.3%で、「サブスク」という名称を知らなくても実際には利用したことがある人が多いという実態が分かります。

市場調査メディア「ホノテ」の調査結果(画像:マクロミル)



 30代半ばの筆者も、数年前からAmazon Prime Videoや月額制コンタクトレンズの「メルスプラン」(メニコン)を利用中。メルスプランの利用者は2019年1月に130万人に達しました。

 先述の調査によると、サブスク利用の上位3位は、

・動画配信(80.9%)
・音楽配信(38.8%)
・本、雑誌、コミック配信(17.7%)。

 2020年3月発表の「映像メディアユーザー実態調査2020」によれば、サブスクの利用率(29.3%)は初めてレンタルサービス利用率(27.6%)を上回ったとのこと。

 レンタルに限らずCDなどの“実商品”が売れない時代になったというのは、皆さんご存じの通りです。初めてのお小遣いでCDを買い、部屋の中にずらっとお気に入りの本やDVDを並べる時代は、終わりを見せつつあるようです。

ファストファッションからサブスクへ

 動画や音楽で広がりを見せるサブスクですが、ファッション界でも利用者が増えています。

 情報サイト「マーケティング・リサーチ・キャンプ」が行った調査(2019年3月実施)では、化粧品やファッションのサブスクサービスを利用したことがある人は10代で21.2%、20代は20.9%と他の世代より割合が高く、いずれも前年を上回りました。

 例えば20~30代に最も利用されているというレンタルファッションアプリ「メチャカリ」の場合、若者に人気のブランドの新品を月額5800円(税別)から利用することができるそう。

 5800円のコースなら、一度に手元における商品点数は3点まで。ただし借りられる数に制限はなく、手元のアイテムを返却すれば、何度でもまた新しいアイテムを借りることができます。

何着でも、何度でも服を借りられる「サブスク」サービスは若い世代に人気(画像:写真AC)



 これなら「買った服がタンスの肥やしになってしまった」「高いお金を払ったのに合わせる服がなかった」「着てみたらイメージと違った」といった洋服の買い物の失敗も防げそうです。

1着への思い入れと愛着

 今でこそ安くてかわいい服が何着でも気軽に手に入る時代になりましたが、筆者の親世代――現在60~70代の大人たちが子どもの頃は、服といえば国内生産された高価なものが多く、どんなに買えてもせいぜいひと冬に2着ほど。購入した服は、大切に大切に長く着続けたそうです。

 ユニクロの「フリース」ブームが起きたのは1998(平成10)年。当時は「ユニクロ = フリース」という認識が高く、多くの人が商品を買い求めました。

 スペイン発のファッションブランド「ZARA」1号店が渋谷にオープンしたのも同じく1998年。翌年の1999年には「GAP」原宿店がオープン。ファストファッションブランド店が次々と登場し、日本国内のファッションシーンを席巻していきました。

 当時10~20代だった筆者もその恩恵に与って、お小遣いの少ない中高生であっても好きに洋服を購入することができました。1着1着を大切に着ていた親世代と比べれば、洋服に対する価値観は当時もすでにずいぶん変化していました。

 大学時代を東京で過ごした筆者がよく買い物で利用したのは、吉祥寺PARCO(武蔵野市吉祥寺本町)や下北沢の古着、ルミネ新宿(新宿区新宿)など。

 ファッションビルを上から下まで全階ひと通り見て回ったあと、気に入ったいくつかの服をよくよく比べて吟味しながら、選びに選んで購入。ところが、かわいいと思って飛びついたものの、家に帰って着てみるとイメージが違ったり、手持ちの服とは合わずお蔵入りになってしまったりしたものも多々……。

どうしてこの服を買ったんだっけ……? と思うような「お蔵入り」服も、今では楽しい思い出のひとつ(画像:写真AC)



 その代わり、お気に入りの1着は何度も着て楽しみました。

 手元にある服のひとつひとつに思い出があり、「これはあの旅行で着たもの」「この服を着て誰とどこでデートをした」という記憶がよみがえり、たとえ古くなってもなかなか捨てることができない、という経験が、当時を知る誰しもにあるのではと想像します。

 同じ頃、古着の人気も根強く、古着屋さんでコレという1着を発掘するのも楽しみのひとつでした。お気に入りの1着を見つけに街へ繰り出すことは、自分で稼いだアルバイト代や給料の中でできるぜいたくであり、買い物へ行くときのワクワクとした気持ち自体もまた得難い思い出です。

サブスク時代にこそ大切にしたい思い

 コストパフォーマンスやエコという観点から考えると、洋服のサブスクは現代にピッタリと言えるかもしれません。

 お蔵入りする服が減るのでクローゼットのスペースも空いて、一石二鳥。気になった洋服をどれでも手元に配送してもらえて、気に入らなければ返却もできる、気に入ったらそのまま購入もできる――。そんなメリットは、昔では考えられなかったこと。

 今となれば、1着1着を購入していたかつての「当たり前」には、金銭的にも時間的にも収納スペース的にもずいぶんと“無駄”があったのかもしれません。

ごちゃごちゃとしてまとまりのないクローゼットだって、本人にとってはいとおしい(画像:写真AC)



 一方で、1着を大切にする思い入れを知る世代としては、サブスクという洋服との付き合い方にほんの少しの寂しさも感じます。

 お気に入りの服はごくたまにしか買えなかった分、手に入れたときの喜びはひとしおでした。もう着られなくなった服でも、愛着のあるものはクローゼットに今も眠っています。ほとんど日の目を見なかった「お蔵入り」組も、「あの頃こんな服を買う若さがあったんだ」なんて思い出しては笑え、それもまたひとつの思い出です。

 サブスクは便利さを追求した究極の仕組みであると同時に、すぐに手放したり、取り換えたりすることとも抱き合わせのサービス。

 現代と過去、そのどちらにも良い面があるのは当然ファッションに限ったことではありませんが、サービスの有りようも価値観も移り変わる時代にこそ、モノに対する思い入れや大切なモノそのものを手放さずに持っておく気持ちを忘れずにいたいと思います。


【調査結果】広がる「サブスク」 動画サービスの利用実態を見る(画像4枚)

画像ギャラリー

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