昭和レトロ満載 東京タワー2階の「土産店街」が明日、ひっそり消えるのをご存じですか

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昭和レトロ満載 東京タワー2階の「土産店街」が明日、ひっそり消えるのをご存じですか

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山下メロ

平成文化研究家

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昭和時代から愛されてきた東京タワー2階の土産店街が1月24日をもって、いったん営業を終了します。リポートするのは、平成文化研究家の山下メロさんです。

今も東京のシンボル

 テレビでは連日、新型コロナウイルスの感染者数が報道されています。

 中でも感染者数の多い首都・東京の数字がピックアップされ、その際、頻繁に目にするのが都心部を空撮した映像です。モノトーンの高層ビル群の中でひときわ目をひくのが東京タワー(港区芝公園)。誰が見ても「東京の映像」と伝わるので、中心に目立つように映っています。

 新しくできた東京スカイツリー(墨田区押上)に注目が移っても、なおランドマークとしての地位が揺るがない東京タワーですが、2階にある土産店街「東京おみやげたうん」が1月24日(日)、ひっそりと歴史に幕を下ろすことをご存じでしょうか。

タワー開業当初から続く土産店街

 東京タワーは1958(昭和33)年に完成した高さ333mの電波塔です。2000年代には東京スカイツリーに機能が移ることで東京タワーがなくなるのでは……とうわさされていましたが、令和を迎えて今もなお存続しています。

 昭和時代へのノスタルジーを喚起させる映画『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)においても、建設中の東京タワーが象徴的に描かれていました。平成に入ってもなお、ろう人形館や水族館など独特な雰囲気を持つスポットが残されていたことから、「子どもの頃の懐かしい記憶に出会える場所」といった側面でも愛されていました。

東京おみやげたうんの様子(画像:山下メロ)



 昭和から続くタワー内のそうしたスポットも、時代の流れのなかでひとつ、またひとつと姿を消していき、今では洗練された現代的な雰囲気に変わっています。

 東京タワー内の昭和の面影を残すエリアは、2階の東京おみやげたうんだけになってしまいました。その東京おみやげたうんが1月24日をもっていったん終了し、3月以降にリニューアルして再開するというのです。

東京タワーと土産店

 東京タワーには、海外からの観光客や修学旅行生が訪れ、土産品を購入するという重要な側面がありました。しかし、コロナ禍による海外からの渡航制限や修学旅行の中止などで、土産店は苦境に立たされています。

 リニューアル後も土産店を存続する店舗もありますが、残念ながら半数以上が今回をもって完全閉店となります。ここにはタワー開業以来、60年以上続けてきた老舗も含まれます。

1958年に完成した東京タワー(画像:山下メロ)



 もちろん、土産店の品ぞろえや内装、規模などは時代によって常に変化し続けており、土産店街が変わるのは今回が初めてではありません。また、東京おみやげたうんも途中で名付けられたエリアの名称に過ぎません。しかしそれを差し引いても、現在の雰囲気は明らかに特異な存在といえるのです。

「東京おみやげたうん」の特異性

 その特異性は、日本中の観光地と売店・土産店を見てきた私(山下メロ、平成文化研究家)ですら強く感じるほど。

 一般的な温泉街の土産店は一戸建てが多いですが、東京タワーのような大規模な屋内施設の場合は、いくつかのテナントが自然と軒を連ねる形になります。大体、各店舗が壁などで仕切られ、来店客は店内を回遊して商品を選び、レジへ持って行くという方式が主流になっています。

 浅草の浅草寺仲見世(みせ)通りも、屋外ですが参道では建物がつながっています。対して東京おみやげたうんは、区画の中に各店舗の商品棚が並んでいて、その傍らに立っている店員さんとしゃべって購入する方式なのです。

 商品を選んでレジに持って行けばよいだけのスーパーマーケットと、「これとこれください」と店員さんに話しかけなければならない青果店の違いにも似ているかもしれません。

「東京おみやげたうん」内にあった「イトーズギフトショップ」。2020年に閉店(画像:山下メロ)

 こうした昔ながらの出店方式はどんどん姿を消しているため、東京おみやげたうんは今では少なくなった貴重な売り場風景なのです。

コロナ禍で迎える最後の日

 厳しい現況を乗り越えるには、より合理的に、より現代的な変化が必要なのはよく分かります。私は懐古趣味の人間なので「残してほしい」と思うこともありますが、それは優先されるべきことではありません。ですから「残してほしい」と言うつもりはなく、都心に残されていた昭和の面影が消えていくことを多くの人に知ってほしいのです。

 そもそも東京タワーは「東京の人が行ったことのない観光地」と言われることも多く、近くに住んでる人よりも地方から観光などで上京した人が訪れるイメージがありました。コロナ禍で外国人観光客の渡航制限と修学旅行の中止は影響大ですが、さらに「県外の人お断り」といった越境自粛の風潮もまた、感染者数の多い東京の観光地の打撃となっています。

東京おみやげたうんは、すでに人影がまばらになっている(画像:山下メロ)



 リニューアル前ということで、現在ほとんどの店で商品は半額以下の閉店セール状態なのですが、お客さんはおらずフロアはガラガラです。

 緊急事態宣言が発令されたこともあり大きな宣伝もできず、その事実すら知らない人がほとんどでしょう。東京タワー開業時から続く土産店街の最後が、こうした状況というのは寂しい限りです。

 かつて東京タワーで何か買った・買ってもらったという人は、この機会に東京おみやげたうんを懐かしく思い出していただけたらと願っています。

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