いじめ加害者はなぜ「覚えていない」のか? 話題の芸人ドキュメンタリー映画が示唆するもの
大人になってもふとした瞬間に思い出してしまう、学生時代のいじめやスクールカーストの苦い思い出。しかし、いじめた側の当人はそんなことを全く覚えていない、というエピソードもしばしば耳にします。果たして記憶を書き換えたのは相手か、それとも自分か――? その問いにひとつの示唆を与えるドキュメンタリー作品があります。制作したのは吉本興業所属のお笑い芸人。ライターの堀越愛さんが解説します。
同級生から逃れるように上京した過去
学生の頃、同級生からのいじめを経験したことがあるという人は決して少なくないでしょう。筆者の場合は中学時代、数人の同級生からのものでした。
元は同じグループで仲が良かったのですが、ある日を境に関係値が一変。きっかけは、クラス対抗リレーで走る順番を揉めた、という本当に些細(ささい)なこと。今でも、いじめの標的が自分に定まった瞬間をリアルに思い出せます。歯車が軋むような、嫌な音がしました。
それからは、悪口を書いた手紙が机に置かれていたり、クラスで“いない者”として扱われたり、ボールをぶつけられたり……。中学生活は、筆者にとって暗黒時代です。
中学の同級生と絶対に交わらない世界で生きるため、筆者は大学進学と同時に地元を離れ東京圏へ上京しました。
当時のことを忘れて過ごしていたある日、スマートフォンに通知が届きます。それはFacebookの「友達申請」でした。
相手は、筆者をいじめていた元・同級生。
かつてのことなど何もなかったような、昔を懐かしむメッセージ付き。それを読んで愕然としました。筆者にとって当時は忌まわしい過去ですが、彼女にとっては”青春のひととき”でしかなかったのです。
彼女にとって、筆者は”いじめていた相手”ではなく、ただの”中学の同級生”だった。彼女は記憶を書き換えてしまったのでしょうか。それとも、書き換えたのは筆者なのでしょうか……。

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