かつては東大・京大「ダブル合格」の珍事も 論議を呼んだ「共通1次」とは

2021年度から実施される「大学入学共通テスト」。そんな同テストの前にはセンター試験のほか、かつて共通1次と呼ばれる試験もありました。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。


大学入学共通テストまであとわずか

 センター試験に代わる新しい入学試験「大学入学共通テスト」の第1日程である試験が2021年1月16日(土)と17日(日)の両日、実施されます。

文京区本郷にある東京大学(画像:(C)Google)



 初年度は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、東京都のほか、首都圏の3県(神奈川県、埼玉県、千葉県)で行われるなど、例年以上に緊迫したなかでスタートすることになりました。

 改革の目玉とされた記述式問題や英語民間試験の導入は見送られましたが、センター試験と異なる問題が出題されるのは、大学入試センター(目黒区駒場)が2017年度と2018年度に行ったプレテストを見ても明らかです。

 30年間続いたセンター試験(1990年1月~2020年1月)から新たなテストへと変わることで、志願者数に変化はあるのでしょうか。

 大学入試センターの2020年12月8日(火)の発表によると、大学入学共通テストの志願者数は53万5245人に確定。前年度より2万2454人減少しましたが、特に浪人生(高校卒業生)の志願者は前年度より1万9369人少ない、8万1007人にとどまりました。このことから、新制度移行のために現役志向が強まったことが影響していると考えられます。

10年間行われた「共通1次」

「大学入試」と聞くと、現役会社員世代の多くはセンター試験を思い浮かべますが、その前に実施されていたのが「大学共通第1次学力試験」、いわゆる「共通1次」です。

 戦後の日本において(1949年~1978年)、国立大学の入試は長らく各大学の1期・2期の日程に分かれて行われていました。

 東京大学(文京区本郷)や京都大学(京都市)を始めとする旧帝国大学が1期に集中していたこともあり、大学の序列化が進むことを危惧した国は問題解決のため、共通1次を生み出しました。

大学入学共通テストのイメージ(画像:写真AC)

 共通1次はマークシート方式が採用され、1979(昭和54)年1月から1989(平成元)年1月までの計11回実施。この結果によって、受験生が2次試験で受ける大学を決めるという、現在まで続く一連の流れを作りました。

 ただし、志願できる大学は国公立大学と産業医科大学(北九州市)から1校のみ、1学部1学科と受験生にとっては厳しいものでした。

東大と京大どちらも受験できた年も

 こうした受験生の不満を解消すべく、共通1次時代の最後の3年間は入試制度の中身が毎年変わる変則的なものとなりました。特に、1987年1月に行われた共通1次では、国公立大学の受験回数を増やす目的で、2次試験の日程を大学によってAとBに分け、公立大はさらに別日を設けました。

 ところが、京都大学がAグループ、東京大学がBグループに属していたため学力上位層が両大学を受験し、ダブル合格者が出てしまうという事態が起きてしまいました。

京都市にある京都大学(画像:(C)Google)



 東京大学と京都大学の併願は翌1988年でも起きた「珍事」で、こうした問題点や大学入学試験の間口拡大も兼ねて誕生したのが、大学入試センター試験だったのです。

私大参加という新時代が到来

 1990年1月13日と14日に行われたセンター試験の画期的な点は、国公立大学だけではなく私立大学も利用可能な入学試験となったことです。初年度は抜群の知名度を誇る慶応義塾大学(港区三田)が参加したものの、私立大学の参加は16校にとどまりました。

港区三田にある慶応義塾大学(画像:(C)Google)

 しかし、大学志願者の増加やひとつの試験で多くの大学を受験できる利便性が周知されたこともあり、参加校の数は右肩上がりに。最後となったセンター試験では532校の私立大学が参加。この流れは新しく始まる大学入学共通テストでも引き継がれ、上智大学(千代田区紀尾井町)や学習院大学(豊島区目白)が新たに加わることが決まっています。

 主に国公立大学志願者向けだった共通1次とは異なり、センター試験は私立大学の参加もあり、大学入学の裾野が一気に広がりました。しかし振り返ってみれば、30年間の長きにわたって運用されてきたセンター試験に問題が起きていなかったわけではありません。

 2006(平成18)年から始まった英語の試験では、リスニング問題で導入されたICプレーヤーに不具合によるトラブルが発生。その後も機器のトラブルは毎年報告されており、受験生全員が問題なく受けられる状態に達していないのが現状です。

 大学入学共通テストでは、英語民間試験導入が先送りとなったこともあり2021年も英語ではセンター試験同様にICプレーヤーによるリスニングが実施されます。

大学入学共通テストの存在価値は増すか

 共通1次に比べて3倍近い年月にわたり、日本の大学入学試験を支えたセンター試験は2020年1月の試験を最後にその役目を終えました。新たに始まる大学入学共通テストでは単なる学力だけでなく、受験生の思考力や判断力、表現力を見る出題形式となります。

 新テスト導入までには幾多の混乱はあったものの、運営する団体は共通1次時代から変わらず大学入試センターが担い、受験生の学力を正確に測ることができる試験は、非常事態により2次試験の実施が困難な場合には重宝されます。

千代田区紀尾井町にある上智大学(画像:(C)Google)



 特に2021年に関しては新型コロナウイルスの感染拡大で、国公立大学での2次試験が例年通り実施できる保証はありません。すでに横浜国立大学(横浜市)では2021年度入学者選抜(2次試験)を大学内で行うことを見送り、合否の判定として共通テストの結果等が使われることを2020年7月31日に発表しています。

 その他多くの大学でも、入学試験の方式変更の可能性についてウェブサイト上で告知しています。そのため、場合によっては初年度から大学入学共通テストがフル活用される可能性もあるのです。


【全国1万人に聞きました】大学入学共通テストは公平? 不公平?

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