アニメ『TIGER & BUNNY』で考える 大手企業「東京一極集中」の謎と未来展望

人気アニメ『TIGER & BUNNY』。今回は同作を通して、東京企業の首都圏移転について考えます。


実在の企業ロゴが登場

 突然ですが、2011(平成23)年に放送された『TIGER & BUNNY』というアニメをご存じでしょうか? 近未来の街を舞台に、特殊能力をもった者たちがヒーローとして活躍するお話です。

10周年を迎える『TIGER&BUNNY』と銀座三越とのコラボレーション(画像:三越伊勢丹ホールディングス)



 本作で大きな話題を呼んだのが、登場するキャラクターたちが実在する企業・ブランドのロゴを背負っていることでした。作中のヒーローには、それぞれスポンサー企業がいるという設定なのですが、その企業の多くが現実のものなのです。そして彼らの衣装にそれぞれのロゴがプリントされていることが、他にはないインパクトをもたらしました。

 劇場版も公開されるなど人気を博し、2022年には『TIGER & BUNNY 2』の放送も予定されています。2020年10月には、スポンサーとなる企業を公募していたことから、衣装にも要注目といえるでしょう。

 これまで登場したロゴは、私たちがよく知るものばかりで、大企業と呼ばれるものが多いです。こうした企業について、ふと気になったことがあります。それはたいていの場合、本社が東京にある、という点です。

登場する企業本社の大半は東京

 そこで、キャラクターたちにプリントされている一部の企業の本社所在地を次にまとめました。

・SoftBank(港区海岸)
・BANDAI(台東区駒形)
・Family Mart(港区芝浦)
・LOTTE(新宿区西新宿)
・すき家(港区港南)
・DMM.(港区六本木)
・Calbee(千代田区丸の内)
・アニメイト(板橋区弥生町)
・ドミノ・ピザ(千代田区岩本町)
・minimini(港区港南)
・タニタ(板橋区前野町)

以上の企業やブランドのなかには、実際に製品やサービスを利用したり、CMを見たりして身近に感じる企業も多いのではないでしょうか。

上場企業のシェア(画像:国土交通省)

 他の企業にも目を向けてみましょう。2019年に国土交通省の国土政策局がおこなった調査によると、全国の上場企業3601社のうち、1823社と実に半数強が東京に本社を構えていることが判明しています。

戦後日本における「東京一極集中」の動き

 このように、東京へ企業が集中する背景には何があるのでしょうか?

 まず挙げられるのが、戦後、経済機能を1か所に集めようとした国の意図です。当時の官僚たちは業界別に全国団体を作らせ、その本部事務局を東京都に置かせます。

大阪市(画像:写真AC)



 例えば繊維業界の場合、もともと関西地方に本社を置く企業が多くありました。しかし1970年代に日米繊維摩擦が発生。外交交渉のためにも、繊維業界の団体の本部移転が求められ、多数の企業が本社を東京へ移転しています。

 多くの企業の本社機能が東京へ移ったことにともない、金融取引も東京へ移動。これがますます東京へ企業を集めることとなりました。

 つまり国の方針や社会情勢などが、東京に企業が集中する要因のひとつとなったのです。

若者の多い東京は、採用活動に有利

 地方よりも若者の数が多いことも、東京が重宝される要因でしょう。

 東京は有名大学がたくさんあり娯楽も多いことから、全国からたくさんの学生が集まってきます。就職活動も東京で、という人も多いことでしょう。

 また雇用や労働条件に目を向けると、地方では地域間における賃金格差、求人不足などの問題が散見されます。その一方で東京は、多種多様な業界でたくさんの求人があります。賃金や福利厚生も整備されている企業が多いといえるでしょう。

 これらの理由で、東京で職探しをする人が多くなるのです。そして優秀な人材を確保したい企業としては、必然的に若者の多い東京に力を注ぐこととなります。そのためには東京に本社を置くのがもっとも効率的、というわけです。

 このような理由で企業が東京に集中していたのものの、新型コロナウイルスの感染拡大が、その状況に変化をもたらしました。テレワークやビデオ会議の導入だけでなく、都内にあったオフィスを移転させる流れを作ったのです。

 例えば人材派遣大手のパソナグループ(千代田区大手町)は、本社機能を淡路島に移し、2024年5月までに従業員1200人を異動させるプロジェクトを始動。

北海道ニセコ町(画像:(C)Google)

 またお茶の専門店として有名なルピシアは2020年7月付けで、本社を渋谷区から北海道虻田郡(あぶたぐん)ニセコ町に移転させるなど、各社で新たな模索がはじまっています。

本社を地方へ移転するメリットとは

 このように企業が本社、あるいはその機能を地方へ移すメリットとして、特に期待できるのはコスト削減でしょう。テレワークが進みオフィスに人がいない状態なら、わざわざ高い家賃を払う必要はありません。また地方ならパート・アルバイトの時給が低いため、人件費もおさえられます。

 さらに通勤時間を削減できるのも魅力です。総務省が実施している調査によると、東京都における通勤・通学の往復所要時間は、1時間34分と全国4位の長さでした。一方短い順に見ると大分県で57分、青森・秋田・島根・鹿児島県で58分という結果になっています。

通勤・通学の行動者平均移動時間(画像:総務省)



 このように東京から離れて通勤時間を短くできれば、社員はスキルアップや趣味、家事に時間をとれるでしょう。プライベートを充実させられるぶん、業務のパフォーマンス向上が期待できますね。

企業の一極集中は、今後も変わっていくのか

 お伝えしてきたように、アニメ『TIGER&BUNNY』のスポンサーだけでなく、多くの企業の本社が東京に位置していました。しかし新型コロナウイルスをきっかけに、本社を移転する企業も出てきています。

 企業の移転がもっと広まるには、国会・省庁などの首都機能を移すことが必要なのでは、と考えられています。

 もともと首都機能の移転は、東京一極集中が問題視された1970年代から議論されていました。近年は首都直下型地震のリスクもあることから、より切迫した問題であるといえるでしょう。しかし現状、首都機能の移転については先行き不透明なままです。

 したがってこの先も、行政や企業の動向を見守る必要があるといえます。


【グラフ】首都圏からの転出288社、過去10年で最多! 首都圏外への本社移転加速

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