「密」にならない交通手段といえば自転車 今なら「エコ意識」もアピールできる優れものだ

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「密」にならない交通手段といえば自転車 今なら「エコ意識」もアピールできる優れものだ

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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新型コロナウイルスが感染拡大するなか、「密にならない交通手段・スポーツレジャー」として注目されるサイクリングとその市場。最新の状況について、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

自転車を使うと「密にならない」

 2010年代に入ってから交通手段としてロードバイクに乗ったり、スポーツレジャーとしてサイクリングを楽しんだり、自転車競技を観戦したりする人が増えました。確かに、スポーツバイクで都内をさっそうと走り抜ける人をよく見かけます。

東京のサイクリストのイメージ(画像:写真AC)



 日本生産性本部(千代田区平河町2)がまとめる「レジャー白書」によれば、2019年のスポーツ自転車の市場は2560億円で、2005(平成17)年からおおむね増加傾向にあります。新型コロナウイルスの感染拡大が依然収まらないなか、今回は「密にならない交通手段・スポーツレジャー」としての自転車に着目します。

 まず交通手段としての自転車と選ぶ理由としては、

・爽快で気持ちいい
・小回りが利いて渋滞に巻き込まれない
・交通費がかからない
・健康によい

ということがあるでしょう。さらに、社会的意識やライフスタイルから自転車を選ぶ人が増えました。

 近年、若者の自動車離れが叫ばれていますが、自動車は二酸化炭素(CO2)を排出して環境に負荷をかけるため、エコでサステナブル(持続可能)な交通手段として自転車を選択する人がいます。自転車の方が安価だからという意見もありますが、COLNAGO(コルナゴ)など高額なロードバイクは優に自動車1台分はするため、前向きに選択していると言えるでしょう。

 また、自転車に乗ることはボディーメイキングの効果も非常に高く、ロードバイクに乗っている人には引き締まった体系の人がよく見られます。ロードバイクは極端な前傾姿勢で乗るため、乗る体形を維持するために食事をコントロールする人もいるほどです。加えて、自分の健康や体形維持に意識の高い人がライフスタイルの一環として取り入れていることもあります。

アニメ映画化もされた自転車競技

 自転車競技を定期開催する地域も見られるようになりました。

 一昔前まで、日本で自転車競技と言って思い浮かべられるのは競輪でした。競輪もさまざまな駆け引きがあるトラックスポーツですが、公営ギャンブルのイメージが先行する人も少なくありません。

 欧米ではツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャなどのプロロードレースが人気で、スポーツエンターテインメントとして確立されています。市街地の短い周回コースを何回もまわるクリテリウムもあります。

 国内でもアニメーション映画「茄子 アンダルシアの夏」(2003年)の舞台ともなったジャパンカップサイクルロードレース(栃木県宇都宮市)、ツアー・オブ・ジャパン(国内各地)、ツール・ド・北海道、ツール・ド・熊野、ツール・ド・沖縄など各地でロードレースが開催されています。

DVD「茄子 アンダルシアの夏」(画像:バップ)



 また、ツール・ド・フランス100回を記念して開催され、海外の有名選手も参加するツール・ド・さいたまクリテリウム(埼玉県さいたま市)、大磯クリテリウム(神奈川県大磯町)、しもふさクリテリウム(千葉県成田市)なども開催されています。

日本では2010年前後から注目

 ツール・ド・フランスは、1980年代からNHKで特集の放送が見られました。1992(平成4)年からはフジテレビの地上波でダイジェスト放送もありましたが、1998年からはスポーツ専門チャンネルでの放送に。フジテレビは2005年に放映権を手放しています。

 一方、2010年前後からツール・ド・フランスで日本人選手が活躍しはじめ、にわかに自転車競技が注目を集めるようになりました。

 さらに高校の自転車部を題材に扱った漫画「弱虫ペダル」(渡辺航、2008年~)ではロードレースの醍醐味(だいごみ)を描いて大ヒットとなり、幅広い層が自転車競技に興味を持つようになりました。

漫画「弱虫ペダル」第1巻(画像:秋田書店)

 近年のエコロジー意識の高まりもあって、総体的にサイクル系の市場が拡大したと言えます。現在はブームとなった時期から一段落感はありますが、自転車愛好家は確実に増えてひとつのスポーツレジャーとして確立したと言えるでしょう。

サイクリストをサポートする施設が続々

 国内各地ではサイクリングロードの整備が進展しました。都内では

・多摩湖自転車道
・江戸川サイクリングロード
・荒川サイクリングロード

などが有名です。また、昭和記念公園(立川市緑町)や代々木公園(渋谷区代々木神園町)、駒沢オリンピック公園(世田谷区駒沢公園)などサイクリングコースを整備する公園も増えました。

昭和記念公園(画像:(C)Google)

 そして、増加するサイクリスト(サイクリングをする人)をサポートする施設も出てきています。

 サイクルステーションはサイクルエイド(サイクルラック、飲料販売、トイレなど休憩のための機能に、空気入れや簡易修理工具セットも常備)にレンタサイクルを設置したもの。

 また、サイクルピットは公共交通機関で輪行(自転車を分解して、電車などに持って乗り込み、移動すること)した人が自転車を組み立てたりすることができるスペースのこと。

 同じく近年増加してきているランナーをサポートするランニングステーションが各地でできているのと同じ傾向と言えるでしょう。

地方には話題の施設も

 さらにサイクリストのライフスタイルショップと言えるような複合施設も生まれています。

 その先駆的な施設が2014年3月にオープンした「ONOMICHI U2」(広島県尾道市)で、自転車を部屋に持ち込んで泊まれるサイクルホテル、メンテナンスも行ってくれるサイクルショップ、サイクルカフェなどからなります。人気サイクリングスポットである街道沿いに造られ、そのデザイン性の高さからも注目を集め、さまざまな業界で話題となった施設です。

「星野リゾート BEB5 土浦」のウェブサイト(画像:星野リゾート)



 また、2018年3月にはJR土浦駅に「プレイアトレ土浦」(茨城県土浦市)がオープンしました。バイクベース「りんりんスクエア土浦」(サイクルショップ、交流スペース、組み立て・メンテナンススペース、レンタサイクル、シャワールーム、コインロッカー、宅配ロッカー)、サイクルカフェ、コンビニ、ドラッグストアなどからなる施設で、2020年3月にはサイクルホテル「星野リゾート BEB5 土浦」もオープンしています。

一般人向けの施設も都心に誕生

 これらの施設はいずれも人気のサイクリングコース沿いに開発されており、サイクリストの拠点となることを目指したものですが、それだけでなく一般の人の利用も見られます。

 都内でも2018年12月にオープンした「渋谷ストリーム」(渋谷区渋谷)内には「TORQUE(トルク)-SPICE&HERB,TABLE&COURT-」が出店。トルクとは回転数のことで、体の代謝を上げることをイメージしています。

「TORQUE(トルク)-SPICE&HERB,TABLE&COURT-」のウェブサイト(画像:東急レクリエーション)

 同店は自転車を持って入店でき、スパイス&ハーブを活用した食事を楽しめます。自転車通勤のワーカーをサポートする更衣室&ロッカー&シャワールームも設置。自転車のファッションやグッズには独特のデザイン性があり、それに引かれる人も少なくありません。

 自転車市場自体は成熟期に入ったと思われますが、これらの施設の評価が高いことから、施設開発の視点で改めてサイクリング系市場が注目されるところです。ご興味のある人はこのようなサイクリング関連施設に出掛けてみてはいかがでしょうか。

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