難化する有名私大入試 「AO・推薦入学はラッキー」はもう古い? 定員厳格化が招く全入試制度への影響とは

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難化する有名私大入試 「AO・推薦入学はラッキー」はもう古い? 定員厳格化が招く全入試制度への影響とは

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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私立大学の定員厳格化によって難関大学の志願者は減少傾向が続く一方、AO・推薦入試利用の受験生が増えています。その詳細について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

10年前も私大入学者の半数以上がAO・推薦

 2016年度から始まった私立大学の定員厳格化は、受験生の「安全志向」を生み出しました。早慶(早稲田大学、慶応義塾大学)やMARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)といった有名私立大学の一般入学試験は以前にも増して狭き門となり、志願者は減少傾向が続いています。

 その一方で難化する学力試験を回避し、小論文や面接によって合否を決めるAO(アドミッションズ・オフィス)入試や、推薦入試を利用する受験生が増えたと言われていますが、私立大学ではすでに10年前からAO入試組と推薦入試組が過半数を占めているのです。

港区三田にある慶応義塾大学(画像:(C)Google)



 文部科学省の「国公私立大学入学者選抜実施状況」によると、2010年度における私立大学の入学者(47万6333人)のうち、AO入試組は10.5%(4万9984人)、推薦入試組は40.9%(19万4745人)となっています。増加はここ数年のことではなく、私立大学では10年前から「主流の入試方法」になっています。

志願者と入学者は比例しない

 ただ入学者ではなく、志願者の中に占めるAO入試や推薦入試の割合はさほど高くありません。

 2010年度の私立大学の志願者(317万9848人)に対して、AO入試志願者は2.8%(8万7454人)、推薦入試志願者は10.9%(34万6733人)。この傾向は2019年度入学者試験でも続いており、私立大学の志願者(449万7930人)の86.5%は一般入試の志願者(389万167人)という状況です。

入試の試験会場のイメージ(画像:写真AC)

 数字だけを比較すると、AO入試や推薦入試の方が一般入試よりも楽に合格を勝ち取れると捉えられがちですが、決してそうではありません。

 私立定員厳格化の影響で、2015年度から2020年度の5年間で私立大学のAO入試の志願者は2万8000人増、推薦入試は8万7000人増となっているものの、これらの入試制度の入学者はAO入試で約6000人、推薦入試で約1万人増えたのみで、

「志願者が増えた分だけ、合格者や入学者も増えた」

というわけではないのです。

AO・推薦試験志願者が2000人を突破した早稲田

 私立大学の最難関のひとつである早稲田大学(新宿区戸塚)は、一般入試の志願者が減少する一方、AO入試と推薦入試は増加しています。

 早稲田大学は近年、独自の入試を設定するなど改革を行っているため、各年度の志願者を正しく比較することは難しいですが、AO入試や推薦入試の志願者は確実に増えています。

早稲田大学の入試データ(画像:早稲田大学のデータを基にULM編集部で作成)



 2016年度入学者試験はAO入試や自己推薦等を利用した試験の志願者は1561人(合格者409人)、指定校推薦での合格者は1457人。2017年度の志願者1640人(合格者478人)、指定校推薦等の合格者は1457人でした。

 しかし2018年度に状況は一変。AO入試や自己推薦等を利用した試験の志願者が2000人を突破し、2057人となったのです(指定校推薦等の合格者は1441人)。

 この流れは2019年度入学者試験も続き、2643人(合格者452人)まで増加。加えて、指定校推薦等による合格者も1580人に急伸。難化する一般入試を避けるよう、にAO入試や推薦入試の人気が高まりました。
 
 しかし、合格者をみてもAO入試や自己推薦等を突破することはそう簡単でないことは明らかです。2020年度では一転し、志願者は2149人に落ち着きました。

上智や立教でも公募推薦やAO入試の志願者増

 上智大学(千代田区紀尾井町)も早稲田大学と似たような傾向がみられます。指定校推薦による合格者は2016年度入学者試験で297人でしたが、2020年度入学者試験では408人と約1.4倍増加しました。

 公募制推薦も2016年度の志願者は766人(合格者489人)だったのが、2018年度の志願者は1031人(合格者539人)、2019年度は1188人(合格者531人)と増加しますが、2020年度は1076人(合格者491人)と微減しています。

上智大学の指定校推薦合格者(画像:上智大学のデータを基にULM編集部で作成)



 一方、立教大学(豊島区西池袋)はAO入試にあたる自由選抜入試で近年人気が高まっています。

 2016年度入学者試験は志願者649人(合格者232人)で、2019年度は1078人(合格者(242人)。そして2020年度は1501人(合格者2269人)と急増しています。

 ただこれらの数値比較からわかるように、各大学は志願者が増えても、合格者を上乗せすることはありません。AO入試や推薦入試は一般入試に比べてハードルが低い印象がありますが、実際は合格切符を手に入れるのは以前よりも数段難しくなっているのです。

AOや推薦入試も安全志向となるか

 受験生の安全志向により、私立大学の定員厳格化の影響は難関大学から順に影響が出始めました。かつての「AOや自己推薦なら合格」から「一般入試ほどではないが年々難化」へと変化しています。

早稲田大学のAO入試や自己推薦等の合格率(画像:早稲田大学のデータを基にULM編集部で作成)

 これらを踏まえると、有名大学は一般入試だけでなく、全ての入試制度で受験生の安全志向が加速すると考えられます。

※早稲田大学は国外の学生向けのAO・推薦入試も行っており、日本人と外国人学生を分けて志願者数や合格者数をカウントしていないため、混乱を避けるために「国外向けの入試」のデータは除外しています

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