米津玄師も、東京タワーもバーチャル化――コロナ危機でエンタメ業界が「得たもの」「失ったもの」とは

コロナ禍のなか生まれたレジャー施設と消費者のつながりなどについて、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。


注目が集まる「シャットイン・エコノミー」「DX」

 国内で新型コロナウイルスが感染拡大し始めてから9か月がたちました。いまだ感染者の増加が続き、収束の見通しがつかない状況が続いています。しかし「Go Toトラベル」「Go Toイート」などといった国の景気刺激策が始まり、従来通りとはいかないものの経済が本格的に動き始めました。

 テーマパークや遊園地、動物園、水族館、ミュージアムといった定番レジャー施設も感染防止策を徹底して営業を続けています。これらのレジャー施設では感染拡大予防のために繁忙期のゴールデンウィークを含む1~4か月間を休業し、その間の収入がゼロとなる大きな打撃を受けました。

 夏休みシーズンからは営業を再開したものの、入場制限などを行っているため、通常通りの収入には戻っていません。コロナの影響が大きいライブエンターテインメントやレジャー施設では先行きの見通せない中、コロナ禍での経営を模索していかなくてはならない状況と言えます。

 コロナ禍では「シャットイン・エコノミー(家に閉じこもる経済)」と「DX(デジタルトランスフォーメーション。ITが社会のあらゆる領域に浸透することでもたらされる変革)」が社会生活に与えた影響が大きいと言えます。

 特にDXは、コロナによって2年間分も進展したと言われています。そして社会構造として顕在化してきているのが、リモートワーク社会と本格的なオンライン社会です。

 しかし、今起きているこのような変化はコロナによって新たにもたらされたものでなく、以前から見えにくいところで進展してきたものです。ある意味、来るべき未来が一気に到来したと言えるでしょう。

 エンターテインメント業界では今回のコロナをきっかけにYouTubeやInstagramに多くのタレントやアーテイストが参入しました。

 また、コロナ感染予防の観点から従来通りのライブハウスの活動が難しく、音楽やお笑い、演劇などのライブ動画配信も活発化しました。リアルにはない表現や手法も取り入れて、コロナ収束後も新しい事業分野として取り組んでいくと考えられます。

レジャー施設が求められるオンライン化

 例えば、8月7日(金)に実施された米津玄師さんによる、オンラインバトルロイヤルゲーム「FORTNITE(フォートナイト)」内でのライブには大きな反響があり、新たな可能性を感じさせました。

米津玄師さんが出演した「FORTNITE」のスペシャルイベント(画像:Epic Games Japan)



 そのほかにも、

・オンラインフィットネス
・オンラインヨガ
・料理や趣味などのオンラインスクール
・ウェブ会ツールを使ったリモート飲み会
・リモートカラオケ
・リモート結婚式

のようなコロナ禍で生まれた新しいスタイルも、離れている人とできる、気軽にできる、時間を拘束されないなどの評価を得て今後も継続していく可能性があります。現在ではリモート宴会に合わせたケータリングを行う飲食施設も出てきているほどです。

 これからはレジャー施設でもオンラインでのマネタイズ(収益化)が重要となってきます。例えば動画で広告収入を得たり、サブスクリプションで購入者に特別な園内・館内動画やリクエストに応える動画を提供したりすることも考えられます。

 オリジナル商品のオンライン販売だけでなく、ダウンロードして選べるオリジナルネットコンテンツの販売もあるでしょう。ネットにもうひとつ施設を造るような発想が求められます。

次々と立ち上がるバーチャルプロジェクト

 5Gのサービス開始とともに、ネットで新しい試みが始まっています。

 5月19日(火)には5Gエンターテインメントプロジェクト、渋谷区公認の新しいデジタルプラットホーム「バーチャル渋谷区」がバーチャルSNSプラットホーム「Cluster」上に公開されました。

「バーチャル渋谷区」(画像:KDDI)

 参加者はアバターで自由に動き回ることができ、参加者同士のコミュニケーションもできます。バーチャルですのでコロナ禍で難しいイベントの開催も可能。

 公開当初は『攻殻機動隊 SAC_2045』の世界をバーチャル渋谷に展開、スクランブル交差点の中心で「#渋谷攻殻」ファンイベントを開催したほか、シリーズの系譜やキャラクターの設定画、タチコマフィギュアなど、ファン必見の展示コンテンツも出現しました。

 また、11月1日(日)には“100年後の東京タワー”をイメージした未来型エンターテインメント空間「バーチャル東京タワー」プロジェクトが始動しています。

「Cluster」上に公開され、アバターを使用して本物の東京タワーと同じようにメインデッキ(高さ150m)やトップデッキ(高さ250m)に昇り、東京の中心から360度のパノラマ夜景を楽しむことができます。また、マルチ参加している他者とコミュニケーションをとることができ、バーチャル東京タワー内でデートをしたり、イベントに参加したりすることができます。

 バーチャル東京タワー内のショップやグルメタウンでは限定商品・限定グルメも用意されており、ショッピングすれば商品は自宅に配送されます。さらに、バーチャル東京タワーの麓には野外フェスティバル会場が設けられ、音楽LIVEやファッションショー、グルメフェスティバルなどを開催することも可能です。

コロナ禍で見えた消費者との新たなつながり

 このようなバーチャル空間はショッピングなどで先行していましたが、レジャー・エンターテインメントの分野で展開されるようになってきました。

 ここまででなくとも、レジャー施設の特設サイトで特別な園内動画が見られたり、オーダーに応じて動画を撮ってもらえたり、ライブチャットで飼育員さんなどに質問できたりするサービスがあれば、興味を持つ人が多いのではないでしょうか。

 今回のコロナ禍ではネットを介在して消費者とレジャー施設の新たなつながりが見られました。感染の不安やステイホームのストレスを抱える消費者、在宅の家族の世話に追われる母親などに向けてさまざまな分野の事業者が何かの役に立てればと積極的に情報発信したり、新しいサービスを行ったりしました。

 レジャー施設やミュージアムでは苦境にある消費者に対して少しでも癒やしや慰め、楽しみになるようにと「休園中の動物園・水族館」「エア博物館」「おうちミュージアム」「おうち遊園地」「エア植物園」など、業態で連携した動画配信などを行い、大きな反響を得ました。

 北海道博物館が提唱して217施設(11月8日時点)のミュージアムが賛同した「おうちミュージアム」ではぬり絵やすごろく、福笑い、学習ノートなど、子どもがダウンロードして遊んだり、学んだりできるデジタルコンテンツがアップロードされました。

「おうちミュージアム」のウェブサイト(画像:北海道博物館)



 また、テーマパークでは個別にスペシャルな動画を配信。その他にも植物園では満開の花景色を楽しむことができる動画が多くのメディアで取り上げられました。それぞれの業態の特長を生かした動画配信が人気を呼んだと言えるでしょう。レジャー施設の動画配信にはまだまだ多くの可能性があると考えられます。

 ぜひ、お気に入りのレジャー施設の動画をチェックしてみてください。


【11月1日スタート】東京のシンボルもバーチャル化! 「バーチャル東京タワー」のイメージを見る

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