私大入学者の過半数が「AO・推薦入試」利用の衝撃 広がる学力差、あなたは賛成?反対?

大学受験シーズンになると何かと話題となるAO・推薦入試。その現状について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。


年々増加するAO・推薦入試の入学者

 慶応義塾大学(港区三田)が1990(平成2)年に湘南藤沢キャンパス(神奈川県藤沢市)の開校とともに始めた入学試験改革、それが「AO入試」です。

AO入試のイメージ(画像:写真AC)



 AO入試とは従来からの学力試験を課さず、小論文や面接によって学生の合否を決める選抜制度で、他の大学もその後追随するようになりました。なお、AOとは「入学事務局」を意味する「Admissions Office(アドミッション・オフィス)」の略です。

 AO入試が始まった1990年代は一般入試による大学入学が主流でしたが、AO入試と推薦入試による入学者数は年々増加していきます。

増加の背後にある私大の存在

 文部科学省の「大学入学者選抜関連基礎資料集」によると、通信課程および外国人留学生を除いた2000年度の国公私立大学の入学者59万2878人のうち、一般入試組が65.8%(38万9851人)、推薦入試組は31.7%(18万8083人)そしてAO入試組は1.4%(8117人)でした。

 しかし、2018年度の入学者61万4243人のうち一般入試組は54.5%(33万4478人)、推薦入試組は35.5%(21万8014人)、AO入試組は9.7%(5万9831人)と一般入試による入学者が10ポイント以上も減少しています。

 この数値変動は私立大学が大きく影響しています。2000年度に私立大学に入学した学生46万8260人のうち一般入試による入学者は60.1%(28万1319人)。そして推薦入試は37.2%(17万4121人)、AO入試組は1.7%(7773人)でした。 

 しかし2018年度になると、入学者48万3622人に対し一般入試組は47.3%(22万8967人)まで減少。代わりに推薦入試組は41.0%(19万8057人)、AO入試による入学者は11.4%(5万5329人)と増加しています。

 国立大学はこの18年間、一般入試組の割合は88.3%から83.7%と減少したものの、推薦入試組は10.2%から12.2%、AO入試組は0.3%から3.7%とそれぞれ数ポイントの増加にとどまっています。

確実に学生が入学するAO・推薦入試

 国立大では依然として一般入試による入学が主流ですが、私立大学では推薦入試やAO入試による入学生が増加しています。

 こうした流れが加速しているのは、私立大学の経営に関係しています。大学は経営の基盤を固めるに、「確実に入学してくれる学生」を早めに取り囲む必要があるのです。

 一般入試とは異なり、受験生が「そちらの大学に必ず入ります」と意思表示をする推薦入試やAO入試は、私立大学にとって重要度が高まっています。

推薦入試のイメージ(画像:写真AC)



 またこの数年は、若者が大都市に集中しないように私立大学の定員厳格化が進んでいます。

 難関大学の一般入試は難易度がさらに高まり、受験生の間ではランクを下げる動きも加速しているものの、一般入試に「絶対合格」という保証はありません。現役志向の高まりもあり、早々に推薦入試やAO入試で大学進学を希望する受験生が増えるのは当然の流れと言えるでしょう。

 一見すると受験生と大学側に「win-win」な関係ができますが、入学後、狭き門と化した一般入試を勝ち抜いた学生との学力差が生じるのは否めません。

動き出した文部科学省

 2021年度からセンター試験に代わって大学入学共通テストが実施されるとともに、推薦入試やAO入試も大きく変わります。

 公募や指定校推薦の推薦入試は、その名称を学校推薦型選抜に改めました。特に指定校推薦は校内成績の評定が大学ごとに定められ、基準をクリアした生徒が校内選考の末に選ばれれば志望校にほぼ間違いなく合格していましたが、大学側がこれまで独自に学力検査を行うことはほとんどありませんでした。

 国立大学でも、東北大学(仙台市)のようにAO入試を積極的に導入している大学もあります。同大は学力重視のAO入試を自負しており、センター試験と大学の2次試験を突破した学生との学力差が問題にならない取り組みを行っています。

 ここまで受験生に学力検査を実施している大学は少数ですが、このような策を講じないと一般入試組とAO・推薦入試組の学力差が埋まることは難しいのです。

 現行の入試制度にさまざまな問題点があることを踏まえ、文部科学省は「①知識・技能 ②思考力・判断力・表現力 ③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」とする学力の3要素を判断するため、学校推薦型選抜には小論文やプレゼンテーション、教科科目に関わるテストや共通テストなどから活用することを必須化することを決めました。

AO入試でも学力が問われることに

 AO入試も、開始から30年目の節目に転換期を迎えようとしています。総合型選抜と改称した従来のAO入試でも受験生への学力検査が行われるのです。

 推薦入試は校内の評定を重要視しますが、これまでAO入試は学校の成績を基準にしていませんでした。新たに始まる総合型選抜は受験生の学力を測る取り組みが行われます。

 文部科学省は、大学に入ったものの「授業についていけない」「同級生と学力の差がある」という「悲劇」が起きないよう、従来は学力を測ることのなかったふたつの制度にメスをいれたのです。

一般入試組との学力差を埋められるか

 少子化の中でも大学進学率が上昇し、いまでは高校卒業生の過半数が大学に進学しています。大学に入るには、それ相応の教養や学力が求められるのは当然のことです。例え簡単に入学できても、学業不振に陥って、留年したり自信を喪失したりしてしまえば元も子もありません。

受験勉強のイメージ(画像:写真AC)



 2020年度は大学入試の転換期となりますが、日頃から真面目に勉学に励み、志望大学に見合う学力を備えることが何よりも大切だということは変わりありません。 

 新しい入試制度に学力検査が加わることで混乱が生じ、受験生も不安になることでしょう。しかし、さまざまな入試制度を経由して入学した学生間の学力差が解消されることは、大学と学生にとって本来望ましいことなのです。


【最新データ】AO・推薦入試で入学した人、どのくらい増えてる?

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