世間の「普通」から外れることは、どうしてこんなに怖いのだろう【連載】大原扁理のトーキョー知恵の和(1)
2019年12月11日
ライフ何とは言えないのだけど何となく息苦しい。そんな気持ちでいる人へ、東京で週休5日・年収90万円という「隠居生活」を実践した大原扁理さんに生き方のヒントを尋ねる企画「トーキョー知恵の和」。今回のテーマは「東京と『普通』とは」です。
私が20代で「週休5日」生活を始めた話
遅刻をせずに会社へ行って、毎日働いてお給料をもらう。なるべく人に嫌われないように、笑顔で愛想よく振舞う――。「世間の普通」はいつの間にか私たちをがんじがらめにしていて、何だかときどきとても息苦しくなってしまいます。それなのにその「普通」からはみ出すことは、なぜだか途方もなく恐ろしく思えるのはなぜなのでしょう。東京で週休5日・年収90万円という「隠居生活」を実践した大原扁理(おおはら・へんり)さんが、「世間の普通」を手放した先にある「自分のための普通」について語ります(構成:ULM編集部)
※ ※ ※
こんにちは。20代から東京で隠居生活を始めました、大原扁理といいます。
「隠居生活」といっても、投資やITでさっさと儲けてアーリーリタイア、みたいな話ではありません。週に2日間はまじめに働いて月に7~8万円稼ぎ、あとはなるべく社会とは距離を置いて、少労働、低消費の生活を6年間続けてきました。
そういう生活にぴったりくる名前がなかったので、既存の言葉のなかから一番しっくりくるものを選び、勝手に「隠居してます」と言ったのです。
国分寺市内の家賃2万8000円(最寄り駅まで徒歩20分以上)という「価格破壊アパート」(!)に住んで、食事は基本的に毎日自炊。さらに野草を摘んできて食べたり、服は3~4パターンをローテーションで1年間着回したりです。

仕事のない日は、だいたいお茶を飲みながら図書館で借りてきた本を読むか、散歩するか、寝てました。携帯も持たず、ほとんど引きこもりのような生活……。
「そんな生活、何が楽しいの?」って思いますよね。私もそう思ってました、実際に隠居をしてみるまでは。
「世間の普通」を拒否したら、本当の生活が始まった
「普通」という基準は、マジョリティに最適化されたものです。今現在、多くの人が採用している生活スタイルや考え方が「普通」と呼ばれるようになる。「一般的」と言い換えると、わかりやすいかもしれません。
隠居生活に突入してから、それまで当たり前のように受け入れていた「普通」っていったい何だったんだろう、と考えてしまうことが多々ありました。
テレビでは、「東京でひとり暮らしをするには最低でも月に17万円必要」とか言っていたけど、全然そんなことないじゃん。私の東京での生活費は、ひと月7万円。あれ、「世間の普通」って、全然当てにならん……。そう気づいた瞬間でした。
もしかしたら、はた目には、やるべきことから逃げてるだけ、と映ったかもしれません。ところが実際は、引っ越して仕事や人間関係を整理したとき「人生の舵(かじ)を初めて自分で握ることができた」と感じていたのです。
「世間の普通」を拒否して、そこからはみ出てしまったとき、頼りになるのは自分だけ。間違えても誰かのせいにはできないという緊張感。自分の人生に対するコミットメントや、覚悟のようなもの……。これでやっていけるのか、と本当は不安もあったけれど、初めて人生が自分のものになったと感じた、私にとっては記念すべき主体的な体験でした。

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