1クラス40人以下の授業が7割 少人数制&ワンキャンパスで徹底指導「学習院大学」とはどのような大学なのか

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1クラス40人以下の授業が7割 少人数制&ワンキャンパスで徹底指導「学習院大学」とはどのような大学なのか

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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皇族や良家の子女たちが通う学校といったイメージが強い学習院大学。その隠れた魅力について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

都心だがキャンパスは緑豊か

 学習院大学(豊島区目白)は、皇族や旧華族の子息の教育機関として設立された伝統ある大学です。近年では、都内の難関私立大学群「GMARCH(学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学。中央大学、法政大学)」のひとつとしても知られています。

 敷地面積は約18万平方メートル(東京ドーム3.8個分)で、都心にありながら緑が豊か。広大な目白キャンパスには、大学や大学院のほか、幼稚園や男子校の中等科・高等科があります。

豊島区目白にある学習院大学(画像:(C)Google)



 大学の歴史は江戸時代後期の京都御所から始まります。1847(弘化4)年、御所の健春門の近くに公家の子息向けの学習所を開設。日本の歴史が大きく動くことになる、ペリー来航の6年前のことです。

 1849(嘉永2)年には、孝明天皇の勅額(ちょくがく。天皇直筆の額)である「学習院」が与えられ、現在もその名が受け継がれています。しかし、京都時代の学習院は幕末の動乱によりいったん姿を消しました。

 再びその名が表舞台に上がったのは、明治維新に伴い皇族と華族が京都から東京へ移り住んでからです。皇族と華族の子息・息女たちが通う学校として1877(明治10)年、現在の千代田区神田錦町で開校しました。

 7年後の1884(明治17)年には、宮内省管轄の官立学校に。ちなみに1885(明治18)年には、現在の学習院女子中等科・高等科(新宿区戸山)や学習院女子大学(同)の起源にあたる華族女学校が新宿区四谷の地に開校。その後、1906(明治39)年に学習院と合併し、学習院女学部と名称を改めています。

5学部17学科、学部生は8968人

 これにより、皇族や華族の子息・息女向けの教育機関がそろいます。学習院は明治期に移転を数回繰り返し、1908年(明治41)年に四谷から目白の地へ移転。このときに初等科は現地に残り、現在に至ります。

 一方、女学部も千代田区永田町や現在秩父宮ラグビー場となっている港区北青山の地へ移転したものの、東京大空襲で校舎が焼失。戦後は新宿区戸山の地へ移ります。こうした経緯もあり、学習院女子中等科から学習院女子大学は学習院大学の目白キャンパスとは別の場所にあるのです。

学習院大学と学習院女子大学の位置関係(画像:(C)Google)



 学習院大学は、

●法学部
・法学科
・政治学科

●経済学部
・経済学科
・経営学科

●文学部
・哲学科
・史学科
・日本語日本文学科
・英語英米文化学科
・ドイツ語圏文化学科
・フランス語圏文化学科
・心理学科
・教育学科
・教育学科

●理学部
・物理学科
・化学科
・数学科
・生命科学科

●国際社会科学部
・国際社会学科

 5学部17学科で、学部生の数は8968人です(2020年度)。

1クラス40人以下の授業が約7割

 学習院大学は全国的に高い知名度を誇りますが、他の私立大学のような拡大路線をこれまで選んできませんでした。2016年度に新設された国際社会科学部は、実に52年ぶりの新学部誕生だったのです。

 また、伝統的に少人数制の授業を行い、現在でも1クラス40人以下の授業が約7割を占めています。

豊島区目白にある学習院大学(画像:(C)Google)



 一般的に、キャンパスや学部をむやみに増やすと代々受け継がれてきた指導体制が取りにくくなり、大学側の本望ではなくなります。加えて、大学の規模を大きくすれば学生数が増え、学生の質を保つのが難しくなるのです。

 その点、学習院大学は「少人数授業と質の高い教育の両立」を考慮し、今日に至るまで目白のワンキャンパスを貫いていています。

大学入学共通テストに参入

 また、学習院大学は私立大学の多くが導入していたセンター試験利用入試を採用していませんでした。同大の学校案内によると、その理由は「マーク式解答問題のみ構成されているセンター試験では、受験生のみなさんの真の実力を測るのは困難と考えてきたため」だと言います。

 しかし、これからの入学試験に大きな決断を下しています。2020年度から始まる大学入学共通テストによる入試を決めたのです。

 同大は、センター試験と比べて大学入学共通テストについて「思考力・判断力・表現力を評価するための従来にない工夫が見られます」とし、一定の評価を与えてることが伺えます。

センター試験利用未実施が生んだもの

 さて、東京の大学では関東地方(東京、神奈川、埼玉、千葉、群馬、栃木、茨城)の高校出身の学生が占める割合が昨今高くなっています。

 文部科学省の2019年度学校基本調査によると、関東地方の高校出身者が東京の大学の新入学生に占める割合は75.4%にまで上昇。いわゆる大学の「ローカル化」が進んでいます。

 こうした事態に対し、東京の私立大学は各地で入試を実施し、地方の優秀な学生に入学の機会を与える取り組みも行っています。

 しかし学習院大学はこれまで地方受験やセンター試験利用入試を行わず、地方の学生を取り込む積極的な行動を行ってこなかったため、2019年度は学部生の約87%を関東出身者が占める結果となりました。

 大学独自の試験に挑戦した学生に入学してもらうことを方針を大切にした結果、こうした好ましくない状況も生み出すこととなったのです。

センター入試のイメージ(画像:写真AC)



 同じ地域や似た境遇の学生が集まると、当然、キャンパス内やゼミでも多様性が欠けてしまいます。昨今、社会における多様性の受容と確保は欠かせない重要な項目となっています。

 学習院大学が大学入学共通テストを利用することになった狙いは、そのような点ではないかと考えられます。

就職率が高く就職先に大企業も多い

 前述のように皇族の学校や良家の子女が通うといったイメージが強い学習院大学ですが、りそなホールディングスやみずほフィナンシャルグループ、第一生命保険など金融大手各社への就職にも強みを見せています。

 これはもちろん、同大が行う就活セミナーに金融大手が参加していることが挙げられますが、それ以外にも、少人数制の授業で学生が教師たちに質問しやすい環境が動力源になっていることも考えられます。

 加えてワンキャンパスという条件を最大限に生かし、就職活動に関する情報やカウンセリングをひとつに集約し、学部を超えて共有してることもあるでしょう。

学習院大学のウェブサイト(画像:写真AC)



 少人数授業で培われてきた学生育成という知的財産は、不安定な時代が到来したときこそ重要性を増します。こうした実績を外に向かって積極的に発信していくことが、大学のローカル化を是正するきっかけとなるのではないでしょうか。

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