直近の東京感染者は100~200人台
「東京都内の新型コロナ感染者数」と同じ価格で、生ビール1杯を提供します――!
そんなキャンペーンを実施する飲食店が、東京都内に現れました。
BigBelly(豊島区池袋)が運営する、「アガリコ餃子楼 新宿ハルク」(新宿区西新宿)、「うどん酒場 香川一福 池袋」(豊島区池袋)などの3店舗です。
東京都における新型コロナウイルスの感染者数といえば、在京テレビ局などの報道各社が連日速報で伝えるなど、世間の関心を集める重要事項。
「今日は減った」「また増えてしまった」と、医療・行政関係者や都民のみならず自粛疲れを感じる多くの国民が、一喜一憂しながら日々の経過を見守っている状況です。
ちなみに東京都のホームページなどによれば、直近の感染者数は
・9月4日(金):136人
・9月3日(木):211人
・9月2日(水):141人
・9月1日(火):170人
・8月31日(月):100人
・8月30日(日):148人
・8月29日(土):247人
と、100人から200人超の間で推移しています。
批判されかねない企画、狙いは?
そうした中で、その感染者数を「生ビール1杯」の価格に反映させるというアイデアは、非常に斬新である半面、ともすれば
「不謹慎だ」
「茶化(ちゃか)しているのか」
などといった批判も受けかねない、かなり“とがった”企画と言えそうです。
企画には果たしてどのような狙いがあるのか? 運営会社に直接話を聞いてみたところ、そこには飲食業界としての切実な「ある願い」が込められているようでした。
暗い話題ばかりの業界に起爆剤を
答えてくれたのは同社代表の大林芳彰さん。直営の10店舗とグループ店25店舗を東京・池袋などを中心に展開しています。
今回の「コロナ感染者数 = 生ビール価格」の企画を始めたのは2020年8月31日(月)。
客の注目を集める面白いことをやれないか? とスタッフらと案を出し合う中で、「100~200円台で生ビールが飲めたらウケるのではないか」と思いついたといいます。
店内に掲げる「本日のビール価格」という看板には、当日の感染者数に合わせた日替わりの価格表示のほか、「コロナ終息祈願!!」の文字も。
「とにかくこの半年間、飲食業界は暗い話題ばかりでした。店を閉めてしまった仲間も何人もいます」
「明るいニュースがひとつもない中で、何とか元気を出して頑張っていかなくてはならない。お客さんに喜んでもらえることをしたい、お店に来てもらいたい、と思ったのが、今回の企画を始めたひとつめの理由です」
大林さんによれば、運営する計35店舗の売り上げは、2020年3月からの自粛期間中、以前の6割減ほどに落ち込みました。
緊急事態宣言が解除されて以降、8月になってようやく客足が戻りつつありますが、かつての盛況を取り戻すにはまだまだ時間が掛かりそう。何か起爆剤になるきっかけを、という思いで企画をスタートさせたといいます。
感染者数減を目指す動機になれば
もうひとつ、企画を始めた大切な理由があると言います。
それは、店内の看板にも掲げた通り「新型コロナを一刻も早く収束させる」という目標の一助になることです。
「感染者が減れば減るほど、生ビールの価格は安くなる。そうなればお客さんも喜ぶはずです。ビールが安く飲めるなら皆で協力して感染者を減らしていこう、というモチベーションのひとつになればいいなと考えているのです」
対象店のひとつ「アガリコ餃子楼 新宿ハルク」では、普段の提供価格は生ビール1杯450円。それがキャンペーン中は100~200円台という値付けに、客も「えっ、安い!」と驚くのだそう。
今のところキャンペーンの終了時期は決めていないと言い、「感染者数50人台(生ビール1杯50円台)くらいまでは頑張ってみようかなと思っていますよ。早期に感染者がゼロになったら、0円でお客さんとお祝いしたいです」と大林さんは話します。
対象の店舗は、客席数を減らすなど感染対策を万全にして営業中。9月5日(土)からは北千住にある直営店もキャンペーンに加わるなど、今後も対象店舗を増やしていく予定だそうです。
安全に楽しく皆でビールを飲もう
「この企画が当社だけに限らず、いろいろな飲食店に広がってくれたらいいなと考えています。感染者数を減らそう、そしておいしく安全に楽しんでほしいという機運が、飲食業界やお客さんの間に広がっていけばうれしいですね」と大林さん。
自粛ムードが広がった2020年3月から、すでに半年。外食は私たちの生活からずいぶん縁遠いものになってしまいました。
でも、皆で同じ場所に集まっておいしいおつまみを囲みながら交わす乾杯の楽しさは、ほかに代えがたい価値があるのも事実。
飲食業界の復活と、コロナの収束。100円台で飲める1杯のビールには、そんな切なる願いが込められているのでした。