コロナ疲れの人たちが立川「グリーンスプリングス」に足を運ぶ理由

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コロナ疲れの人たちが立川「グリーンスプリングス」に足を運ぶ理由

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百瀬伸夫

IKIGAIプロジェクト まちづくりアドバイザー

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2020年4月にオープンした立川市の複合施設「グリーンスプリングス」。そんな同施設はウィズコロナ時代に適した画期的な施設だといいます。IKIGAIプロジェクト まちづくりアドバイザーの百瀬伸夫さんが解説します。

ニューノーマル社会を先取りした施設

 テレワークやオンライン会議の定着にともない、働き方改革は確実に新たな段階に進みつつあります。職場や自宅のあり方にも変化が現れ、郊外や地方に関心を持つ人も増えているのではないでしょうか。

 そんななか、東京郊外の立川市に2020年4月オープンした複合施設「GREEN SPRINGS(グリーンスプリングス)」(立川市緑町)が注目を集めています。

グリーンスプリングス内にあるコンサートホール「立川ステージガーデン」前の芝生広場の木陰で団らんするファミリー。子どもも気持ちよさそうにゴロゴロしている(画像:百瀬伸夫)



 コンセプトは今までになく斬新で、施設を“まちの縁側”に例えて緑と人をつなぎ、商業棟の一等地を“まちのリビングルーム”として開放するなど、ニューノーマル社会を先取りした複合施設となっています。

緑豊かな恵まれた環境の立川市

 立川市は中央本線とともに発展を遂げ、JR立川駅を中心に、

・グランデュオ立川(立川市柴崎町)
・エキュート立川(同)
・伊勢丹立川店(同市曙町)
・立川高島屋S.C(同).
・IKEA立川(同市緑町)
・ららぽーと立川立飛(たちひ。同市泉町)

などの大型店が集積する、首都圏有数の繁華街です。

立川駅前の様子(画像:写真AC)

 また中央本線や青梅線、南武線、多摩都市モノレールが乗り入れ、市の人口約18万人に対し、JR立川駅の乗降者数は1日あたり約33万人と都心並みで、多摩地区最大級のターミナル駅として多くの人に利用されています。

 注目のグリーンスプリングスは、立川駅北口から徒歩5分、緑豊かな「国営昭和記念公園」(同市緑町)と隣接し、多摩都市モノレール沿いの緑道「サンサンロード」に面した、文字通り緑豊かな恵まれた環境に立地しています。

小津安二郎の映画作品からの影響も

 グリーンスプリングスは“まちの縁側”をテーマに、約4万平方メートルの敷地に

・パーク
・ステージ
・ホテル
・ショッピング
・テラス
・オフィス

といった機能を複合。

 5000平方メートルを超える軒裏天井(のきうらてんじょう。壁から外側に飛び出た軒の裏側の天井)には多摩産の木材をふんだんに使用するなど、自然と調和する“ウェルビーイング(心とからだに気持ちいい)”を目指す施設になっています。

グリーンスプリングスの構成(画像:立飛ホールディングス)



 主なデザインを担当した清水卓さんは、アメリカの建築家フランク・フロイド・ライト(1867~1959年)の描いた自然と共生する建築や、小津安二郎監督の映画に登場する縁側などから施設イメージを膨らませたと語っています。

「緑」と「水」が交差する中央広場

 施設の目玉は、建物群に囲まれた約1万平方メートルの中央広場「パーク」で、「緑」と「水」が交差する空間としてデザインされました。

グリーンスプリングス内の「パーク」。緑と水の交点である池には和と洋が交差している(画像:百瀬伸夫)

 広場には池、あずま屋、噴水、カフェ、芝生広場があり、広場に身を置くと心が解放されていくのがわかります。

 さらにかつてここに飛行場があったことから、滑走路を連想した水が流れる全長120mの階段式カスケード(連なった滝)は、いままでになかった圧巻の空間です。

 2020年の夏も近隣の子どもたちやお母さん、リモートワークで疲れた人々の心と体を癒やす気持ちのいい場所になっています。

2500席のコンサートホールも設置

 また、施設正面の「TACHIKAWA STAGE GARDEN(立川ステージガーデン)」は、多摩地区最大規模を誇る2500席の多目的・多機能コンサートホールです。

全長120mの階段状の滝「カスケード」で解放感に浸る若者たち(画像:百瀬伸夫)

 その特徴は屋内ステージと屋外がひとつにつながる機能にあり、屋上にも昭和記念公園の森を一望できるテラスとバーがあります。

 一方、リゾートホテル風の「SORANO HOTEL(ソラノホテル)」は、食事、スパ/温泉、フィットネス、ワークショップなどがあり、全客室とも50平方メートル・バルコニー付きの眺めが売り。部屋や屋上スパからは富士山、奥多摩の山々に沈む夕日を見ながらリゾート気分が味わえます。

100年都市を目指したまちづくり

 グリーンスプリングスのユニークな点は、広場に面する一等地を、誰でも自由に過ごせる“リビングルーム”として来場者に開放していることで、早速リモートワークに活用している人も。

床には「LIVING ROOM(リビングルーム)」の文字。商業棟の一等地を無料で開放、来場者はソファでひと休みできたり、リモートワークもできたりする(画像:百瀬伸夫)



 また、緑地内に点在するあずま屋はストレスの解放や、人間本来の五感を呼び覚ましてくれる安息の場にもなっているのです。

 グリーンスプリングスは、決して新型コロナを想定して建設されたものではありません。

 しかし従来の施設にはない斬新なコンセプトが、コロナ禍で求められるライフスタイルを先取りし、現在は「コロナ疲れ」の来場者も優しく受け入れてくれる自宅のような存在になっているのです。

活況の背景にある地元企業の貢献

 グリーンスプリングスを手掛けたのは「ららぽーと立川立飛」と同じく、立飛ホールディングス(立川市栄町)です。

立川市栄町にある立飛ホールディングスの本社外観(画像:(C)Google)

 同社は1924(大正13)年に石川島飛行機製作所としてスタート。現在は土地建物を管理する不動産賃貸業を中核に、立川の発展に貢献し、地元では有名な企業です。

 また保育園事業でも斬新な教育方針を掲げ、

・ふじようちえん(同市上砂町)
・Fuji赤とんぼ保育園(同市泉町)
・Fujiれもん保育園(同市緑町)

は教育界から高い評価を得ています。こういったことからも、同ホールディングスのまちづくりは100年先の立川を目指していると言えるでしょう。

リモートワーク時代に求められるまちとは

 多くの人が、都心の「箱(会社や住居)」の中で働き暮らしてきたビフォアコロナの社会は現在、ウィズコロナ&ポストコロナ社会への転換を求められています。

 リモートワークが進むと、郊外のまちに住む人が増えると言われています。その際、選ばれるまちとはどのようなまちでしょうか。

緑豊かな広場に点在するあずま屋で憩う来場者たち(画像:百瀬伸夫)

 都心に近く、緑や自然に囲まれたまち、そして心と体が休まるグリーンスプリングスのような施設がある、そのようなまちが注目されると筆者は考えています。

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