小学校「英語教科化」は吉か凶か? 経済格差が生み出す不安と東京都の本気度

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小学校「英語教科化」は吉か凶か? 経済格差が生み出す不安と東京都の本気度

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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2020年度から、小学5~6年生で正式に教科化された英語。そんな公教育としての英語に力を入れる東京都の取り組みについて、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

グローバル化に合わせた公教育に挑む東京都

 グローバル化の加速で、外国語教育の早期実施の期待が高まった結果、英語は2020年度、公立小学校で5年生から「教科」扱いとなり、通知表で成績が出されるようになりました。

 特に東京都は官公庁や大企業の本社が集中していることから、英語教育を始めとするグローバル人材育成を目指した公教育の推進が行われています。

 東京都では2006(平成18)年度から小学校での英語教育に向けた指導方法研究を独自に行い、中核教員の養成など、段階を踏んで2020年度の教科化に向けて準備をしてきました。

 しかし小学校で習った英語を、中学校までスムーズに継続・発展させることは決して簡単ではありません。

 そのため東京都は2015年度と2016年度、

・目黒区
・世田谷区
・荒川区
・町田市
・日野市
・東村山市
・福生市
・羽村市あきる野市
・西東京市

の計10地域を英語教育推進地域に指定し、英語教育の支援を実施。カリキュラム開発やICT活用の研究を行ってきました。

18年度発表の計画からみる本気度

 2018年度に発表された「東京グローバル人材育成計画20’」では、今後3年間の東京都の英語教育に関する方針が掲げられています。

子どもと英語のイメージ(画像:写真AC)



 同計画では「英語力」「国際感覚」、そして英語を学ぶ上で必要な日本人としての「自覚と誇り」を3本柱に据え、小中高に渡る英語力アップを狙っています。

 英語の課題としてあげられる「個人差」は、中学校で少人数授業の実施や習熟度別にクラス分けることで解消するとし、きめ細かな対応を行うことで、誰もが一定の英語力を身につけられるよう提案されています。

 英語教育はこれまでも各家庭任せな面が強く、能力差が経済事情に左右されてしまう傾向がありました。しかし、公教育で高いレベルの授業を受けることができれば、さまざまな環境にある生徒たちの英語力を向上させることができます。

 特に東京都は世界有数の都市であるだけでなく、教育事情が特殊なため、「公教育でも英語に力を入れている」ということを示し、実践しなければならない立場にあるのです。

東京都特有の教育事情とは

 全国の子どもたちの大半は小中学校の義務教育期間、公立学校へ通っていますが、東京都は、特に23区を中心に、私立中学受験が盛んという現実があります。

 東京都教育委員会の「令和元年度公立学校統計調査報告書『公立学校卒業者(平成30年度)の進路状況調査編』」によると、都内の学校に進学した都内公立小学校の卒業生のうち、都立中高一貫校・国立大学付属中学・私立中学に入学した児童は全体の20.35%にものぼりました。

子どもと英語のイメージ(画像:写真AC)



「小学校を卒業したら地元中学に通う」という考えが主流の地方とは異なり、東京は小学3~4年生から本格的に通塾し、入試に備える子どもが少なくありません。

 開成中学(荒川区西日暮里)や桜陰学園(文京区本郷)を筆頭とする超難関校はまだ導入していないものの、首都圏の中学受験において、英語を受験科目として課す学校も年々増えています。

 小学6年生時点で英検3級以上のレベルを目標に、幼児期から英語教育をスタートする家庭が増加するのはもはや避けられないでしょう。

経済格差による英語教育機関を是正できるか

 もちろん東京都は家庭の経済力に関係なく、言語能力の高い子ややる気のある子を伸ばしていく狙いがあります。

 焦って私的に英語教育を始めるより、学校教育で英語に触れる子どもの方が後々伸びる可能性もあります。

 そして何より英語を含めた外国語はコミュニケーションツールであり、入試の「道具」ではありません。子どもたちの楽しさを尊重しながら、学んでもらう必要があるのです。

東京都庁(画像:写真AC)



 本来であれば今夏は東京オリンピック・パラリンピックが行われ、世界共通語である英語への関心や教育がさらに高まると予想されていました。前述の「東京グローバル人材育成計画20’」もそれに向けてのものでした。

 新型コロナウイルスの影響で開催延期になりましたが、英語そのものの必要性は今後も変わりません。 

 いかに経済格差による英語教育の機会の格差を減らし、子どもに英語を身につけていくのか――。

 世界の大都市のひとつとしての自負を胸に、日本の英語教育の先頭を走る東京都の取り組みに今後も注目が集まりそうです。

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