豪放磊落な会社役員が「9月29日」だけは外出しないと決めた思いがけない理由【連載】東京タクシー雑記録(1)

タクシーの車内で乗客が語る問わず語りは、まさに喜怒哀楽の人間模様。フリーライター、タクシー運転手の顔を持つ橋本英男さんが、乗客から聞いた奇妙きてれつな話の数々を紹介します。


85歳の男性が語った、半世紀前の体験

 フリーライターをやりながら東京でタクシーのハンドルを握り、はや幾年。小さな空間で語られる乗客たちの問わず語りは、時に聞き手の想像を絶します。自慢話に嘆き節、ぼやき節、過去の告白、ささやかな幸せまで、まさに喜怒哀楽の人間模様。

さまざまな客を乗せて走る東京のタクシーのイメージ(画像:写真AC)

 今日はどんな舞台が待っているのか。運転席に乗り込み、さあ、発車オーライ。

※ ※ ※

 大田区・蒲田から横浜までの長距離客がいました。約30分の道すがら、多摩川べりの美しい夕焼けも妙に頭に残る話です。2012年のことです。

 多くの場合、お客さんが自分の話をし始めるのに前後の脈絡はさほど関係ありません。横浜市内の北部エリアに住むというその男性(85歳)も、きっとおしゃべり好きなのでしょう、老齢に似合わぬ雄弁さで半世紀以上前の思い出を語り始めました。

家路を急ぐ列車で思わぬ“事件”発生

 1956(昭和31)年。29歳のとき、男性はある会社の仙台工場に勤務していたといいます。その日も仕事を早めに切り上げ、友人とふたり、安いバ―でうまい酒を飲みました。

「うぃー、もう帰ろうかねぇ」

仙台市内にある社員寮に向かう東北本線仙台駅へ、21時発の普通列車に乗車。いつもの6両編成でした。

「ボーーーー、ボッポッポッ」

 発車後、間もなく男性はトイレに行きたくなって席を立ちます。千鳥足で車内の通路を歩きました。そこから“事件”が起こります。何と、トイレと出入り口の戸を間違って開け、外に吸い込まれるようにスポンと車外へ転落してしまったのです。

気づけば線路脇の草地で気絶していた


【意識調査】タクシー運転手と「会話する」80%以上 あなたは?

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