かつては上流階級が集う名門 漫画「はいからさんが通る」のモデル「跡見学園女子大学」とはどのような大学なのか

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かつては上流階級が集う名門 漫画「はいからさんが通る」のモデル「跡見学園女子大学」とはどのような大学なのか

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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原作漫画だけでなく、アニメや歌劇も人気の「はいからさんが通る」。そんな同作の舞台になったのが跡見女学校(現・跡見学園女子大学)です。ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

少女漫画「はいからさんが通る」のモデル校

 東京都内には歴史ある女子大学が多く存在しますが、そのなかでも明治初期から女子の高等教育機関を設立し、積極的に活動していたのが跡見女学校(現・学校法人跡見学園)の創立者である跡見花蹊(かけい)です。明治期から終戦前年まで続いた跡見女学校は少女漫画の名作「はいからさんが通る」の主人公、花村紅緒(べにお)が通う女子校「跡無女学館」のモデルとされ、上流階級の子女が多く通う女子校として名をはせました。 

 同学園が1965(昭和40)年に設置した跡見学園女子大学は現在、

●文学部
・人文学科
・現代文化表現学科
・コミュニケーション文化学科
・マネジメント学部

●マネジメント学科
・生活環境マネジメント学科

●観光コミュニティ学部
・観光デザイン学科
・コミュニティデザイン学科

●心理学部
・臨床心理学科

の4学部8学科がある、学部生4521人の中規模大学です(2020年5月1日現在)。

 2020年はコロナ禍の影響で中止となりましたが、新座キャンパス(埼玉県新座市)は桜の名所として名高く、例年見頃を迎えた時期にキャンパスを開放し桜祭りを行っています。

 また、同キャンパスの付属図書館は百人一首に関する3000点以上の資料が収められていることでも知られています。

 跡見学園女子大学がこのような伝統文化を大切にしているのは、創立者・跡見花蹊が東京に来る前に大阪や京都で教育者や芸術家として実績を残していたことが影響しています。

多彩な才能を持つ跡見花蹊

 跡見花蹊は大阪(摂津国木津村)出身で、父親は地元で寺子屋を開いていたこともあり、幼年期から学問や書道に多く触れていました。

2008年開設。文京区大塚にある跡見学園女子大学の文京キャンパスの外観(画像:(C)Google)



 花蹊の才能は学問や書道だけに止まらず、絵画にまで及びます。京都へ行き画家に師事して腕を磨きますが、このことが後に皇族を始めとした上流階級とつながるきっかけになりました。

 父から寺子屋の運営を19歳で継ぎ教育者としての第一歩を歩み出した花蹊は、幕末に大阪から京都に移り、女子教育に着手していきました。

 明治維新により皇族が東京に移り住むのに伴い、多くの公家も京都を後にしたことを受けて、花蹊も京都の私塾を畳み東京へ向かい、父が仕えていた公家の住居の一部を借りて新たな塾を開きます。

 女子教育者としてすでに実績があり、書道や日本画の才能を持つ花蹊のもとには上流階級の子女が集い、時には皇族に使える女官の教育も担当。評判が高まると生徒の数も増えていきました。

 塾が手狭になったため、花蹊は1875(明治8)年、現在の千代田区神田の地に後に跡見女学校と名前を変える私塾「跡見学校」を開校しました。学校法人跡見学園では現在、この年を跡見学園女子大学の「創立年」としています。

新座キャンパスと文京キャンパスの2体制

 その後、跡見学園は埼玉県新座市に1万5000坪の土地を取得。創立90年目となる1965(昭和40)年に、四年制大学の跡見学園女子大学を開学しました。

 それから40年以上に渡って新座キャンパスのみを四年制大学の拠点としていましたが、2008(平成20)年、文京区にあった短期大学部との統合にともない、同地に文京キャンパスを開設。2キャンパス体制となりました。

文京区大塚にある跡見学園女子大学の文京キャンパスの位置(画像:(C)Google)



 新座キャンパスは1~2年生が、文京キャンパスは3~4年生が学んでいますが、本部を文京キャンパスに置くことで「東京の女子大」という付加価値をアピールしています。

 文京キャンパスは新座キャンパスとは異なり都心にあるものの、大学の屋上は開放的な作りとなっており、その雰囲気を楽しむことができます。

地域社会に貢献する施設は学生育成を兼ねる

 跡見学園女子大学は、キャンパスのある地域への社会貢献を重要視する大学でもあります。

 新座キャンパスには心理教育相談所を設けており、悩みを抱える幅広い年齢の人に門戸を開いています。文京キャンパス近くにも分室の「ATOMI さくらルーム」を設置しています。

 相談室は大学院生の実習の場にもなっており、地域社会への貢献と同時に学生の育成も兼ねる施設となっています。

文京区本郷の旧伊勢屋質店(画像:(C)Google)



 ほかにも、解体の危機がうわさされた、樋口一葉が通ったと言われる文京区本郷の旧伊勢屋質店を買い取って保存。一般公開のほか、観光コミュニティ学部の授業として学生による期間限定のカフェもオープン、実習も兼ねる文化財との共存を実践しています。

長い歴史とキャリア支援で高い就職率

 跡見学園女子大学では1年生から卒業後のキャリア育成を見据えた支援を行っており、「就職率97.9%」(2019年度)という高い実績を誇ります。

跡見学園女子大学のウェブサイト(画像:跡見学園)

 女子学生の大学進学率は現在上昇しつつあるものの、共学大学を選択することも多く、女子大学はかつてのような輝きを失いつつあります。

 そのようななかでも、跡見学園女子大学は歴史に裏付けられた信頼と手厚いサポートにより、大手企業を含めた就職実績で存在価値を発揮しています。

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