東京「月収7万円」生活 食事はカップ麺ばかりと思いきや、実はビタミン豊富で健康体になりました【連載】大原扁理のトーキョー知恵の和(9)

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東京「月収7万円」生活 食事はカップ麺ばかりと思いきや、実はビタミン豊富で健康体になりました【連載】大原扁理のトーキョー知恵の和(9)

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大原扁理

隠居生活者・著述家

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何とは言えないのだけど何となく息苦しい。そんな気持ちでいる人へ、東京で週休5日・年収90万円台という「隠居生活」を実践した大原扁理さんに生き方のヒントを尋ねる企画「トーキョー知恵の和」。今回のテーマは「東京と『玄米菜食』」です。

月収7万円でも無農薬「玄米菜食」生活

 手持ちのお金が少ないとき、支出を抑えるために削りがちな項目のひとつに「食費」があります。でも、偏った食事ばかりが続くことは心にも体にも決してよくありません。東京で週休5日・年収90万円台という「隠居生活」を実践した大原扁理(おおはら へんり)さんは、どんな食生活を送っていたのでしょう。(構成:ULM編集部)

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 玄米菜食と聞くと、どんなイメージがあるでしょうか。「手間ひまかかる伝統的な和食」っていう感じで、作るのが大変そう……私も昔はそう思っていたんですが、実際やってみるとめちゃくちゃラクで、ズボラな私にぴったりだったんです。

 私は25歳から6年間、東京都下(多摩地区)で隠居生活をしていました。その間の経済事情はといえば、週に2日だけ生活費のために働き、毎月の収入7~8万円内でやりくりする、という感じ。

 大したものを食べてないだろう、と思われるかもしれませんが、定番メニューは無農薬玄米に、旬の有機野菜の手作り浅漬け、そして自家製ノビルみそで作るおみおつけ。低所得のわりにはけっこういいものを食べていたと思います。

なぜ玄米菜食を始めたのか

 隠居生活前は東京23区内に住んでおり、生活していくのに精いっぱいで、何を食べるか、食べたものが自分にどういう影響を与えるか、注意して見る余裕もありませんでした。

 結果、菓子パンだけ、カップ麺だけ、コンビニ弁当だけ、というような偏った食事で済ませることも多くあった。あのときは毎日が不安で、焦っていて、そして不満でいっぱいでした。

 なぜ玄米菜食を食べるようになったかというと、隠居生活を始めたら、ものすごくヒマになったからです。

 ヒマになったので、体や心とのコミュニケーションをとる時間が増えました。何かを食べた後、精神状態や便通、体の重さなどにどんな変化があるか、よく気がつくようになった。

大原さんの「隠居生活」の様子を描いたイラスト(大原扁理さん制作)



 そこで、健康によいといわれるものをいろいろ食べて自分で確かめてみた結果、「私の場合は玄米菜食だとラクで、経済的にも無理がなく、しかも心身の調子がいいのだな」とわかったんです。

玄米菜食は富裕層の食事ではなかった

 無農薬の玄米菜食というと、健康や流行への意識が高くて、かつ経済的にも時間的にも余裕のある人たちの食事、というイメージがあるかもしれません。

 でも本来は、玄米菜食って昔の農民の食文化なんですよね。玄米は栄養価が高いので、それだけで効率よく栄養摂取ができ、腹持ちも良く、少量で満腹感があり、さっさと畑に行ってめいっぱい働ける。非常に合理的な食事なんです。

 対して貴族たちは「ぜいたく品」とされた白米を食べていましたが、脚気(かっけ。ビタミンB不足により起こる疾患)が多かったという記録も残されています。白米にすることでビタミン豊富な胚芽などを取り除いてしまうので、これは一理ある。

 現代は真逆で、多忙や貧困といった理由から、菓子パンやインスタント食品などで食事を済ませがちな若い世代に、脚気予備軍が多いといわれています。

なぜ低所得でもいいものを食べることができたのか

 私が低所得でも無農薬の玄米菜食を続けることができた理由は、毎日同じメニューを3食自炊していたから、だと思います。

 無農薬の玄米菜食って、レストランで食べると1食1800円くらい平気でするんですよね。農民の食事なのに(しつこい)。

 たしかに、外食が多い生活なら、ある程度収入がないとかないません。でも1800円あれば、お店で無農薬玄米が2kg買えるのだから、自分で作ればいい。お金がないなら自分を使う。低所得でも健康にいいものを食べたいと思ったら、これは鉄則です。

 毎日同じメニューと決めると、迷わないので余計なものを買わず、しかも買い物が早く済むため、お金や時間の無駄遣いが減っていく。おかげで、低所得者で自炊派の私でも無理なく続けることができました。

玄米菜食のいいところ

 ここで、私自身が体験してみてわかった、玄米菜食のいいところを紹介します。

●品数が少なくて済む
 前述しましたが、栄養価が高いので、おかずを何品も作る必要がありません。基本的に一汁一菜で、しかも2~3日分作り置きしておきます。こうすると、ぐっと時短に。手間ひまはかけない、心をこめない。毎日やらなきゃいけないのですから、長く続けるためにはそれくらいがちょうどよいです。

●洗い物がラク
 品数が少ないということは、自動的に洗い物の数も減ります。さらに玄米菜食だと油をあまり使わず、肉も入れないので、食器は軽くこするだけでOK。だから後片づけが一瞬で終わる。洗剤もほとんど使わないからスポンジも持ちがよく、経済的です。

大原さんの「隠居生活」の様子を描いたイラスト(大原扁理さん制作)



●心身が自然な状態へ戻る
 これはすごくゆっくりと表れる効果なので、今日明日玄米菜食を食べたくらいではわからないのですが、数年単位で続けていくと、私の場合は以下のようないいことがありました。

 花粉症が軽減する、皮膚ガンになる恐れがあると言われたイボが消える、爪水虫が治る、毎日快便、早寝早起きになってくる、酒やタバコが要らなくなる、欲望が減退する、精神的に安定する、などなど。

 といっても、医者ではないので因果関係はわかりません。だから玄米菜食の効果とは言い切れないのですが、食生活を玄米菜食にしてから私に起こった変化であることは確かです。

玄米菜食より大事なこと

 ただ、好みや生活スタイルは千差万別ですから、1種類の食生活が万人に合うとも思えません。だから私は玄米菜食を人にすすめることはありません。

 白米が好きなら副食でビタミンを摂ればいいし、アグレッシブな仕事の人には肉などの動物性食品は必要だと思っています。

 玄米菜食かどうかよりも大事なのは、何が合っているのか、実際に自分でやってみて選択すること。そしてその経験を地道に積み重ねることです。それはまったく関係ないように見えて、実は自分を信頼すること、自信の始まりだと思います。

 以前の私は食について、このプロセスをすっと飛ばしていました。それは自分を信頼するチャンスをすっ飛ばすことでもあった。

 現在は、テレビが「〇〇を食べるといい」と言っていても、「私の体のことは私のほうがよく知ってる」と泰然としていられる。これって、絶大な安心感があるんですよね。

 世間の言うことが二転三転しても、自分の選択を信頼できればラクに生きられる。食べるものを主体的に選ぶことからそれを学べたというのは、思わぬ収穫でした。

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