綾野剛×星野源ダブル主演で話題 金曜ドラマ『MIU404』人気をひも解くカギ「機動捜査隊」「バディ」とは何か

  • ライフ
綾野剛×星野源ダブル主演で話題 金曜ドラマ『MIU404』人気をひも解くカギ「機動捜査隊」「バディ」とは何か

\ この記事を書いた人 /

太田省一(社会学者、著述家)のプロフィール画像

太田省一(社会学者、著述家)

6月から始まり、早くも話題を呼んでいる『MIU404』。同作品に見る、刑事ドラマの「現在地」とはいったいどのようなものでしょうか。社会学者で著述家の太田省一さんが解説します。

知ればドラマをさらに楽しめる要素とは

 SNSでも毎回盛り上がりを見せているのが、この6月から始まった刑事ドラマ『MIU404』(TBSテレビ系)です。

『MIU404』のメインビジュアル(画像:TBSテレビ)



 綾野剛と星野源のダブル主演。脚本が野木亜紀子、演出が塚原あゆ子、さらに主題歌が米津玄師と、人気だった『アンナチュラル』(TBSテレビ系)のスタッフが再集結する点でも注目されていました。

 加えて第3話では、出演予告のなかった菅田将暉がいきなり登場し、サプライズとして話題になりました。

 このように、内容はもちろんのことキャストやスタッフが話題の本作ですが、この『MIU404』は刑事ドラマの歴史を知ったうえで見るとさらに面白さが増します。

主人公が所属「機動捜査隊」の役割とは

 まず、警視庁の機動捜査隊を舞台にしているのがポイントでしょう。

 一口に刑事ドラマといっても、設定はさまざま。刑事ドラマの古典『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)は、新宿にある七曲署、いわゆる所轄の捜査一係が物語の舞台でした。

刑事ドラマの金字塔『太陽にほえろ!』の石原裕次郎(画像:東宝、石原プロモーション、ファミリー劇場)

 また、警視庁刑事部の捜査一課が舞台となるのもよくあるパターンです。現在放送中のものですと、内藤剛志が主演の『警視庁・捜査一課長 2020』(テレビ朝日系)がそれに当たります。

 一方『MIU404』では、綾野剛が演じる伊吹藍と星野源が演じる志摩一未(しま かずみ)のふたりは警視庁の機動捜査隊に所属しています。

 第1話の冒頭でも警察の組織図を使って説明されていましたが、機動捜査隊とは初動捜査や広域捜査を主な任務とする部署です。24時間勤務で覆面パトロールなどに当たり、殺人や強盗のような捜査一課担当の事件を応援するのが主たる役割とされます。

機動捜査隊誕生の背景にあった高度経済成長

 その誕生の背景には、戦後の高度経済成長がありました。

 敗戦後の日本は、焼け野原からの復興を目指しました。そしてそれは、驚異的な高度経済成長によって果たされることになりました。1964(昭和39)年の東京オリンピックは、その象徴となる国家的イベントでもありました。

 高度経済成長は一方で、東京への一極集中を同時に促しました。経済成長と労働力不足のなかで、大学進学や集団就職など若者を中心とした地方からの人口流入が続いたからです。

高度経済成長期の日本のイメージ(画像:写真AC)



 その結果、個人主義的な価値観の強まりや人間関係の希薄化も目立つようになりました。さらに自動車も普及し、人びとの移動範囲も一気に広まりました。

 すると、犯罪捜査の際地道な聞き込みなど従来の手法ではカバーしきれなくなるところも出てきます。そこで警視庁に設置されたのが「機動捜査隊」でした。1963年のことです。

異端児的を主役に据えた巧みな構成

 実はそのときすでに、その名称をタイトルに使った刑事ドラマが放送されていました。1961年に始まった『特別機動捜査隊』(NETテレビ〈現・テレビ朝日)系)です。1977(昭和52)年まで続いた人気作でした。

1961年から1977年まで放送された刑事ドラマ『特別機動捜査隊』(画像:東映、テレビ朝日)

 そもそもこのドラマ自体が、機動捜査隊の前身にあたる「初動捜査班」をモデルにしたものです。そしてこの初動捜査班を組織として独立させた際、今度は当時の警視総監がこのドラマのファンであったため、「機動捜査隊」という名称になったと言われます。

『MIU404』は、そんな昔からある機動捜査隊ものの一作ということになるでしょう。ただそこには、いまのご時世を反映した要素も盛り込まれています。

 綾野剛と星野源が属しているのは、第4機動捜査隊。それまで三つの部隊から成っていた機動捜査隊のなかに試験的に増設された部隊です。その設置理由は、警察官の勤務状況を改善するため、警察のなかにも「働き方改革」が必要だというものです。

 この物語上の設定は、とても巧みです。そうすることで、異端児的な刑事を主人公にすることに違和感がなくなるからです。同じパターンは、『相棒』(テレビ朝日系)の「特命係」でおなじみでしょう。ふたり組の刑事が活躍する「バディもの」という点も共通します。

「バディもの」に共通するキャラの対照性

 そのバディものも、刑事ドラマのなかの歴史あるジャンルのひとつです。

 例えば、1970年代には『俺たちの勲章』(日本テレビ系)というドラマがありました。

2013年発売『俺たちの勲章』Blu-ray-BOX(画像:東宝、日本テレビ、バップ)



 主演は松田優作と中村雅俊。松田優作は『太陽にほえろ!』のジーパン刑事役で、中村雅俊は日本テレビの学園ドラマ『われら青春!』の教師役でちょうどブレークした頃で、両人の共演も話題になりました。

 その後も国広富之と松崎しげるによる『噂(うわさ)の刑事トミーとマツ』(TBSテレビ系、1979年放送開始)、舘ひろしと柴田恭兵による『あぶない刑事』(日本テレビ系、1986年放送開始)などをはじめとして、バディものはこれまで数多くつくられてきました。

 それぞれ作風は違いますが、共通するのは対照的なキャラクターの面白さです。

『MIU404』で言えば、志摩が冷静沈着型で、伊吹が猪突(ちょとつ)猛進型。志摩がいつもクールに状況判断をして警察官としての一線を踏み越えないのに対し、伊吹は自分の勘頼みで犯人の身の上にすぐに感情移入してしまいます。

単なる勧善懲悪に収まらない仕上がりに

 とはいえ、そのあたり単純な描き方にはなっていません。

 第4話では、犯人に銃を突き付けられた志摩がまったく死を恐れない態度を見せて、伊吹を驚かせます。

 そこにはただ無謀とも違う、志摩の抱えるこころのなかの影がうかがえました。

『MIU404』のロゴ(画像:TBSテレビ、青木被服)

 機動捜査隊という設定を生かしたスピード感あふれるエンターテインメントとふたりのバディ、同僚、さらに犯人や被害者が織りなす人間ドラマ。

 この両立を目指しているように見える『MIU404』は、単なる勧善懲悪に収まらない刑事ドラマの現在地を計るのに格好の作品といえるかもしれません。

関連記事