コロナ禍で「いいとこ取り」な生活をしたければ東京郊外に住みなさい

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コロナ禍で「いいとこ取り」な生活をしたければ東京郊外に住みなさい

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鳴海侑

まち探訪家

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5月25日の緊急事態宣言解除以降、働き方や働く場所に関する価値観が変化しています。テレワーク普及で今後、東京の街はどのようになるのでしょうか。まち探訪家の鳴海侑さんが解説します。

周辺環境や家賃が重要視される

 7月に入り2020年もまだ半分が終わったところですが、一番の話題は間違いなく新型コロナウイルスに関するものでしょう。

 東京都では4月8日(水)から5月25日(月)にかけて出された緊急事態宣言により、外出自粛となりました。家でのすごし方を工夫したり、オンライン飲み会をしたりしたという人も少なくないと思います。

 まちの姿を見ても飲食店や大型商業施設の営業自粛をはじめ、大きな変化がありました。

 また6月下旬から感染者数が増加し、7月に入ってから1日の新規感染者数百人以上という状況が続いています。今後も新型コロナウイルスの新規感染者数が落ち着かない時期が続くと想定され、いわゆる「三密」を避ける流れも続くことも想定されます。

 そんな中、筆者(鳴海侑。まち探訪家)は東京の“郊外”が新たに見直されるのではないかと考えています。

東京の郊外イメージ(画像:写真AC)



 東京の“郊外”は近年、住民の老年化と衰退が進むと言われていました。

 もともと郊外住宅地はマイホーム願望をかなえる人々が住宅を購入する中で発展してきた経緯があります。そのため、長年その土地に住む人が多く、住民の老年化が進んでいます。

 また、若いひとり暮らしの人を中心に「通勤時間の短さ」や「混雑しない通勤経路」を重要視する傾向が強く、郊外に新しい住民がやってこず、住民の入れ替わりが起きないまま衰退するという見方もされています。

 一方で郊外住宅地には、良質な住宅環境という「武器」があります。自然が近く、面積あたりの不動産価格も都心部に比べて抑えられています。

 さらに近年では買い物も1か所でおおむね買い回りができるショッピングセンターやショッピングモールが増えてきていますし、鉄道会社が駅周辺の商業開発を進めています。そのため、家を借りる・買うことだけを考えれば、都心よりも郊外の方がよいと考える人も少なくないでしょう。

 つまり通勤時間の重要性が下がれば、周辺環境や家賃が重要視されるということであり、通勤の負担が緩和されることで、郊外の住宅地が住む場所として選択肢に入る可能性がでてくるのです。

オフィスを縮小・分散の動きも

 そして、コロナ禍により通勤時間の事情はいま、大きく変わろうとしています。具体的にはテレワーク導入が一気に進みました。

 東京都が都内にある従業員が30人以上の企業に対して行ったテレワーク導入率の調査では、3月の24.0%から4月には62.7%に急上昇しました。特に従業員300人以上の企業では約8割がテレワークを導入しています。読者の皆さんの中にも春からテレワークが始まった人も少なくないのではないでしょうか。

 テレワークで働く時間が増えると、自宅で過ごす時間が増えます。そこで、自宅の居住環境に目を向け、家の中の環境をよくしようとした人も多く見られました。

 コロナ禍の長期化もあってテレワークで働く時間を増やす流れは今後も続くとみられ、これからは住宅の居住環境や周辺環境を重視する人が増えていくと思われます。すると郊外の住宅地にとっては新しい住民を増やすチャンスです。

テレワークのイメージ(画像:写真AC)



 さらに、コロナ禍とテレワークの推進によりオフィスの立地環境も変わり、より郊外の住宅地には追い風が吹く可能性もあります。

 コロナ禍前はIT企業を中心に、都心部の1か所に大きなオフィスを構えるという流れが強くありました。それがコロナ禍を機に、コロナ禍による事業リスクとしての災害リスク見直しや景気後退による固定費見直しが行われたことでオフィスを縮小、分散する動きがでてきています。

 確かにテレワークを前提として事業所を小さくすることで家賃負担は軽くなりますし、分散先も都心部ではなく、山手線周縁部であればより固定費削減が見込めるでしょう。

 すると通勤の回数も減るだけでなく、さらに都心部にいかなくなることで通勤の負担も減ります。それを機に居住環境のよい郊外への転居を指向する人が増えたとしても不思議ではありません。

「いいとこ取り」な生活スタイルが広がる

 ちなみに、テレワークが普及すると地方で仕事がしやすくなり、東京一極集中がなくなるという話もありますが、私はそこについては違うと思っています。

 なぜならば、お出掛け、イベントといったリアルな出会いの価値はむしろ高く感じられるようになり、後背人口(東京と結びつきの強い人口)があるからこそ成立する多様なイベントやコミュニティーが多い都心部の魅力はむしろ上がるからです。

 ただ、リアルな出会いが生まれる場として都心部を求めるならば行く頻度は人それぞれのはずです。どれだけ都心部の雰囲気を享受したいかというのは人によって違います。

 だからこそ、筆者は都心部に出やすく居住環境のよい郊外を中心に暮らし、出勤やイベントで都心部に時折出るという、ある意味で「いいとこ取り」な生活スタイルが広がると考えています。

都心のイメージ(画像:写真AC)



 コロナ禍の中ではどうしても生活や経済への悪影響を考えがちですが、社会的にさまざまなことが模索され、人々の行動や判断の基準が変化することは悪いことばかりではありません。

 東京郊外への居住の流れができれば、郊外住宅地の新陳代謝が進み、流動性が高い場所になり、郊外発の新しい取り組みがどんどん生まれる可能性があります。

 それは、東京での暮らし方の新たな選択肢を増やし、新たな魅力を生み出すことにもなります。だからこそ今後は、東京郊外の動きにもぜひ注目してみてください。

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