【受験生の夏2020】プレゼン能力がもはや必須スキルに? 「AO・推薦入試」のオンライン化でいったい何が変わるのか

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【受験生の夏2020】プレゼン能力がもはや必須スキルに? 「AO・推薦入試」のオンライン化でいったい何が変わるのか

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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新型コロナ禍により、従来のAO入試や推薦入試のあり方が変化しています。今後は一体どうなるのでしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

一般入試以外で入学を決める学生が増加

 近年の大学入試は一般入試だけでなく、AO入試や推薦入試といった試験制度が浸透してきています。

 こうした入試制度を利用した入学者が増加しているのは、文部科学省のデータからも明らかです。

AO入試のイメージ(画像:写真AC)



 文部科学省の「平成31年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」によると、2019年度入学者試験では国立大学が16.3%、公立大学では27.9%、そして私立大学では半数以上となる54.2%の学生がAO入試や推薦入試によって入学しているのです。

 実は2020年度の入試から、これまでのAO入試や総合型入試、推薦入試の名称が「学校推薦型入試」へ変更となりました。

 都内私立大学の定員厳格化や新しく始まる大学入試共通テストを回避するため、一般入試を避けて、早々に合格が決まる総合型入試や、学校型推薦入試を利用する受験生が増えるのは自然な流れです。

 しかし大学入試改革を進めてきた中で新型コロナ禍となり、事態は急変しています。

先行き不透明な受験に不安を覚える学生たち

 2021年1月にセンター試験に代わる新しい共通テストが実施されるものの、新型コロナ禍によって大学受験を巡る動きは例年以上に先が読めません。

 また全国高校総合体育大会(インターハイ)や高校野球の夏の大会といったスポーツ系だけではなく、合唱コンクールも中止になっています。

 一般入試より先に行われる総合型入試などでは、こうした大会の結果が出始める8月以降から願書を提出するのがこれまで一般的でした。

学校選びのイメージ(画像:写真AC)



 しかし、一般入試組に比べてあまりにも早く進学が決定することで生じる学力差が問題視され、9月以降のスタートが決定していました。

 しかし新型コロナ禍に突入。文部科学省は総合型の願書受付は9月15日以降とするよう各大学に通知しました。

定員を巡って激烈な争いに

 新型コロナ禍の影響で続々と大会が中止し、願書提出日が繰り下げになったことは、総合型入試で大学入学を狙う受験生にとって厳しい現実となります。

 日本体育大学(世田谷区深沢)では、トップアスリート型総合型選抜のうち、スポーツマネージメント学部の入試条件に設けている「競技実績8位以内」を16位以内に変更しました。

推薦入試のイメージ(画像:写真AC)

 中央大学(八王子市東中野)でもスポーツ推薦入学試験の出願資格に関わる条件をインターハイ出場などの実績ではなく、「中止となった全国大会に出場権を獲得した戦績・記録」に設定しています。

 つまり、スポーツ系の総合型入試を狙う受験生にとって高校1~2年で好成績を挙げている生徒以外は、募集定員を巡って激烈な争いになることを意味しているのです。

 条件を緩めることで該当する学生は増え、出願の敷居が低くなります。例年以上に学校の成績や課題のリポートや小論文の仕上がりが重要視されるなど、実績以外でもアピールすることが重要となってきます。

書く力やプレゼンテーション能力が重視される

 文部科学省は5月14日(木)、全国の国公私立大学に対して総合型入試や学校推薦型入試へ臨機応変に対応するよう求める文書を通達しました。

 ICT(情報通信技術)を活用し、オンライン上での面接やプレゼンテーション、小論文、大学講義の参加や入学後の学習計画の提出などを実施し、多様な選抜方法を行うよう伝えました。

 入試日まで時間があまりないなか、人気のある大学でこれらの入試制度を利用して受験する学生にとっては、書く力や話す力を鍛えるしかありません。

合格発表のイメージ(画像:写真AC)



 一般的に、指定校推薦も含まれる学校推薦型入試は倍率が低く合格しやすい傾向がありますが、オンラインで行われる入試は前代未聞です。

 学校側もデータがなく対策は難しくなります。また完全に在宅で行う場合は、周囲にライバルとなる他の学生もいない中、ひとりで受けなければなりません。

 受験生も不安になり、十分にアピールできないまま終わってしまう可能性もあります。

 合否の結果は総合型入試は11月以降、学校推薦型入試は12月以降です。万が一不合格だった場合は、年明けの一般入試に備える必要があります。2020年度の大学入試は例年以上に情報収集を行い、対策を練らなければいけません。

総合力が問われる入試へと変貌するか

 私立大学は学校型推薦での入学者の割合が高く、2019年度入学者選抜試験は48.4%という結果でした。早く入学者を囲い込みたい大学側と合格手形を欲しい受験生の思惑が一致している証しです。

大学受験に成功した受験生のイメージ(画像:写真AC)



 一般入試組とAOや推薦入試組の学力差を是正する目的で2020年度の受験生から多角的に学力を確かめる方式が実施される予定でしたが、新型コロナ禍により一気に前進する形となりました。

 しかし部活動や学校の定期テストだけを頑張るだけでなく、自分の学力を全体的に向上させなければ第1志望校合格を手繰り寄せることが難しくなったのです。

 新型コロナウイルスと大学入試の刷新が重なってしまい受験生やその保護者にとっては先が読めない苦しい年ですが、どんな入試でも自分の力を発揮でき、ベストな結果が出ることを願っています。

●参考
・文部科学省の「平成31年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」
・日本体育大学 「2021年度入学者選抜の主な変更点」
・中央大学 「新型コロナウイルス感染症に関する本学入学試験の対応について」

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