リモートワーク時代到来で「東京の価値」は下がらず、むしろ上がるワケ

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リモートワーク時代到来で「東京の価値」は下がらず、むしろ上がるワケ

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倉本圭造

経営コンサルタント・経済思想家

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コロナ禍を通して世の中のさまざまな価値観が大きく変わり始めている現在、東京の価値や存在感は今後どのようになっていくのでしょうか。『みんなで豊かになる』などの著作がある、経営コンサルタントで経済思想家の倉本圭造さんが解説します。

大都市の価値はアフターコロナで上がるのか

 日本ではコロナ禍は収束に向かい、徐々に日常が取り戻されていることに安堵(あんど)の気持ちを持つ人も多いでしょう。

 今回の記事では、以前に比べてリモートワーク的なものが普及し、「必ずしも一か所に人が集まらなくてもいいコロナ後の時代」には、東京のような大都市の価値は上がるのか、それとも下がるのか? という話を考えてみたいと思います。

東京の風景(画像:写真AC)



 結論から言うと、

・東京のような大都市が持つ価値は変わらない。むしろ上がる。
・ただし、「コロナ以前」とは違う価値が求められる。

ということになります。それでは、ひとつずつ説明していきましょう。

決してなくならない「集まることの価値」

 私(倉本圭造)は経営コンサルタント業のかたわら、いろいろな個人たちと「文通」を通じて人生相談をする仕事も行っています。そこでのリモートワークに対するその人たちの反応は、本当にさまざまでした。

「めちゃくちゃうれしい。もう一生リモートでいい」という人もいれば、最初の数日から「さみしいです。なんかメンタルが変で元気がなくなりました」という人もいました。

 読者のあなたはリモートワークが大好きなタイプの人ですか? それとも、ずっと家にひとりでいるのは耐えられないと思うタイプでしょうか。

リモートワークのイメージ(画像:写真AC)



「コロナ後の日常」が戻ってくるにつれて、一部の日本の会社はリモートワークを強引に取りやめてしまったため、その事に対する呪詛(じゅそ)の声をSNSでよく見るようになりました。

リモートと非リモートの使い分けが大切

 ただ、私のクライアントである「経営者側」の人は、リモートの有効性を理解しつつ、例えば「単純作業はいいけど、社員の指導とかチームで売り上げを取りに行く勢いとかを維持できるかが不安なので、完全なリモートにはしないと思う」と考える人も少なくありません。

「アタマの固い日本企業はこれだからダメなんだよ」と思うかもしれませんが、“あの”グーグル本社ですら「完全リモート」に現時点で否定的ということを考えると、「作業だけに没頭したい個人主義者」タイプの人には認めたくない合理性が、やはり「オフィスに集まること」にはあると言えるでしょう。

実際の会議イメージ(画像:写真AC)

 なにより実は「経営者側」の視点からすれば、「東京郊外からリモートでできる仕事」は「大卒初任給が数万円ぐらいの新興国」にまるごと投げてしまってもいいんじゃないか……という話もチラホラ出てきています。

 ということもあり、「働かないオッサンどもめ」と苦々しく思っているあなたの仕事まで完全リモートの世界では失われてしまうかも?……と考えると、やはりある程度「集まることの価値」を認めあって生きていく意味はあるはずです。

 大事なのはオフィスに集まることの価値がある場合はオフィスでやりつつ、リモートの方がいい仕事で無理に集まったりしない……そういう「使い分け」ができることですよね。

「多様な選択肢」が生まれる

 今後、いろいろな働き方を選んでいく中で、リモートが可能な職場かどうかは大事な分水嶺(れい)になるでしょう。

 どちらかがいいというわけではありませんが、リモートが大好きなタイプの人が出社必須の会社で働いたり、リモートが嫌いなタイプの人がオフィス無しの会社で働いたりすることはお互いが不幸なのでやめましょう、という風に考えられるといいですね。

 要するに、一概に「全部リモート」とか「全部対面で」とかにならず、「多様性」が大事になってくるというか、「それぞれに良い形」を選べるようになることが理想で、そういう風になっていけるはずということですね。

選択を行うイメージ(画像:写真AC)



「選択肢」が増えるわけですから、単純に言ってしまうと「東京でなくては」という価値は減る部分もあるでしょう。都心のオフィス需要や、職住近接的な都心部の狭いマンション需要の少なくとも一部が、郊外や地方の暮らしやすい地域に振り分けられることは実際に起きるはずです。

 その中で、東京のような大都市は「自分たちの新しい価値」に目覚める必要があるのです。

地方都市より“ムラ”っぽい東京

 私のクライアントの、ある地方都市の結構大きな会社の経営者が、「東京に住んでいると自分と同じタイプの人としか付き合わなくなる。結果として世界が非常に狭くなってしまう」と言っていました。

 東海地方などでは、ここ10年ぐらいにやっとコンビニができて便利になったねえ……みたいな田舎の駅に日本最大の会社(トヨタ自動車)の本社があったりして、そこから直接世界を相手に商売をしています。

 その近辺には普通に良い大学を出て、普通に英語が話せて、普通にすごい技術力があるエンジニアで……という人たちが住んでいますが、彼らだけで固まっても人数が少ないので、「その土地の普通の人」と普通に一緒になって、「階層」を超えた共同体を作っていることが多いです。

トヨタ自動車の本社がある愛知県豊田市トヨタ町1番地の場所(画像:(C)Google)



 東京だと、「良い大学を出て、良い会社に勤めて、普通に英語ができたり、エンジニアだったりする」人は、同じ「階層」の人とだけ付き合うようになってしまいがちですよね。

 結果として、「お隣さんとのほんの小さな違いが気になる」みたいなことになってしまいがちだし、いつも東京の「内輪の話」ばかりで盛り上がっていて、世界から見ても、そして東京以外に住む日本人からみても、「閉鎖的なムラ」感がある……という指摘は、東京に住むあなたもうなずける部分はあるのではないでしょうか。

非東京人も受け止める「開かれた東京」とは

 東京にはいろいろな人の思いをすべて受け止めて、文脈をつないで居場所を作ってくれる懐の深さがあります。

 だから、地方の田舎に居場所がなかった人たちを吸い込んで、彼らに居場所を与えてくれる。読者のあなたも、そうやって地方から出てきた人かもしれません。

 しかし、結果として「狭い東京」の内側にいる人たちだけにしか居場所が与えられないような文化は、その外側から見ると非常に閉鎖的ですし、「それはそれでムラっぽい」感じになってしまいます。

東京の風景(画像:写真AC)



 これからのリモートワークも、今後、東京に住んでいない人が「東京の内側にいる人」になれる時代です。

 5人で行う会議のうち、ひとりは東京のソトから普通にリモート参加している……というような多様性に私たちは慣れていくでしょう。東京のテレビ番組すら、東京以外の、場合によっては、地球の裏側から参加している出演者が出ている時代ですからね。

 閉じた「ムラっぽい東京」の価値は減っていきますが、東京に住んでいない人も「東京の内側にいる人」として受け止める新しい東京の価値は、これからも増していくはずです。

互いの価値観を飲み込み、ともに進化しよう

 コロナ後の米中冷戦の時代、「敵と味方」を分けて徹底的に攻撃しあうような風潮が世界中にあふれています。

 しかし世界一の大都市・東京はこれまでも、いろいろな価値観をそのまま受け入れ、居場所を与えつつ、バラバラに放っておくという「カオス」が魅力でした。

東京の風景(画像:写真AC)

 コロナ後の世界ではそれをもっと開いて、東京に住んでいない人も含めた、あらゆる人の価値観を飲み込み進化する東京の価値が、「敵と味方」を分けてバラバラに攻撃しあう世界の中で、新しいスタイルを見いだしていく可能性があると感じています。

 あなたが東京に住んでいる人でも、東京に住んでいない人でも、コロナ後の変化の中で「あたらしく開かれた東京」が持つ価値を、一緒に模索していけるといいですね。

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