上陸難易度はトップレベル、日本初の原生自然環境保全地域「南硫黄島」をご存じですか【連載】東京無人島めぐり(3)
2020年6月14日
知る!TOKYO東京都内に330もある島――その中でも無人島の歴史についてお届けする本連載。3回目となる今回の島は「南硫黄島」。案内人は、ライター・エディターの大石始さんです。
研究者も上陸が許されない島
都心からはるか南方に位置する小笠原諸島――。
経済の中心地である父島までは竹芝埠頭(ふとう。港区海岸)からフェリーに乗って24時間ほどかかりますが、父島からさらに南へ300km先の海域には北硫黄島、硫黄島、南硫黄島の三つの島が浮かんでいます。
そのうち明治から昭和初期までふたつの集落が存在した北硫黄島、太平洋戦争時には激戦地ともなった硫黄島には人が定住した過去がありますが、南硫黄島は後述する例外を除き、これまで人間の定住を拒んできました。

島全体の平均斜度は45度。平地がほとんどない険しい地形に加え、島全体が天然記念物(天然保護区域)に指定されており、研究者ですら上陸が許されていません。上陸難易度は日本の離島のなかでもまさにトップレベル。それが南硫黄島という島なのです。
いくつもの気候帯が島に共存
硫黄列島が東京府小笠原島庁管轄となり、それぞれの島名が定められたのは1891年(明治24)年のことでした。以降、数度の調査が行われますが、終戦後、南硫黄島は小笠原諸島のほかの島々とともに連合国軍占領下に置かれました。
1968(昭和43)年に日本に返還されると、1972年には天然保護区域に、さらに1975年には南硫黄島全域が日本初の原生自然環境保全地域に指定されました。

南硫黄島は他の島々から遠く離れているうえに、人間の手がほとんど加えられていないことから、特別な自然環境が残されてきました。
大変貴重な固有種が生息していることに加え、低地は熱帯・亜熱帯、中間は雲霧帯、頂上付近は温帯といういくつもの気候帯がひとつの島のなかに共存しているため、その生態系は多様で複雑。
厳しい自然環境に適応するため、虫や鳥類のなかには進化の途中にあるものも生息しているとされます。世界的に見ても大変貴重な自然環境が守られてきた島なのです。

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