郊外でおなじみ 「IKEA」が都心・原宿に初出店 戦略転換の背景とは

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郊外でおなじみ 「IKEA」が都心・原宿に初出店 戦略転換の背景とは

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これまで郊外型の出店を柱に据えてきた大型家具量販店IKEA(イケア)が2020年6月8日、初となる「都心型」店舗をJR原宿駅前に開業させます。そこにはどんな狙いがあるのでしょうか。

大型店舗・大型家具の転換期

 スウェーデン発祥の世界的家具量販店IKEA(イケア)といえば、これまで郊外を中心とした出店形態をメインとしてきました。

「郊外型」店舗を展開してきたイケアが、原宿駅前に「都心型」店舗を初出店。その狙いとは?(画像:イケア・ジャパン)



 2020年月6月5日(金)現在、既存店は国内に10店舗。

 主なターゲットは郊外に暮らすファミリー層です。2万平方メートルを優に超える売り場面積と、組み立て式を中心に大型家具が並ぶ広々とした店内、さらに併設の巨大駐車場は、「自家用車で来店して、購入した商品を車に乗せて持って帰る」を基本スタイルに据えるイケア・ジャパン(千葉県船橋市)の経営戦略を体現していました。

 そのイケアが6月8日(月)、JR原宿駅から徒歩1分の複合施設WITH HARAJUKU(渋谷区神宮前)内に「初の都心型」店舗をオープンさせます。もともと4月25日(土)を予定していましたが、新型コロナウイルスの影響により1か月半遅れ、満を持しての開業を迎えます。

 東京都内での出店は、法人向け店舗の渋谷店(渋谷区道玄坂)、1500台分の駐車場を備える立川店(立川市緑町)に次いで3か所め。

 同社にとって「初の東京都心型店舗」をうたう、鳴り物入りでの開業です。

 従来の郊外型店とは、どのような点が異なるのでしょうか。

ワンルームにも合うサイズ感

 まずは面積。総面積2000平方メートルは既存店のおよそ10分の1程度で、大型の倉庫や駐車場スペースはありません。

2020年6月8日に開業するイケア原宿の外観(画像:イケア・ジャパン)



 取扱商品9500点のうち家具類は約1000点。限られた生活費で都心のコンパクトなワンルームマンションに住まう単身者などを意識し、シングルサイズのベッドや1~2人掛けのダイニングテーブル、省スペースの収納家具などを豊富にラインアップ。

「ひとり暮らしの部屋」「低価格でつくる部屋」といったコンセプトのもと、6畳程度の広さでも実現可能な家具の配置レイアウトやスペースの有効活用を提案しています。

郊外型の頭打ち、都心進出へ

 既存店に無い特徴を備えた今回の原宿店開業には、先述の通り郊外型を展開してきた同社の大胆な「戦略転換」が垣間見えます。

 少子高齢化などを背景に、複数の子ども部屋やゆったりとしたリビング・ダイニングに置く大型家具の需要は、郊外においても現状必ずしも右肩上がりではありません。また、イケア来店への前提条件ともいえる「各家庭に自家用車1台」というライフモデルは近年、決して当たり前のものではなくなっていきました。

低価格のコーディネートを提案するイケア原宿店の売り場(画像:イケア・ジャパン)

 2020年1月に発表した同社の決算公告(2019年8月締め)は、売上高844億7600万円と前期並みを維持したものの、純利益はマイナス8億8500万円。前期比では大幅な改善が見られた一方、依然として赤字の状態が続いています。

 安価路線の大手家具量販店として、しばしば比較対象に挙げられるニトリ(札幌市)は、新宿タカシマヤタイムズスクエア(渋谷区千駄ヶ谷)やマロニエゲート銀座(中央区銀座)、東武池袋(豊島区西池袋)など、かねて都心にも展開してきました。

 ベーシックなデザインの商品が安く、ある種“無難な”選択肢として中高年世代にも選ばれるニトリに対し、北欧・スウェーデンらしい色鮮やかなファブリックや小物雑貨、凝ったデザインの家具も人気のイケアが都心進出で狙うのは、まさに「車を持たない、単身世帯のおしゃれな若者」といった顧客層です。

カフェ・コンビニ需要も発掘

 新天地地での新たな顧客開拓の戦略は、家具商品以外にも。

 原宿店は1階にコーヒーやアイスなどを販売するコンビニ、2階にはファストフードを食べられるコーナーも設けていて、カフェ代わりとして立ち寄る客も呼び込みたい考えです。

 また、同社の理念である「サスティナブル(持続可能性)」を体現するキーアイテムとして、クリスマスシーズンに販売したもみの木をチップ化し店内の植木鉢に再利用。都市部の若者も関心を寄せる環境への配慮をアピールしています。

若者の街・原宿のJR駅前にオープン(画像:イケア・ジャパン)



 同社はこのような都心型店舗の展開を東京などでさらに検討していくとのこと。原宿店は、今後を占う重要な試金石となりそうです。

「イケアという名前は耳にしたことがあるけど、実際に行ったことはなかった」――。そんな単身・都会暮らしの若者の心を、原宿店はつかむことができるのでしょうか。

 オープンは8日(月)の11時。新型コロナ対策として、当面は混雑緩和のため入場制限を行い、店内でのソーシャルディスタンスを呼び掛けるなど感染予防に努めるそうです。

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