レジ皆無。お菓子を手に取ると自動でお会計! 秋葉原の新体験カフェに行ってみた

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レジ皆無。お菓子を手に取ると自動でお会計! 秋葉原の新体験カフェに行ってみた

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完全キャッシュレスの「Developers.IO CAFE」が秋葉原にオープンしました。「来店前オーダー」や「ウォークスルー体験」が可能というのですが、それって一体どのような体感なのでしょうか。試してみました。

「やってみた系技術ブログ」の会社による「やってみた系店舗運営」

 現金主義がまだまだ根強い日本ですが、キャッシュレスの波は着実に押し寄せています。そんななか、秋葉原に完全キャッシュレスのカフェ「Developers.IO CAFE」がオープンしました。現金の取り扱いは一切なし。専用のスマホアプリによる、注文や支払いが可能といいます。

「Developers.IO CAFE」の入り口。この門の奥にカフェがある(2019年2月、高橋亜矢子撮影)



 特筆すべきは、同カフェを運営するのが、飲食系企業ではなく、クラウドサービスのサポートなどを行う企業、クラスメソッド(千代田区神田佐久間町)であること。「完全キャッシュレス」や「ウォークスルー」の仕組みは、同社自らが構築しています。

 多数のエンジニアが在籍する同社では、各々の社員が、実体験をもとにさまざまな技術ノウハウを発信する「Developers.IO」という「やってみた系技術ブログ」の更新も活発です。

 毎日数回更新されるブログの記事総数はなんと約1万5000件(2019年2月現在)。プログラミングに関わる内容が主ですが、それ以外にも「リモートワークを実践してみた」「韓国でモバイルオーダー&ペイを体験してみた」など、個々の実践の記録が多彩につづられています。

 そんなブログと同じく「Developers.IO」の名前を冠した同カフェ。ブログのマインドを引き継いだ「やってみた系店舗運営」なのだといいます。一体どのような仕組みなのでしょうか。

カフェの見た目は通常とあまり変わらず。店員さんも常駐

 秋葉原の駅を出て徒歩約3分。神田川にかかる和泉橋を渡った先にお店はありました。ぱっと見の雰囲気は、ごく一般的なカフェ。店員さんも常駐しています。

一見、ごく一般的なカフェ(2019年2月、高橋亜矢子撮影)
入り口には、キャッシュレスである旨の注意書きが置かれている(2019年2月、高橋亜矢子撮影)

 でも、レジがない。ないんです。「キャッシュレスなのだから当たり前」と言われるかもしれませんが、レジがある風景にすっかり馴染んでしまっているためか、「普段、ふつうにあるものがないのって不思議だなぁ……」と静かに感じ入ってしまいます。

 そんな同カフェでの注文方法は次のとおり。総じて難しくはありませんでした。

まず、専用アプリをダウンロード。会員情報を登録。

 まずは、専用アプリ(iOS 11.0以上、Android 5.0以上に対応)をダウンロードし、会員登録を行います。その際に、クレジットカードの情報も登録しておきます。

専用アプリをダウンロード(2019年2月、高橋亜矢子撮影)

 お店に行く前に登録を済ましておくと、その後の注文がスムーズでした。

カフェに行き、注文をする。

 次に、アプリの「Menu」画面から注文を行います。メニューは、コーヒー(ICE/HOT)やカフェラテ(ICE/HOT)、カフェモカ(ICE/HOT)、キャラメルラテ(ICE/HOT)、ヘーゼルナッツラテ(ICE/HOT)のほか、紅茶(ICE/HOT)、オレンジ、りんごジュースなどから選べます。

「Menu」のページ。お店が閉店している時間は、このページもcloseになるという(2019年2月、高橋亜矢子撮影)

 ここで大切なのは「注文ボタンを押すタイミング」。

 お店に到着してから注文ボタンを押すと、少々店内で待つことになります。待たずに商品を受け取りたい場合には、お店に入店するちょっと前にボタンを押すのがポイント。

 社内では「和泉橋を渡る手前あたりで注文ボタンを押すと、丁度お店に着くころに注文が受け取れる」という話が出ているそうです。

 オーダーの入り具合によって、そのタイミングは若干前後するようですが、行く際にはぜひ参考にしてみてください。

レジ操作が無くなったことで生まれる時間の余裕、何に使っている?

 さて。勝手が全くわかっていないため、ボタンを押さぬまま店に到着した筆者は、店内で注文ボタンを押しました。すると、スマホ画面の上部にオレンジ色の画面が出現。その中央には「50」と番号が書かれていました。これが自分の注文番号になるとのこと。

店内の液晶にも、注文の状況が表示される(2019年2月、高橋亜矢子撮影)



 注文した商品が出来上がるとまず、スマホにプッシュ通知が届きます。

通知がきたところ。このあと、画面のオレンジ色の部分が青色に変わった(2019年2月、高橋亜矢子撮影)

「50番のお客様、お待たせいたしました!」

 店員さんからも直接、番号で呼ばれます。手渡されたカップには、「Thank you」の言葉とともに愛らしいハチの絵が描かれていました。

思わず肩の力がすうっと抜ける可愛らしさ(2019年2月、高橋亜矢子撮影)

 なんて粋なサービスなんだ!とニコニコしていたところ、このイラストとキャッシュレスにも関連性があることが判明しました。

「レジが無くなり、時間に余裕が出来たので、このようなことも出来るようになりました。今、スタッフみんなで絵の練習をしています。絵の出来栄えに個人差はあるかもしれないのですが……」

 そう話してくれたのは、この日勤務していたスタッフの方。ホットドリンクはスリーブに、アイスドリンクは、コップに直に描いており、2019年2月時点では基本、時間の許すかぎり描く方針なのだといいます。

 なるほど。ホスピタリティを感じます。機械に出来ることを機械に任せると、人間は人間にしか出来ないことをより精度高く行うことが可能になるのかもしれません。

手に持って立ち去るだけ! 無性にドキドキする「ウォークスルー」

 同カフェのキャッシュレス決済の仕組みはもうひとつあります。おおまかにいうと、店内に置かれているお菓子が、手に取るだけで、自動的に購入が出来てしまうのです。

お菓子は主に海外産のもの(2019年2月、高橋亜矢子撮影)



一番人気は、写真の「ウォーカー ショートブレッドフィンガー」とのこと。取材の日は品切れていたが、ミニサイズのポテトチップスも人気という(2019年2月、高橋亜矢子撮影)

 お菓子を持って、そのまま立ち去る。すっかりレジ生活に慣れ親しんでいるためか、「え、ほんとにこれで良いの?」と無性にドキドキします。もちろん、支払いはちゃんと行われているのですが。

 唯一、決済のためにやるスマホ動作は、入り口付近にあるタブレットに「自分のQRコード(アプリ内に有)」をかざすこと。かざして認証されたのち、お菓子コーナーへと向かう流れになっています。

お菓子コーナーの入り口にカウンターがあり、その手前にタブレットが固定されている(2019年2月、高橋亜矢子撮影)
自分のQR コードをタブレットにかざす(2019年2月、高橋亜矢子撮影)

 お菓子コーナーに設置された人工知能(AI)はまず、お菓子を取る前と後、その重量の違いで変化を察知。さらに天井に設置されたセンサーが、お菓子を取る人の手の動きを察知するのだとか。

天井のセンサー(2019年2月、高橋亜矢子撮影)

 主にこの2つの軸によって、AIが「さっきQRコードをかざした人が、お菓子を持っていったぞ」と認識。決済を行うといいます。

自席に戻ってアプリを確認したところ、持ってきたお菓子の情報が、注文履歴にしっかりと刻まれていた(2019年2月、高橋亜矢子撮影)

窓の外には神田川の流れ。作業スペースとしてもおすすめ

 ところでそもそも、この新体験カフェを作ろうと思い立った最初のきっかけは何だったのでしょうか。クラスメソッドのマーケティングを担当する嵩原さんに聞いたところ、シアトルの「Amazon Go」を、同社の代表と社員数人で見学し、感動したことが始まりだったと教えてくれました。

「Amazon Go」とは、おおまかに説明すると、通販サイト「Amazon」が運営する食料品のリアル店舗。レジに並ぶことなく、手に取った商品を外に持ち出すだけで自動決済が出来る仕組みになっています。

 実際に体験し、感激した同社のメンバーは、自分たちでもやってみたいと思案。2018年の5月ごろにプロジェクトをスタートさせ、夏には仮設店舗をつくり実証実験をしました。その後も検証を重ねるうちに、実際にお店を出してみたいという話が浮上。偶然にも、会社近くに空き物件が発生したため、そのレイアウトや、店員をほぼ引き継ぐかたちで、2019年2月、「Developers.IO CAFE」をオープンさせました。

席数はぜんぶで27席。うち、9席が窓際のカウンター席(2019年2月、高橋亜矢子撮影)



 現在は、お店を稼働させながら、少しずつ改良をすすめているとのこと。特にウォークスルーの仕組みの精度はもっと高められると考えており、ブラッシュアップを進めているそうです。

 アプリについても、アプリを開発しているエンジニアが店に訪れた際、スタッフらの声を聞き、その場で書き換えてみるなどして、改良を行なっているのだとか。フットワーク、かなり軽いです。

 ちなみに。技術面の話ばかりが続きましたが、キャッシュレス抜きにしても同店は、穴場的な魅力を持っていました。店内には、ゆるやかな音楽が流れ、窓の外には神田川が流れ、時折船が行き交う姿も臨めます。電脳街 秋葉原に、こんなに穏やかに時が流れる場所があったなんて。

 Wi-fiやコンセントも完備されているので、特に会社外で業務が可能な人にはぜひ、作業環境としてもおすすめしたいです。

神田川の眺め。右奥に見える青い橋は「和泉橋」(2019年2月、高橋亜矢子撮影)

 なお「Developers.IO CAFE」は、期間限定ではなく、長期的に続けていく予定とのこと。まずはここで検証を繰り返し、今後、この技術をどのように膨らませていくのかを検討するそうです。

●Developers.IO CAFE
場所:東京都千代田区神田須田町2-25 GYB秋葉原1階
アクセス:日比谷線「秋葉原駅」から徒歩3分、JR「秋葉原駅」昭和通り改札から徒歩4分、都営地下鉄新宿線「岩本町駅」から徒歩3分
営業時間:平日10:00〜18:00
定休日:土日祝日

※掲載情報は2019年2月時点での情報です。

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