都心に一番近い「ダム」は原宿駅だった? 地形から見る魅惑の東京風景
2020年4月6日
知る!TOKYO雨水をためたり洪水を防いだりして、私たちの暮らしを支える「ダム」。そんなダムの中でも「都心に最も近いダム」について、フリーライターで写真家の大山顕さんが解説します。
ダム =「水をなくす」ではない
新型コロナウイルス対策として専門家会議が提言した、「ピークカット戦略(集団免疫戦略)」のグラフを見て「おっ!」と思いました。その図が「洪水調整」の説明のものに似ていたからです。
洪水調整とは、治水ダムや多目的ダムが行うことのひとつです。簡単に言うと豪雨などの際、水をダムにためること。一時的にダムの下流の河川に流れる水量を減らして、水による被害を防止・軽減するわけです。
ここで重要なのは、ダムは決して「水をなくす」わけではないということ。いつかたまった分の水を放流しなければなりません。人間は水を「なかったこと」にはできないわけですから。洪水調整とは水位上昇をなだらかにしたり、最大流量を抑制したりすることが目的です。
つまり、ダムは時間を稼いでいるのです。新型コロナウイルス対策の「ピークカット戦略」もまさに同じなのだな、と知って興味深く思ったのです。
土木 = 時間を止めようとする装置
僕(大山顕。フリーライター、写真家)は土木構造物を専門に写真を撮り、文章を書く仕事をしています。これまでさまざまな土木インフラの専門家や設計・施工をする人たちにお話を聞いてわかったことがひとつあります。
それは、土木とはいわば「時間を止めようとする装置」ということです。
雨が降り、水が流れ、波が寄せては返し、日が照り、風が吹く。時には地震も起きる。それらは環境を大きく変えてしまいます。自然の作用とは「遷移」です。
例えば河川は放っておくと、流れるルートを変えてしまいます。しかし、それでは人の生活、特に都市は成り立ちません。そのために護岸が設置されるわけです。人間が安心して暮らせるには「変わらないこと」が重要なのです。
アスファルト舗装は地面を変化させないために敷かれています。土木構造物の多くは、このように「変わらないこと」を目的に作られています。時間とともに変わってしまうものを、なんとか必至に食い止める――詩的な言い方をするのなら、それは「時間を止めようとする装置」ということです。

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