東京ゲームショウで垣間見えた、伝わりにくい「eスポーツ」の娯楽性

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東京ゲームショウで垣間見えた、伝わりにくい「eスポーツ」の娯楽性

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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先日開催された「東京ゲームショウ2019」のレポートとコアコンテンツのeスポーツの今後について、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

テーマは「もっとつながる。もっとたのしい。」

 去る2019年9月12日(木)から15日(日)までの4日間、国内最大級のゲーム見本市「東京ゲームショウ2019」(以下、TGS2019)が幕張メッセ(千葉県千葉市)において開催されました。TGSはアメリカの「E3」、ドイツの「Gamescom」と並び「世界3大ゲームショウ」として世界中からも注目される一大イベントです。

eスポーツステージの様子(画像:コンピュータエンターテインメント協会)



 2019年のテーマは「もっとつながる。もっとたのしい。」。会場に来られないゲームファンに向けてイベントステージのライブ配信を行ったり、会場内の見どころをコンパクトにまとめたニュースクリップを配信したり、英語・中国語による配信や英語字幕をつけるなど、新たな試みを展開しました。

 今回の来場者数は、4日間で合計26万2076人。過去最大だった前回の29万8690人と比較すると約12%の減少となりましたが、その内訳を見るとファミリー層の来場者数は増加しています。TGSは、中学生以下の子どもとその家族のためだけの専用エリア「ファミリーゲームパーク」を設置していますが、2019年から小学生に加えて中学生と同伴保護者も入場無料にしています。

VRの存在感は、やや低下気味

 近年のゲーム業界の主な話題はVR(仮想現実)とeスポーツです。TGS2019でもVRとeスポーツのブースが多数出展されました。VRは2016年の「VR元年」にさまざまなデバイスやソフトが導入され、一気に国内に普及しています。

VRコーナーの様子(画像:コンピュータエンターテインメント協会)

 バンダイナムコアミューズメント(港区芝浦)の「VR ZONE SHINJUKU」(新宿区歌舞伎町。2019年3月閉業)や「MAZARIA」(豊島区東池袋)、セガエンタテインメント(大田区大森本町)の「SEGA VR AREA AKIHABARA」(千代田区外神田)など、VRが体験できる専用施設が都内を中心に次々に開発され、テーマパークや遊園地にも積極的にVRアトラクションが導入されました。

 ミュージアムでも新しい展示手法としてVRが取り入れられました。現在は初期のニーズが一巡した感もあり、周辺機器や大型装置も出展されて活気のあった前回と比較すると、今回のTGSでは存在感がやや低下しています。一方のeスポーツは関連ブースの小間数が前回の倍以上に増え、存在感が増しました。

プレイヤーのプロ化が進むeスポーツ

 改めて説明すると、eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ」の略称で、ビデオゲームの対戦を野球やサッカーなどと同列のスポーツ競技として捉えたものです。

東京ゲームショウの会場の様子(画像:コンピュータエンターテインメント協会)



 海外で人気が拡大したエンターテイメントで、海外の状況を説明すると、ゲームはFPS(一人称視点でプレーするシューティングゲーム)やRTS(戦場においてリアルタイムで起きていることにプランを立てて対処するゲーム)が主流です。

 主なeスポーツの大会は日本円で総額億単位の高額な賞金が設定され、プレイヤーはプロ化が進んでいます。現在はオリンピックへの参加を目指しており、スポーツの中の1ジャンルとして、立ち位置を確立しようとしています。

 ゲーム大国と呼ばれる日本ですが、eスポーツはVRと比較すると中々普及しませんでした。当初団体が複数あったためJOC(日本オリンピック委員会)に承認されず、国際的なスポーツ大会に選手を日本代表として派遣することができませんでした。

 また、国内では景品表示法などにより高額な賞金の大会が開催できない可能性がありました。しかし、2018年2月1日(木)に「日本eスポーツ協会」「eスポーツ促進機構」「日本eスポーツ連盟」の3団体が合併し、新たに「日本eスポーツ連合」(JeSU。中央区日本橋茅場町)を設立。プロライセンスの発行や賞金制競技大会の開催を行い、8月にはインドネシア・ジャカルタで開催されたアジア競技大会のデモンストレーションへ日本選手団を派遣しました。

メディア報道により認知拡大

 2017年までeスポーツの認知度は低い状態でしたが、2018年には新聞やテレビメディアがその市場規模の大きさを積極的に報道したため、一般にも認知が拡大しました。

 現在は「LFS 池袋 esports Arena」(豊島区東池袋)や「e-sports SQUARE AKIHABARA」(千代田区外神田)などeスポーツ専用施設がオープンし、プロゲーマーを養成する専門学校や専門コースも次々に開設されています。

 2020年の4月にはスタジオ、スクール、ストアからなるeスポーツ複合施設「コナミクリエイティブセンター銀座」(中央区銀座)がオープン予定です。更にeスポーツを振興する自治体もでてきており、eスポーツをビジネスにしたい人、職業にしたい人などが中心となって盛り上がりを見せています。

遅れるプロ競技としての基盤整備

 一方で、一般のゲームユーザーの視点から見ると、eスポーツが謳う新しいエンターテイメント性というものが今ひとつ伝わっていない感もあります。

eスポーツが進出し始めたラスベガス(画像:写真AC)



 実際のところ日本のeスポーツと海外のeスポーツでは様相が異なっています。海外のeスポーツで高額賞金がかかる大会は、前述のようにFPSなどのPCゲームが主流ですが、日本では格闘ゲームやパズルゲームなど従来からあったコンシューマーゲーム(Nintendo Switch、PlayStationなどの家庭用ゲーム機のゲーム)の大会がそのままeスポーツを冠しています。

 日本ではコンシューマーゲームが強いため、海外と比較してPCゲームのユーザーやファンが少なく、eスポーツの基盤となる層が薄い実情もあるでしょう。しかし、日本では元々コンシューマーゲームの大会は盛んであり、ショーアップもされていました。確かに賞金額は数百万円レベルまで上昇しているので、それによってプロゲーマーが増加して活性化し、興行としての完成度が上がっていくということかも知れません。

 残念ながら今回のTGSではeスポーツの面白さよりも、プロライセンスを拒否した優勝者への賞金減額及び、中学生の優勝者への賞金減額問題が話題になってしまいました。プロライセンスは公認大会で上位入賞すると発行されますが、結果的にプロライセンスの有無が賞金の線引きになってしまったことに疑問を持つ人も多くいます。今の状況は急速にビジネスが拡大した一方で、プロ競技としての基盤整備が遅れている印象を受けます。

期待される関連団体の今後

 しかし、これはeスポーツにとっては良い機会なのかもしれません。この問題に対して、一般の人やゲームユーザー、ゲーム業界の人たち、その他各方面からさまざまな意見が寄せられました。eスポーツに関連する団体や企業はこの意見を取り入れ、誰もが納得できる大会運営を共有できるようになってくれればと思います。

キッズゲームパークの様子(画像:コンピュータエンターテインメント協会)

 いずれにしても、eスポーツというキーワードによって業界が活性化しつつあることは事実であり、それによって従来のゲーム大会が見直されたり、ショーアップされたりすることはファンにとっては嬉しいことです。よりファンが共感できるエンターメインメントを提供していってほしいと思います。

 日本のゲーム業界には、新たな動きが見られます。皆さんもお近くのゲームセンターや新しい施設を利用してみてはいかがでしょうか。

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