小池都知事「感染爆発の重大局面」発言から一夜 翌日の銀座はいったいどうなっていたのか

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小池都知事「感染爆発の重大局面」発言から一夜 翌日の銀座はいったいどうなっていたのか

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内田宗治

フリーライター、地形散歩ライター、鉄道史探訪家

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小池都知事が25日夜に「感染爆発の重大局面」発言を行った翌日、旅行ジャーナリストの内田宗治さんが銀座を歩きました。いったい普段とどのように変わったのでしょうか。

変化はさまざまな所で起きていた

 小池都知事が3月25日(水)夜、「感染爆発 重大局面」を宣言しました。できるだけ自宅で仕事をすることも要請。テレビではこの会見が何度も放映され、これまでにない危機感を抱いた人も多いのではないかと思います。

 翌26日、筆者(内田宗治。旅行ジャーナリスト)が銀座を訪れると最初は拍子抜けした気分でした。銀座中央通りを往来する人の数は、普段の平日とさほど変わらないからです。日中の数時間見た限りでは、せいぜい1~2割少ないか変わらないかといった程度です。

銀座4丁目交差点。前夜の「重大局面」宣言があっても、人通りはさほど減っていないように見えた。2020年3月26日撮影(画像:内田宗治)



 しかしこれはあくまでも第一印象であり、よく見ていくとさまざまな所で変化がありました。

1月下旬とどう変わったのか

 これまで筆者は新型コロナウイルスが流行してから2回、銀座の様子をアーバンライフメトロでリポートしてきました。

 武漢でパンデミック(世界的大流行)が起きているものの、春節の真っ最中で中国人旅行者が多かった1月28日(火)の記事「中国人観光客で変わらぬ活況、団体旅行停止、初日の銀座を歩く」などです。そのときと比較しながら見てみましょう。

 最も印象的だったのは、免税店です。正午過ぎに銀座三越8階の「Japan Duty Free GINZA」(中央区銀座4)を訪れたとき、来店客は0でした。ここにはコスメや香水、ブティック、酒、タバコ、時計、美容機器といったコーナーに、見渡す限り50人近くのスタッフがいますが、来店客の姿が見えないのです。

銀座三越の免税店の表示。2020年3月26日撮影(画像:内田宗治)

 東急プラザ銀座8~9階には「ロッテ免税店 東京銀座店」(中央区銀座5)があるのですが、こちらは3月18日(水)~31日(火)まで新型コロナウイルスのため一時休業となっています。

外国人観光客はほとんどゼロ

 銀座の中央通りでも象徴的なのが、アップルショップが休業となっていることです。

休業中のアップルショップ。中央通りでも目立つ存在ゆえ、ドアの張り紙に目をやる人が多い。2020年3月26日撮影(画像:内田宗治)



 1月下旬は、店内にiPhoneやiPadが約50台置いている中、その倍以上の来店客が入店しており、「少し混雑した通勤電車」といった状態でした。中国人客も多い中、スタッフの多くはマスクをしていなく、はたから見ていて心配になったほどです。早々と休業したのもうなずけます。

 中央通りに面した店も、やはり来店客が少ない店が大半のようでした。1月の春節時に見られた、中央通りに観光バスが何台も止まる光景が遠い夢の中のように感じられます。

 すなわち銀座では仕事関係の人は通常とさほど変わらず、日本人のショッピング客は大なり小なり減り、外国人観光客はほとんどゼロになってしまったように見受けられました。

都内での消費額はどのくらい損失したのか

 先日、2月の訪日外国人旅行者数が発表されました。前年同月比58.3%減の108万5100人でした。この数字もかなり衝撃的ですが、3月はもっと大きく減るのがほぼ確実です。

 ここで数字を三つ並べてみます。

・2019年の訪日外国人旅行消費額(日本全国):4兆8113億円
・同年の外国人延べ宿泊者数(日本全国):1億143万4710人泊
・同年の外国人延べ宿泊者数(東京都内):2473万5660人泊
 
 東京都での宿泊者数は全国の約24%にあたるので、おおざっぱに全国での消費額の24%が東京都で消費されるとすると、ひと月あたりの東京都での消費額は、962億円になります。

 3月に外国人旅行者が都内で962億円使ってくれるはずが、その何分の一かになってしまっているのです。

再興に求められる外国人誘致策

 これまで筆者は、観光立国政策にはリスクが伴うと主張する中で政策に反対する意見も述べてきました。今回の新型コロナウイルスの世界的流行は、想像していた感染症リスクを超えるものとなってきています。

 現在何よりも大切なのは、感染拡大を抑えることです。適切な政治的対処と医療崩壊を起こさないためのひとりひとりの節度ある行動です。

 その大前提に立った上で今から考えて起きたいことは、流行が終息したとき、日本経済を立て直すためのカンフル剤として、外国人旅行者が日本で落としてくれるお金が「特効薬」となることです。そのためには誘致策が必要です。

松屋デパート。「Welcome! 2020」の文字が今となっては悲しく映る。2020年3月26日撮影(画像:内田宗治)



 混同しないように強調しておくと、今後も再び観光立国政策を取るかどうかは、慎重な議論が必要です。上記の誘致策とは、経済のための短期的な話です。

 政府は3月10日(火)、2019年度の観光庁関係予備費35億7200万円の使用を閣議決定しました。新型コロナウイルスに関する正確な情報発信とともに、回復期に向けた基盤整備に充てるとされています。この基盤整備は適切に行うことがとても重要になります。

真の友好を生むためにも中国との協力を

 今回のことで、武漢バッシングや中国人バッシングが一部で起きました。本来は苦しいときに助け合ってこそ、その後の真の友好が生まれます。それはお互いに必ずプラスになるはずです。

銀座6丁目付近。春節中はこのあたり何台もの観光バスが駐車していた。2020年3月26日(画像:内田宗治)

 訪日観光客の増加を見込んで、各地で多数のホテルの建設が進んでいました。うまく対策を立てないと、ウイルスの流行が終わっても単なるお荷物になり、経済的回復が遅れます。

 観光立国政策に対して、長期的視点の見直しと短期的経済回復の手段としての訪日外国人誘致と、それぞれを今から考え始めておくことが求められています。

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