東京でマンション買うなら「中古リノベーション」――は今後の主流となりえるか

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東京でマンション買うなら「中古リノベーション」――は今後の主流となりえるか

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もし東京でマンションを買うなら、新築がいいですか? 中古がいいですか? 今、「中古マンションを買ってリノベーションする」という選択肢が、働き世代に少しずつ広がっているようです。

新築……供給件数が頭打ち、でも価格は高止まり

 東京を中心とする首都圏のマンション事情に今、じわり地殻変動が起きているようです。

リノベーションしたおしゃれな部屋のイメージ(画像:写真AC)



 かつて2000年代初頭には年間10万戸前後の供給があった首都圏の新築マンション。それが2019年には一気に3万戸ほどにまで落ち込みました。わずか6年前(2013年)の約5万6000戸と比べて、半数近い件数です。

 都心部での用地取得が困難になってきていることなどを背景に、前年(2018年)比で見ても15.9%減。にもかかわらず「月間契約率」は、採算ラインとされる70%を大きく下回る状況が続いているのです。これは、6000万円前後で高止まりする物件価格を消費者が嫌ってのことと言えるかもしれません。

中古……今後、魅力的な物件が出回る期待感

 一方で堅調な推移を見せているのが、中古マンションの成約件数です。2016年以降、4年連続で新築の供給戸数を上回り、2019年には初めて7000戸近く水をあけました。

新築マンション新規供給戸数を中古マンション成約件数の推移(画像:不動産研究所「首都圏マンション市場動向」および東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向」を基にULM編集部で作成)

 供給戸数の頭打ちと価格高止まりが予想される新築に対して、今後もストック増加が見込まれる中古マンション。今後、首都圏のマンション市場において中古購入は主流な選択肢となっていくのかもしれません。

「紋切り型の間取り」に違和感があるのなら

 こうした流れのなかで注目を集めつつあるのが、「リノベーション」です。築年数の経過したマンションを購入して自分の好みに合わせて改装するという住まいの選び方が、首都圏、特に東京で徐々に浸透しつつあるそうです。

理想の住まいの間取りを描くイメージ(画像:写真AC)



 住まい用のマンション購入を検討する年代といえば、結婚し第1子が生まれるかどうかといった頃合いの30代後半から40歳前後が今のボリュームゾーン。

 彼らにとって新築物件は、価格が高くてどうにも手が出しづらい。無理して手に入れたとしても、間取りは似たような“紋切り型”が多くて自分らしい暮らしを想像しづらい……。そうした違和感に応えてくれるリノベーション物件は、自分なりの生活スタイルやこだわりがある東京の働き世代と、確かにとても相性が良さそうです。

理想の暮らしに合わせて間取りをオーダーメイド

 さてあらためて、リノベーションの利点は大きく3つ。

1.新築より安い
 請負型マンションリノベーションで業界1位のリノベる(渋谷区渋谷)によると、同社顧客の平均リノベーション単価は1043万円(2018年度)。

 首都圏中古マンションの成約価格は、築20年を経過した時点で新築時の半値ほどに下がり、25年経過以降はほぼ下げ止まる傾向。例えば新築時に5000万円台半ばだった物件は、20数年後には2000万円ほどに落ち着くため、上記のリノベーション費用と合わせても新築マンション購入と比べて相当価格を抑えられるのだとか。物件としての価格がそこから大きく下がらないのも利点のひとつといいます。

2.駅近物件を選べる
 都心の新築マンション用地取得が難しくなるなかで、中古マンションでは駅近かつ面積広めといった「掘り出し物」物件がしばしば現れます。

「通勤・通学に便利なアノ駅で徒歩5分以内のマンションに絶対住みたい」というふうに、住みたい場所を軸に物件を探す購入希望者にとっては、当該駅で新築物件が出るのを待つより中古物件を見つけて生活に合った改装を施す方が住居選びの近道といえそうです。

リノベる渋谷本社のショールーム(2020年2月12日、遠藤綾乃撮影)

3.生活スタイル・希望に合った間取りを実現できる
 若い世代がリノベーションマンションを選ぶ理由で多いのが、これ。自分の趣味や家族との距離感に合わせて一から間取りを決められる点は新築にない大きなメリットと言えそうです。

 リノベるブランド戦略部の千葉剛史さんにここ最近のリノベーションのトレンドについて尋ねたところ、

・ワーキングスペース
・対面型キッチン
・室内窓
・玄関の広い土間スペース

などを教えてくれました。

 特にワーキングスペースは、2020年東京五輪・パラリンピック、さらには新型コロナウイルスなどの影響でにわかに導入企業が増えている「テレワーク」を行うために、自宅内に設けたいと希望する人が東京で増加傾向にあるのだそう。

間取りが家族の仲をより深める、って?

 かつて「書斎」といえば、ほかの部屋から区切られた小さな作業部屋を指すことが多かったようですが、最近のワーキングペースはリビングの一角に作り付けのデスクを設けるといった、オープンな場所に置くのがトレンド。なかには、夫婦と子どもふたりの4人全員が横一列に並んで宿題をしたり本を読んだりできるデスクをリクエストした家族もいるといいます。

「対面型キッチンもそうですが、家族とより近い距離で過ごしたいと考える人が増えているというのが印象です。古いマンションや新築マンションは、部屋数を確保するために室内を細かく区切る間取りのものが多いですが、リノベーションをするお客様は、部屋と部屋との間の壁を取り除いて、リビングなどの共有スペースを広く確保する人が多いです。新築ではなかなか見つけられない大胆な間取りもかなえられるのがリノベーションの魅力のひとつですね」(千葉さん)

 また寝室や子ども部屋に設ける「室内窓」は、おしゃれなだけでなく外窓のない部屋にも効率的に明かりを取り込めるという点から積極的にお薦めしている造りのひとつだそう。

室内窓のあるリノベーション物件のイメージ(画像:写真AC)



 リノベーションマンションというと、ちょっと前までは「カーサ ブルータス」とか「&プレミアム」とか(どちらもマガジンハウス社発行のおしゃれ雑誌)に登場するようなクリエーティブな仕事に就いているオシャレ都会人たちの特権かのように思われていましたが、東京で家を探す私たちにとって案外身近な存在になりつつあるようです。

「新築神話」が絶対だったのは、日本の人口が爆発的に増え、住宅の供給が急ピッチで行われていた頃の話。間取りに自分らしさや個性を反映させるという発想のなかった当時と違って、多額のローンを組んで新築物件にこだわるよりも自分の思い描く暮らしをかなえる家を――と考える人が増える今、中古マンションのリノベーションは、ちょっと検討してみたくなる主要な選択肢のひとつとして台頭しつつあるのです。

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