4月に復活 ドラマ『半沢直樹』ロケ地から見る「演出の妙」とは

2020年4月から再開する堺雅人主演の連続ドラマ『半沢直樹』シリーズ。そのロケ地について、法政大学大学院教授の増淵敏之さんが解説します。


続編は『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』がベースに

 以前、2020年4月からTBSで堺雅人主演の連続ドラマ『半沢直樹』シリーズが再開するという情報が流れました。

2013年に放送された池井戸潤原作のテレビドラマ『半沢直樹』(画像:TBSテレビ)



 年当初の1月3日(金)には、吉沢亮主演のスペシャルドラマ『半沢直樹Ⅱ エピソードゼロ 狙われた半沢直樹のパスワード』が放送され、2月からは、『半沢直樹』のオリジナルオーディオドラマ『TBSラジオ オリジナルドラマ『半沢直樹』敗れし者の物語 by AudioMovie』(毎週火曜、全8話)の放送が始まりました。

 どうやら『半沢直樹』シリーズの続編は原作者である池井戸潤の小説『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』がベースになるようです。

前回の瞬間最高視聴率は46.7%

 振り返ってみると、2013年7月7日から9月22日まで放送された前回の『半沢直樹』は、第1部「大阪西支店編」、第2部「東京本店編」の二部構成・全10話が放送されました。

 第1部は『オレたちバブル入行組』(文藝春秋。2004年12月発売)、第2部が『オレたち花のバブル組』(同。2008年6月発売)をベースにしていました。

ドラマの原作となった『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』(画像:文藝春秋)

 皆さんご存じのように、劇中に使われた「倍返し」は一躍流行語となり、ビデオリサーチによれば、最終回は関東地区、世帯、リアルタイムで42.2%の平均視聴率を記録、平成の民放ドラマ史上1位となりました。

 テレビドラマが視聴率2桁の死守に苦戦する時代、瞬間最高視聴率も46.7%とまるで奇跡のようなドラマでした。

ファンのロケ地巡りも活発に

 これだけ支持を受けると、ロケ地巡りも当然活発になります。

 前回は、半沢直樹の勤める東京中央銀行西大阪支店の外観に使われた梅田阪急ビルを始めとして、同支店の屋上は梅田スカイビルの空中庭園展望台、ヒルトンプラザウエストのカフェ、道頓堀(以上、大阪市)、万博記念公園(大阪府吹田市)、東六甲展望台(兵庫県西宮市)などへ訪れる人も多かったようです。

東京中央銀行西大阪支店の外観に使われた梅田阪急ビル(画像:写真AC)

 もちろん大阪が舞台でも東京のロケ地を使っていますし、また合成という技術も使っています。

本社はさまざまな建物の組み合わせで表現

 東京中央銀行本店も、さまざまな建物を組み合わせています。

 外観は三井本館で、高層部の一部はYUITO 日本橋室町野村ビル(以上、中央区日本橋室町)です。

 内部は、学士会館(千代田区神田錦町)。取締役会はここで撮影されており、最終回で香川照之演じる大和田常務が半沢直樹に土下座させられた場所も同館の201号室です。おそらく銀行の格というか、威厳を保持するためには絶妙の組み合わせではないでしょうか。

 現在の三井本館は、1902(明治35)年に完成した旧三井本館が関東大震災で被災後、1929(昭和4)年に再建されたものです。アメリカのトローブリッジ・アンド・リヴィングストン事務所が設計、ジェームス・スチュワート社が施行しました。

東京中央銀行本店の外観に使われた三井本館(画像:写真AC)



 外観は新古典主義建築と言われるデザインで、イタリア・ヴェネチアの大理石が使用されています。まさに戦前を代表するモダン建築で、かつては旧三井財閥の本拠として、三井合名本社、三井銀行本店、三井物産本社、三井鉱山本社が入居していました。

重要文化財と登録有形文化財という重み

 また学士会館の旧館は1928(昭和3)年に、新館は1937(昭和12)年に建てられたものです。

学士会館の外観(画像:写真AC)

 旧館は、ネオロマネスク建築で高橋貞太郎、佐野利器(としかた)の設計とのこと。増築した新館は、後に三菱地所の社長になる藤村朗(あきら )です。朗は1903(明治36)年、日光の華厳滝に身を投げた藤村操の弟です。操はそのときの遺書「巌頭之感(がんとうのかん)」でよく知られた存在です。

 この場所にあった東京開成学校が東京医学校と合併して、現在の東京大学が創立します。そのため、学士会館の正面玄関脇には「東京大学発祥の地」の碑があります。学士会館は東京大学を始めとする旧7帝大だった大学出身者の親睦と地域交流を目的として建てられたのです。

 三井本館は国の重要文化財、学士会館は登録有形文化財に指定されていますが、ともに長い歴史のある東京の歴史的建造物です。

 三井本館は1932(昭和7)年、当時の三井合名理事長だった団琢磨がビルの玄関で右翼団体・血盟団の凶弾に倒れ、戦後は連合国軍総司令部(GHQ)が1945(昭和20)年から1947(昭和22)年まで、4~5階の一部を接収していました。

 学士会館には1936(昭和11)年の「二・二六事件」の際、第14師団東京警備司令本部が置かれ、太平洋戦争中には屋上に高射機関銃陣地が設けられ、終戦後はやはりGHQに接収され、高級将校の宿舎や将校クラブとして使用されていました。

 こうして調べてみると、三井本館、学士会館はともに変転する東京の歴史に寄り添ってきた貴重な建造物だということがわかります。

テレビドラマは「リアルを組み合わせること」で成り立つ

 前述のとおり、東京中央銀行本店のロケ地はこれらの建物を組み合わせて、撮影されています。

 テレビドラマはフィクションですが、あくまで「リアルなものの組み合わせ」です。つまりリアルなもの同士を組み合わせると、実在の場所ではなく、架空の場所になり得るのです。

 外観は三井本館なのに、内部は学士会館――そのような建物は世界中どこを探しても、ありません。

 視聴者はドラマを通して、これらの建物をどこかで見たことがあるように感じるものの、「新たな場所」が提示されるため、好奇心が膨らみ、想像力がかき立てられ、作品の楽しみ方の幅が広がるのではないでしょうか。

 日本テレビ系テレビドラマ『知らなくていいコト』でも、主人公が働く東源出版社の外観は日証館(中央区日本橋兜町)でしたが、その編集部はおそらくセットでしょう。いずれにしても組み合わせの妙です。

日証館の外観(画像:写真AC)



 さて4月からの『半沢直樹』ですが、原作のひとつ『ロスジェネの逆襲』から推測するに、物語は、前回最終回で半沢が出向させられたセントラル証券から始まるでしょう。

 もうひとつの原作『銀翼のイカロス』では、半沢は東京中央銀行本店に再び戻りますので、三井本館や学士会館の再登場が期待できます。また、前作になかったどのようなロケ地が登場するのか、今からとても楽しみです。


【画像】似てる? 漫画バージョンの『半沢直樹』を見る

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