早稲田や横浜国大も導入 「共通テスト」使った合否判定から見る、さまよえる一般入試の行方
コロナ禍で入試方法の変更もやむなし 新型コロナウイルスの感染拡大は勢いが衰えることのないまま、夏を迎えました。大学はこれまでオンライン授業を導入するなど、既存の教育体制に劇的な変化が起きていると言っても過言ではありません。 授業だけではなく、これから本格化する入試についても、多くの大学がその安全性について苦慮しています。 受験開催のリスクや受験生の感染懸念を考え、2020年度からセンター試験に代わる「大学入学共通テスト」を使って合否の判断を行うことを決めた大学も出ています。 実施初年度から大役を担う大学入学共通テストですが、国語と数学の記述式問題の導入は見送られ、従来のマーク式が継続。一方、資料を使った思考力を問う設問が増加するため、センター試験と比べて受験生の負担が増えると予想されています。 手探り状態の大学入試 夏以降、多くの大学がクリアしなければならないのが、総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜(旧推薦入試)を皮切りにスタートする秋入試です。 これらの入試は感染リスクを考慮し、文部科学省が大学側に対してICT(情報通信技術)を活用したオンライン面接やプレゼンテーションを導入するよう配慮を求めています。 結果、受験生と大学教職員が実際に顔を合わせることなく、自己推薦書や小論文、そしてオンライン面接等で合否を判断する流れに。大正大学(豊島区西巣鴨)は従来の対面式入試のほかに、オンライン形式の入試も並行して行うことを発表しました。 大学受験のイメージ(画像:写真AC) こうした入試変更の動きは、最大の山場となる私立大学の一般入試や国立大学の2次試験にまで及んでいます。 早稲田大学や横浜国立大学の決断早稲田大学や横浜国立大学の決断 試験範囲を狭める大学が続出するなか、2021年2月に大学で行う一般選抜に関して、早稲田大学(新宿区戸塚町)は7月31日(金)、受験生が新型コロナウイルスに罹患(りかん)したり、濃厚接触者となって欠席したりする場合は、大学入学共通テストで合否を判断すると発表しました。 横浜国立大学(横浜市)は前期後期ともに個別試験を中止し、大学入学共通テストで代替えすることを決めています。 新宿区戸塚町の早稲田大学(画像:写真AC) 早稲田大学は休校措置の判断も迅速で、何かとその対応が注目を浴びていることから、一般入試の代替案についても他の大学の追随が考えられます。 大学入学共通テストのみのメリットとデメリット 従来のセンター試験は「暗記に偏っている」として、大学入学共通テストは学生の思考力、判断力、表現力をみる新たなテストとして導入された経緯があります。 事前に行われた試行調査では、国語だけでなく数学でもグラフやポスター、会話文などの資料を使って解く出題がありました。 大学入学共通テストは、センター試験よりも受験生の総合力を見極めることができるとのことから、大学側も「大学入学共通テストで判断する」という思い切った決断を行えたと言えるでしょう。 横浜市の横浜国立大学(画像:(C)Google) それでは受験生は大学入学共通テストに向けてひたすら努力すればよいのかというと、そう簡単ではありません。 特に現役生は3月から5月末までの休校措置で学習の遅れに不安を抱えており、遅れを取り戻すことだけでなく、新テストの問題をスピーディーに解くために、資料の読み込み作業に慣れる必要もあります。 それと並行して、基本問題や応用問題を解いて学力のボトムアップを図らなければなりません。これではやることが多すぎて、焦ってしまう受験生も決して少なくないでしょう。 一般入試対策が無駄になる可能性も一般入試対策が無駄になる可能性も 志望校が私立大学の場合、大学入学共通テストのほかに大学が行う一般入試を受験し、合格を目指すわけですが、秋以降に急きょ入試内容が変更する可能性もあり、そのような状況で勉強することを強いられています。 前述の早稲田大学のように、新型コロナウイルスに罹患または濃厚接触者になった受験生は大学入学共通テストで合否が決まるため、各大学の過去問を解くことが無駄となる可能性も否定できません。 大学受験のイメージ(画像:写真AC) 全国から受験生が東京に集まることを考えれば、感染の有無ではなく、大学入試そのものが中止され、新テストの結果を持って合否を決める動きが加速することも十分考えられます。 私立大学を第1志望にしている受験生は、各大学の過去問よりも大学入学共通テスト対策に力を入れなければならないケースも考慮しなければならないのです。 例年以上に神経質な受験シーズンに 新型コロナウイルスの感染拡大による入試内容の変更は致し方ない部分もありますが、私立大学の過去問を解いていた受験生や、国公立大学の2次試験で逆転を狙う受験生の努力が水の泡になることもあり得ます。 大学受験のイメージ(画像:写真AC) 受験生や保護者は志望校のホームページを常にチェックし、緊急時に備えてあらゆる入試パターンを考えて心の余裕を持って臨む必要があります。 2020年度は、例年以上に神経質な受験シーズンを迎えそうです。
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