実は秋冬が旬!老舗鰻屋の娘が選ぶ「外さない江戸前鰻屋」(前編) | 江戸グルメ(1)

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実は秋冬が旬!老舗鰻屋の娘が選ぶ「外さない江戸前鰻屋」(前編) | 江戸グルメ(1)

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上方と肩を並べるまでに食文化が花開いた江戸。そこに端を発する東京発祥のグルメには、時代を超えて人々に愛されてきた「本当に美味しいもの」がたくさんあります。本連載でそれらを「江戸グルメ」として紹介していきます。まずは、江戸の食の四天王のひとつ、うなぎです。

旬は秋冬、「土用丑の日」はうなぎ屋の夏の商業戦略だった?

 江戸の食の四天王と言えば、寿司、天ぷら、蕎麦、うなぎ。このなかで、一番古くから食されてきたのがうなぎだそうです。

夏バテ予防として夏場によく食べられるうなぎ。脂ののった旬の季節は秋冬とされる。写真はイメージ(画像:龜屋一睡亭)。



 うなぎは夏が旬の食べ物と思われがちですが、実は最も美味しい旬の季節は脂肪を蓄える秋冬といわれています。その一方で、夏場に人びとがうなぎを食すようになったのは、平賀源内(1728〜1780、本草学者・戯作者)発案によるうなぎ屋の「商業戦略説」がよく知られています。

 これは、夏はうなぎが痩せていて売れないことから、とあるうなぎ屋が源内に「どうしたら売れるか」とアドバイスを求めたことに端を発します。これに対して源内は、うなぎが滋養強壮に良いことから「本日は土用の丑、うなぎ食うべし」と書いた看板を店前に出すように言います。それが当たって、大勢の人が店に押しかけ、夏バテ予防の風習として根付いていったという説です。

 もっとも、今は昔と違って流通しているうなぎはほとんどが養殖。うなぎ屋さんのなかには、「一年を通してあまり味は変わらない」という人もいます。しかし、「水温が下がる秋冬の方が、脂がのっている」「うなぎは肉厚な秋冬にしか食べない」といったうなぎ屋さんの声も多く聞かれました。これは、どういう状態でうなぎを養殖しているかによるようですが、少なくとも夏が旬と言う人がいないのは確かです。秋冬に食べてみれば、その答えがわかることでしょう。

「2日に1度うなぎを食べていた」うなぎ屋の娘が選ぶ店は

 かつて深川などで天然ものがよく獲れ、江戸前名物となったうなぎ。その調理方法は、背開きにして頭を落とし、その後、白焼きにして蒸します。蒸し上がったらタレをつけて焼き上げますが、あっさりしたタレが江戸前うなぎの特徴です。
 
 関西ではうなぎを腹開きにして白焼きにし、蒸さずにそのままタレをつけて焼き上げ、最後に頭を落とします。トロっとした甘いタレを使用するのが特徴です。江戸前うなぎは、「蒸す」という関西よりひとつ多い工程が、味わいのバラエティをより広げています。

江戸前うなぎ。背開きに、蒸しとあっさり目のタレが特徴(画像:龜屋一睡亭)。



 都内にはかなりの数のうなぎ屋あり、どこで食べるか選択に迷うところ。そこで、東京で確実に美味しいうなぎを食べられる店を、静岡の老舗うなぎ屋の娘であったKさん(70)に聞きました。

 Kさんは子どもの頃、夏は2日に1度うなぎを食べるという、その生い立ちならではの贅を味わってきました。結婚するまで実家のうなぎ屋を手伝い、東京へ嫁いで40年余り、都内のうなぎ屋の食べ比べをしてきたという、いわばうなぎと共にある人生。この話を聞いた時、ニホンウナギが絶滅危惧種になったのは、Kさんの消費量に一因があるのではないかと思ったほど……。

 そんなKさんに、都内の江戸前うなぎ屋ベスト3の選出をお願いしました。「美味しい店がたくさんありすぎて、難しいですね〜」と言いながら、「あそこは関西風」「待たされる上に、味に特徴がなく高い」「最近、味が落ちた」などと容赦ないコメントを発して絞り込み。結果、6店がノミネートされました。

 このうちの3店は、かなり「高嶺」ならぬ「高値」のうなぎであったため、比較的利用しやすい価格ながら、レベルの高い3店を紹介します。

夏目漱石の小説にも登場、江戸末期創業の老舗

 3選のひとつめは、東銀座にある「竹葉亭本店」。1866年創業の老舗です。料亭風の店構えが敷居高く思えるかもしれませんが、新館にあるテーブル席は気楽に利用できる雰囲気です。テーブル席はうな丼などの単品を食べる客用で、コース料理がお座敷利用となります。

 お座敷は旧館にあり、昭和初期に建てられた日本家屋です。その離れは大正期の建物で、こちらもコース料理用のお座敷があります。

竹葉亭旧館の離れにあるお座敷。大正期の建築で、古き良き日本家屋の佇まい(2018年10月11日、宮崎佳代子撮影)。



竹葉亭旧館の庭。奥に離れがある(2018年10月11日、宮崎佳代子撮影)。

 案内された旧館のお座敷は、庭への出入り口に障子が1枚あるのみで、ガラス戸がありませんでした。したがって、庭を眺めながら食事をとるのに、「夏は蚊取線香が必需品なんです」と竹葉亭専務取締役の別府 融さんは笑います。しかし、蚊取線香の煙くゆるお座敷でうなぎを食す、というのも風情があるのではないでしょうか。

 竹葉亭本店は食通としても知られる芸術家の北大路魯山人(きたおおじろさんじん)が若き頃に足繁く通い、夏目漱石の『吾輩は猫である』にも登場する名高き店です。多くの文人や美食家を魅了し、約150年続いてきた老舗の流儀にはさぞかし様々なこだわりがあるのだろうと思いきや、「昔と変わらない味を保つこと。それくらいです」と至ってシンプルな別府さんの答え。

 百聞は一見にしかずと、まずはう巻きから。ほんのり甘いだし巻き玉子がふんわりと焼きあがっていて、旨みたっぷりのうなぎと醤油のかかった大根おろしとの味わいの妙を楽しめます。白焼きもふっくらと蒸しあがっていて、質のいい脂ののりが上品な味わい。

だし巻き玉子でうなぎの蒲焼を巻いたう巻き 1500円。(2018年10月11日、宮崎佳代子撮影)。
串打ちして焼いた後に蒸した白焼き 2000円。醤油とワサビをつけて食べる(2018年10月11日、宮崎佳代子撮影)。

 そして、うなぎ料理の横綱、うな丼をまずうなぎだけで味わってみました。皮目にほんのりと炭の香りが漂い、焼きの芳ばしさと蒸しの柔らかさ、肉厚な身のジューシーさを同時に堪能できる、いい焼き加減と味。

 次に、優に1世紀は生き延びている、継ぎ足しのタレが染み混んだご飯をひと口。色合いは少し濃いめに見えましたが、食べるとあっさりちょうどいい濃度でした。

 それではと、うなぎをご飯と共に頬張ると、複層的な美味しさが口のなかで炸裂。この味とうなぎ1匹で2900円(税抜き、以下同)とは、コスパの高さに驚きます。

大ぶりの漆塗りの器に盛られたうな丼 2900円。香の物と吸物付き(2018年10月11日、宮崎佳代子撮影)。

 本店では、これらうなぎ料理にベストマッチの日本酒として、白鷹と山丹正宗を独自に調合した、竹葉亭オリジナルブレンド(600円)を用意しています。あっさり目のタレを邪魔せずに、うなぎの味わいを深める、ライトな口当たりの辛口でした(提供は本店のみ)。

 昔と変わらない。今の時代、それが最も難しいことかもしれません。調理法や味、日本家屋の佇まい、サービスの品質、そして価格帯。すべてをひっくるめて、100年以上愛されてきた「いつもの味」が最大のこだわりというのがうなずけるお店でした。

 3選の残りの2店も、うなぎそのものの味に徹底的にこだわる名店です。紹介は後編にて。
 
(後編に続く)

●竹葉亭本店
・住所:東京都中央区銀座8丁目14-7
・アクセス:各線「東銀座駅」4番出口から徒歩約10分
・営業時間:月曜〜土曜 11:30〜14:30(L.O.)、16:30〜20:00(L.O.)
・定休日:日曜、祝日
・料金:昼/コース7500円、9500円 夜/コース11000円、13000円、14000円 ※税・サ10%別、一品料理もあり。

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