都会人に「ボルダリング」が一気に広まった社会的背景

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都会人に「ボルダリング」が一気に広まった社会的背景

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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さまざまな都市型アスレチック施設が求められる昨今、その最新トレンドを文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

狙うは子連れファミリーのニーズ

 オリンピックイヤーを目前にし、何かとスポーツに注目が集まっています。自分も何か体を動かしたいと考える人は、多いのではないでしょうか。

 以前はゴルフやテニス、スキーなどのスポーツレジャーが人気でしたが、道具にお金がかかる、場所が遠い、そもそも一人前にできるようになるには練習が必要などの理由から、現在は敬遠されがちです。フィットネスを除き、都市部において身近で気軽に楽しめるスポーツレジャーは意外と限定されるものです。

 新しい都市型スポーツレジャーが求められるなか、スポーツクライミングやトランポリンなど、新しいアスレチックスポーツから構成されるプレイグランド(遊び場)の開発が拡大しています。

スポーツクライミングを行う女性のイメージ(画像:BOULCOM)



 これらは従来のアスレチックよりもレジャー性が高く、誰でも比較的すぐに参加でき、子連れファミリーやグループの利用が多いといった特徴があります。

 近年、このようなアスレチック施設は都市型スポーツ業態として注目されており、大型商業施設にとっては、かつての大型アミューズメントセンターのように大きな面積を占めて集客核となる目新しい業態です。

 また商業施設のターゲットである子連れファミリーの集客も期待できるため、今後大型商業施設への導入が加速すると推測されます。

都市生活者に受け入れられたスポーツクライミング

 都市型アスレチックの中で先んじて施設開発が活発化したのがスポーツクライミングです。

アスレチックに挑む子どものイメージ(画像:写真AC)

 ボルダリングの名前で知られているスポーツクライミングは、2000年代に入ってから都市部で普及し始めました。厳密にいうと、ボルダリングはスポーツクライミングの競技のひとつで、制限時間内にコースをどれだけクリアできるのかを競う競技。一般人には、スポーツクライミングはボルダリングの名前で認知されているケースが多くなっています。

 スポーツクライミングは、新しいスポーツをしたいという都市生活者のニーズにはまり、施設形態が比較的柔軟でいろいろな場所に出店しやすいこともあり、一気にジムが増加しました。

 カラフルな壁がアイキャッチになって、なんの施設か気になった人も多かったことでしょう。ただしスポーツクライミング単体だと、基本的には施設面積も大きくなく、集客力も限定的でした。

熟練度に関わらず誰でも遊び感覚で参加可能

 アスレチック系施設に大型集客装置としての期待が高まるようになったきっかけのひとつは、2012年に開発された「有明そらスタジオ(そらすた)」(江東区有明)です。建設用資材を扱う日建リース工業(千代田区神田猿楽町)が同年7月14日(土)から9月2日(日)までの期間限定で開催しました。

 そらすたは日本初の重力体感アトラクションイベントと銘打ち、ジップライン(張られたワイヤロープのラインに滑車を掛けて滑り降りる遊び)やブレイブジャンプ(命綱1本で地上11mから飛び降りるアトラクション)、超難解3D迷路など、さまざまなアスレチック系アトラクションから構成。ちょっとしたテーマパーク感覚で楽しめる内容でした。

豊洲で開催された「UGOKAS」(画像:日建リース工業)



 マスコミにも取り上げられ、話題に。同社は豊洲に場所を変えて2013年に「豊洲そらスタジオ(そらすた)」(同区豊洲)、さらに2015年にも同じく豊洲で「UGOKAS(ウゴカス)」を開催しました。

 そらすたやUGOKASは高い所に登ったり、高いところを滑ったり、飛んだり跳ねたり、非日常的な爽快感やスリルのあるアトラクションで、大人も楽しめることが特徴でした。

 特に道具を準備する必要もなく、熟練度に関わらず誰でも遊び感覚で参加でき、スポーツと言うより体験型アクティビティと言った感じです。都心立地で利用しやすいことも評価されました。

都市部にある潜在的な市場

 都市部におけるスポーツレジャー市場の潜在規模は大きいと推測できます。

 都心では子どもが公園で遊ぶことも難しくなってきており、都市公園の多機能化によってボール遊びなどが禁じられるところも見られます。

 大人も従来のスポーツレジャーにはあまり興味を持っていませんが、ITストレスが高い現代社会人は体を動かしてリフレッシュしたい、体を使って遊びたいというニーズが底堅くあります。

子どもが遊べない公園のイメージ(画像:写真AC)

 今はこのようなニーズの受け皿となることを目指して、施設開発が活発化している状況と言えるでしょう。すでに遊園地などのレジャー施設では、子ども向け知育アスレチックやジップラインの導入が進展していますが、都市部において開発することによって、より潜在的な市場を引き出せると考えられます。

雨天でも遊べるのもポイント

 2017年4月21日(金)には、バンダイナムコアミューズメント(港区芝浦)が常設のインドア施設として「SPACE ATHLETIC TONDEMI(スペース アスレチック トンデミ)」を「イオンモール幕張新都心」(千葉市)にオープン。その後、平和島店(大田区平和島)、桑名店(三重県桑名市)が続けてオープンしています。

都市型アスレチック施設「SPACE ATHLETIC TONDEMI HEIWAJIMA」のイメージ(画像:バンダイナムコアミューズメント)



 トランポリン、ロープウォーク、クライミングウォールなどからなり、構造物をカラフルで遊びのあるデザインにするなど、アスレチックのレジャー性を高めています。インドア施設にしたこともポイントで、雨天でも遊べる施設として利用が拡大しました。

2019年も次々にオープン

 2019年も商業施設内に次々にアスレチック施設ができています。今はトランポリン関連施設の開発が活発です。

「trAmpoland TOKYO BAYSIDE(トランポランド トーキョー ベイサイド)」は4月22日(月)に「マリナガーデン新浦安」(千葉県浦安市)内にオープンしたトランポリン専用の大型アスレチック施設で、ビッグトランポリン、ダンク、エアーバッグ、ドッジボールなどのトランポリン系アトラクションから構成。そのほかに板橋区板橋、埼玉県新座市にあります。

「マリナガーデン新浦安」内にオープンした「trAmpoland TOKYO BAYSIDE」の屋内イメージ(画像:トランポランド)

「グリーンアロートランポリンパーク 袖ヶ浦駅前店」は8月8日(木)に「ゆりまち袖ケ浦駅前モール」(千葉県袖ケ浦市)内にオープンしたボルダリング、クライミング、トランポリンパーク。AR(拡張現実)トランポリンやセグウェイ、卓球もあります。そのほかに東京や千葉に8店舗があります。

 また、「NOBOLT(ノボルト)」はゲームメーカーのタイトー(新宿区新宿)が運営するアスレチック施設で、9月14日(土)に「マリノアシティ福岡」(福岡市)にオープンしました。

 面積は約4000平方メートル、高さ約20mからなる国内最大級の屋内型施設で、国内初の屋内4階層構造のロープマウンテンや、13mの高さから滑空するバードグライダー、クライミングウォール、トランポリンなどがあります。

安全性の管理、気をつけて

 このようにさまざまな施設が開発されていますが、単なるスポーツコンプレックスではなく、誰でも達成感や爽快感が味わえるアミューズメント性の高いスポーツレジャー施設にニーズがあると考えられます。

くれぐれもけがには気を付けよう(画像:写真AC)



 ただし、特に訓練していない人が比較的危険なアクションを行うわけで、安全性の管理にはくれぐれも気をつけていただきたいと思います。

 今後もいろいろなスポーツが注目される機会が多くなるにつれ、このようなアスレチック施設の利用拡大が期待されるでしょう。体を使って遊びたくなったら一度利用してみてはいかがでしょうか。

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