首都圏女性の「ひとり中華」が飛躍的に増えている時代背景

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首都圏女性の「ひとり中華」が飛躍的に増えている時代背景

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稲垣昌宏

ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員

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外食市場に関する調査を行う「ホットペッパーグルメ外食総研」の上席研究員 稲垣昌宏さんが、女性の「ひとり外食」に関する調査結果を基に最近のトレンドを解説します。

女性の「ひとり外食」を後押しする、就業率の向上

 労働力人口の減少が危惧されるなか、政府は「1億総活躍社会」などのキャッチフレーズとともに就業率アップを目指してきました。とりわけ女性の就業率には、注目が集まっています。

 東京都の労働力調査では、2008(平成20)年から2018年の10年推移で、15歳以上人口に対する就業率が約8ポイントの上昇(48.4% → 56.1%)となっています。

 同じ10年で男性の就業率(73.2% → 73.6%)は1ポイント未満しか上昇していないことと比べても、この10年でいわゆる「女性の社会進出」は東京などの大都市圏で確実に進んでいると言ってよいでしょう。

ひとりで中華料理を楽しむ女性のイメージ(画像:写真AC)



 女性の社会進出に伴う食への影響として、内食(自炊)が減少し、中食(持ち帰り、デリバリーなど)や外食の実施率の増加が挙げられます。

「ホットペッパーグルメ外食総研」では、2012年10月から毎月、首都圏・東海圏・関西圏の3圏域で約1万人に夕方以降の外食・中食の相手や場所、予算などについて調査を行い、その結果を分析して発表を行ってきました。

 今回はそのデータの中から、女性の「ひとり外食」について、2015年度から2018年度の3年間での増減や変化の内容をご紹介したいと思います。

過去3年で女性の「ひとり外食」は14.2%も増加

 まず、女性全体の延べ外食回数ですが、こちらは2015年度が推計6億7937万回(3圏域計)に対し、2018年度は6億8059万回とほぼ同じ水準(0.2%増)となっています。

 これを基準に、同じ年度で女性の「ひとり外食」の延べ回数を見ると、2015年度(4496万回)と比べた2018年度(5135万回)の数値は、14.2%の増加となっており、女性全体の外食回数が横ばいの一方、ひとりで食べる機会が増えていることがわかります。

 さらに、女性のなかでも会社員などの「就業者」に限って「ひとり外食」の延べ回数を見ると、2015年度(2358万回)と2018年度(3092万回)の比較では31.1%の増加となっています。

女性の「ひとり外食」における、職業と飲酒有無別の外食回数の推移<推計値(万回)>(画像:リクルートライフスタイル)



 ちなみに調査対象者のプロフィルを見ると、この3年間で女性の就業者は12.9%の伸び率となっています。就業者は1割強の増加なのに対し、就業者による「ひとり外食」はそれより大きく、3割以上も伸びたということになります。

「仕事をすることでひとりの夕食が増える」というのは何となく想像はつくものの、あらためて数字で確認すると、その影響力の大きさには調査をした側も驚かされました。

 外食産業のなかには、ひとり暮らしの男性をターゲットにしていると思われる業態も多いなか、これからは女性の「ひとり外食」も成長が期待される市場ということが言えそうです。

伸び率の高い業態は「バー」や「中華」

 では、具体的にはどのような業態で女性の「ひとり外食」が増えているのでしょうか?
 データの信頼性を担保するため、シェアが1%以上ある業態に限定して、この3年間(2015~18年度)における女性の「ひとり外食」の延べ利用回数と伸び率を集計しました。

 まず、女性の「ひとり外食」において最もシェアの高い業態は「ラーメン、そば・うどん、パスタ、ピザ等の専業店」(16.9%)です。

 続いて「ファストフード」(12.5%)、「喫茶店・カフェ」(11.0%)、「ファミリーレストラン、回転すし等」(11.0%)と続き、この4業態で利用の過半数を占めています。

 一方、伸び率に注目すると、「バー、バル、ワインバー、ビアホール、パブ」(対2015年度比47.7%増、以下同)、「中華料理店(ラーメン専業店は除く)」(41.7%増)、「焼肉、ステーキ、ハンバーグ等の専業店」(37.2%増)、「ファミリーレストラン、回転すし等」(31.2%増)、「牛丼、カレー等、一品もの専売業態」(28.2%増)、「居酒屋(焼鳥、串焼き、串揚げ等飲酒メインの業態を含む)」(26.9%増)などが、2~5割近くの伸び率を見せています。

女性の「ひとり外食」で利用されている業態<延べ外食回数・推計値(万回)>(画像:リクルートライフスタイル)



 近頃は女性の「ひとり○○デビュー」などが話題になることが多いようですが、上記のような業態でひとりデビューを果たしているワーキングウーマンも多いのかもしれません。

「ひとり飲み」も増加傾向に

 前述の「利用が増えている業態」にも飲酒メインの業態がいくつかランクインしていましたが、女性の「ひとり飲み」もまた増えているのでしょうか? こちらも答えはイエスです。

 2018年度の女性就業者の「ひとり外食」の延べ回数のうち、「飲酒あり」は延べ425万回(対2015年度比41.8%増、以下同)、対して「飲酒なし」は延べ2667万回(29.6%増)と推計されました。

 比率でいうと、女性の「ひとり外食」のうち飲酒を伴う「ひとり飲み」は、1割強のシェアしかなく食事オンリーのケースのほうが圧倒的に多いのですが、伸び率で見るなら「飲酒あり」のほうが圧倒的に高くなっています。

女性の「ひとり外食」の、対2015年度比で見た増減(画像:リクルートライフスタイル)



 全てのデータをつなげると、この3年間で女性全体の外食数は横ばいのなか、女性の就業者は12.9%増加し、「ひとり外食」は14.2%伸び、就業者の「ひとり外食」は31.1%増え、就業女性の「ひとり飲み」は41.8%伸びた、というわけです。

 就業と飲酒の関係は、直接的に因果関係があるかどうかはわかりませんが、少なくともこのデータからは、仕事のストレス発散や気分転換でお酒の力を借りる機会が増えているように思います。

 仕事社会 ≒ 男性社会 ≒ ストレスがたまるのは当たり前……という常識がいまだ根強い日本社会で、女性の社会進出がその風潮を変えていくきっかけになることを願っています。

●調査概要
調査方法:インターネットによる調査
調査対象:20~69歳の男女、首都圏は東京都(一部除外)、神奈川県(一部除外)、埼玉県(県西の一部除外)、千葉県(県東、県南の一部除外)、茨城県の一部に在住(おおむね90分通勤圏)者が対象
調査対象:夕方以降で1日2軒までの外食・中食
調査期間:2018年4月~2019年3月までの毎月
有効回答数:首都圏月平均5749人、首都圏延べ外食数23万2948件(各ウエィトバック後人・件数)

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