環境問題って、やっぱり「意識高い系」? ひねくれ記者がサステナビリティについて聞いてみた

「サステナビリティ」「ていねいな暮らし」という耳障りが良い言葉に対して、これまで疑問を持っていたというライターの秋山悠紀さんが、インフルエンサーに直接訪ねました。


サステナビリティ「自分に関係ない」と思っていた記者

 近年、「持続可能性」を意味する「サステナビリティ」「サステナブル」という言葉を、よく耳にするようになりました。海洋汚染を引き起こすプラスチックごみや、まだ食べられるのに廃棄されてごみとなる食品ロスをいかに削減するかなど、持続可能な地球環境や社会に向けた取り組みは世界的に進められています。

 世界的なトレンドとなり、多くの人が関心を持ち始めたサステナビリティ。しかし筆者はどうしても、積極的にサステナブルな生活を実践する気になれません。プラスチック製品の使用を控えたり、朝起きて家庭菜園で育てた野菜をかじってみたり……。そんな雑誌で見るような「ていねいな暮らし」を、「現実味のない、自分とは関係のないもの」と遠目から眺めている節さえあるのです。

 なぜ、サステナブルをそのような歪んだ目で見てしまうのか――。理由を探るべく12月10日(火)に行われた、繊維商社の豊島(名古屋市)が環境保全団体のWWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン。港区三田)との提携を発表した記者会見を取材するため、同社の東京本社(千代田区神田岩本町)に向かいました。

石油産業の次に環境汚染をしているファッション産業

 国連機関によると、ファッション業界は製造の際、大量の水を使い、人間の活動による二酸化炭素(CO2)排出量の約10%を占めるとのこと。ファッション産業は石油に次ぐ“世界で2番目の環境汚染産業”と呼ばれており、今まさに「大量生産・消費」から「サステナブル(持続可能)な生産・消費」への早急な転換が求められています。

イベントで登壇した鎌田安里紗さん(画像:秋山悠紀)



 こうした問題に国内でも先駆け的に取り組んできたのが、1841(天保12)年に創業した繊維商社の豊島です。記者会見では、代表取締役社長・豊島半七さんや執行役員・溝口量久さんが登壇、同社が手掛ける食品廃棄物を再活用したプロジェクトブランド「フードテキスタイル」や、綿花農家の顔までわかるというトレーサビリティ(追跡可能)が担保されたトルコオーガニックコットンを使った製品などを紹介しました。

 そして今回、日系企業として初めてWWFと提携することも発表。WWFジャパン自然保護シニアディレクター・東梅貞義さんは、繊維業界における環境負荷の高い水に関する「水スチュワードシップ(受託責任)」の推進と、サステナブル素材の調達に関する自社における改善目標の設定など、具体的な稼働について説明しました。

 また、サステナブル素材としての条件を満たすファッション製品の拡大のため、複数のファッションブランドを巻き込んでのプロジェクト、イベントなどを実施していくそうです。

サステナブルファッションは多様だった

 記者会見では、自然環境や社会への影響を意識する「エシカルファッション(環境問題、労働問題、社会問題に配慮したファッション)」を発信しているモデルの鎌田安里紗さんがゲストとして登壇。鎌田さんは渋谷や原宿からファッションの生産背景を考えるプロジェクト「ファッションレボリューション」の事務局も務めています。

再生セルロース繊維を使ったサステナブルなセーター(画像:秋山悠紀)



 ファッションレボリューションに関して、年を追うごとに大きくなる盛り上がりや10~20代の一般参加者の多さから、「私たち世代は小さなときから物が豊富にある時代を生きているからこそ、デザインや価格などわかりやすい基準以外の視点で洋服を選ぶようになっている」と語りました。

 実際に豊島の製品を見た筆者が、まず驚いたのはその種類の豊富さ。樹木パルプのみからできる再生セルロース繊維を使ったセーター、製造過程における水の使用量を約65%減らしたデニム、廃棄食材を再活用した染料で染めたTシャツ、使い古したふとんを再利用して作ったダウンなどがありました。

 思っていたのと全然違う――。筆者が思う環境に配慮したファッションとは、麻を使ったシャツや自然由来の原料を使った染め物のような“東南アジアやインドが好きで、フェスによく行きそうな人が着る服”の画一的なイメージだったからです。

 サステナブルファッションやエシカルファッションとは使用素材だけではなく製造過程なども含めて、あらゆる手段や技術によってさまざまに作られているものなのだと、筆者は再認識しました。

「サステナブル」でも思考停止はダメ

 記者会見終了後、鎌田さんにエシカル・サステナブルなファッションにおける東京の現在地などについて詳しく聞きました。

イベントで登壇した豊島半七代表取締役社長(画像:秋山悠紀)



――そもそも、鎌田さんがエシカル・サステナブルなファッションに興味を持ったのはなぜでしょうか。

 上京後にモデル活動をしながら、「渋谷109」(渋谷区道玄坂)でアパレル販売員としても働いていました。ちょうど私が働き始めた2008(平成20)年頃は、ファストファッション(低価格で、流行を素早く取り入れたファッション)が主流化した時代。ファストファッション自体は良いのですが、それによって消費者のマインドが変わってしまったことを危惧していました。

――危惧とは?

 ファストファッションによって、似たようなデザインで低価格帯の服が大量生産され、どこでも買えるようになりました。安いからとりあえず買って、着なかったら捨てればいいという思考停止状態を作り出したとも言えます。

 物を大切にしない不健全さがファッション業界にまん延していることに、疑問を持ちました。エシカルファッションに対して全ての人が興味を持つべきとは思いませんが、情報が届いていないだけの人も絶対いるはず。だから、情報発信の必要性を感じています。

――私はどこかで、「ていねいな暮らし」をすることに拒否感を持っていたり、地球環境に対する意識が高い人への距離感があったりします。

 誰かがパッケージ化した「ていねいな暮らし」「サステナブル消費」をそのまま受動するのは、ファストファッションと中身は何も変わっていません。なので、思考停止状態で「私、ていねいな暮らししてます」「地球にいいことしてます」という発信を揶揄(やゆ)したい気持ちは私にもわかりますね。本当にサステナブルな行動をしたいなら、パッケージを受け取るのではなく、考える時間を持って、選択肢ややり方を模索する必要性があると思います。

 エシカルファッションを発信していると、「何を買えばいいですか?」とよく聞かれるんです。でも、「人によって違います」としか答えられません。素材を重視する人もいれば、長く着られる品質を選びたい人、ネットフリマで服を循環させたい人など、人によってサステナブルへの価値観は異なります。消費行動やライフスタイルはひとりひとりが考えた上でその人らしさや納得感を得られなければ、それこそ持続可能なものにならないのではないでしょうか。

渋谷パルコに期待

――思考停止ですか……。これまでサステナブルや「ていねいな暮らし」を実践する人になぜ苦手意識があったのが、少しわかった気がします。最後に、11月22日オープンした渋谷パルコにはサステナブルゾーンが作られました。この渋谷パルコのゾーンが、東京や日本全体に果たす役割として期待することはなんですか?

 施設の集客力を使って、関心層ではない人にサステナブルを知るきっかけを作る、東京ならではのやり方だと思います。エシカル・サステナブルファッションのブランドにすでにファンがいて、そのお店に人が集まるようなヨーロッパではあまり見られない動きですね。渋谷パルコの一角にそうしたゾーンができたというのは、他の施設も後に続く可能性もある。渋谷パルコが、東京ならではのサステナブルファッションの発信のスタンダードになっていくのではないかと期待しています。

※ ※ ※

 今回、ファッション業界が地球環境に与えている影響やサステナブルファッションの多様性を知った筆者は、服に使われている素材そのものよりも、自分の肌に触れるこの服の繊維をどのような人が作っているのかという、生産者の方が興味があることに気付きました。

 サステナブルの選択肢ややり方はひとつではなく、誰かが「こうすべき」と強制できる絶対的なものもありません。筆者のようにサステナブルに対して「意識高い系w」と距離を感じていた皆さんも、まずは考えてみることから始めてみませんか?


【画像】本当に廃棄食材で染めたの? ビビッドかつサステナブルなTシャツの数々

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