聖地巡礼の「聖地」とは何なのか? マンガ・アニメの都内シンポジウムでじっくり考える

2019年に「東アジア文化都市」として選定された豊島区でこのたび、シンポジウム「マンガ・アニメの『聖地』をどう考え、どう生み出すか」が開催されました。


日中韓による都市間文化交流プロジェクト

 2014年にスタートした、日中韓による都市間文化交流プロジェクト「東アジア文化都市」をご存知でしょうか。これは3か国の文化大臣の合意に基づき、文化芸術発展を目指して毎年選定する都市および行われる事業です。

 日本ではこれまで、横浜や新潟などが「東アジア文化都市」として選定されてきましたが、2019年は東京で初めてとなる豊島区が選定。これを受け、2019年は豊島区内でさまざまな文化事業が行われてきました。

シンポジウム会場の様子(画像:秋山悠紀)



 中でも筆者が注目したのは、11月に豊島区役所本庁舎(豊島区南池袋)で行われた、マンガ・アニメのイノベーターや業界のリーダーによる講演企画「国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima」。その企画のうちのひとつ、シンポジウム「マンガ・アニメの『聖地』をどう考え、どう生み出すか」を取材しました。

地方と東京における「聖地」の違い

 シンポジウム「マンガ・アニメの『聖地』をどう考え、どう生み出すか」に登壇したのは、“聖地巡礼プロデューサー”として活動する聖地会議(大田区)の柿崎俊道さん、2012年に「京都国際マンガ・アニメフェア(京まふ)」を立ち上げ、ネットメディア「マンガ新聞」を運営する菊池健さん、大日本印刷の岩川浩之さん、そして「東アジア文化都市 2019 豊島」で事業ディレクターを務める山内康裕さんです。

シンポジウムに登壇した(左から)柿崎さん、山内さん(画像:秋山悠紀)

 聖地とはもともと、特定の宗教や信仰を持つ人にとっての本拠地や始まりを意味する場所。しかし最近では、アニメやマンガのファンが作品の舞台となった場所、キャラクターや漫画家本人の所縁のあるスポットを比喩的に「聖地」と捉え、そうした場所を巡ることを「聖地巡礼」と呼ぶことが一般的になりました。

 柿崎さんは、ファンやコスプレイヤーが活躍する場やグッズ販売所、イベント開催地、アイドルのサイン会、プロモーションの場など、「マンガ・アニメの『聖地』は『さまざまな役割』を持つ」と言います。柿崎さんはかつて千葉県鴨川市と協力し、アニメファンから「ご神木」と呼ばれる原画を移設するなど、文化財の保管場所としての可能性も感じてきました。

 一方で、地域復興や観光資源としての印象が強い地方の「聖地」と、東京の「聖地」では存在意義も全く異なっているそう。柿崎さんは、「東京は電車で行きやすい場所に点在しているので『聖地巡礼』がデートコースになるが、地方はたいていアクセスの悪い場所に大人数がレンタカーで乗り入れて行くので、もはや修行。地方では巡礼することでおのずと作品への『信仰心』が芽生えるが、東京の『巡礼』はそこまではいかない」とその違いについて説明します。

東京のコミケでは毎回、無数の「聖地」が生まれている?

 柿崎さんはまた、「作品が再現されたミュージアムや再現された制作物、作品にはひもづかない情報共有の場所さえも『聖地』になる可能性がある。コミケなんかは、毎回無数の『聖地』が生まれていると言っていい」と、東京国際展示場(東京ビッグサイト)で年に2回開催されるコミックマーケット(コミケ)の持つ、「聖地」としての無限の可能性を指摘しました。

 一方、市ヶ谷に「東京アニメセンター in DNPプラザ」(新宿区市谷田町)を構えるなど、国内外の施設や教育機関と連携してアニメの情報発信や人材育成事業を手掛ける大日本印刷(新宿区市谷加賀町)の岩川さんは「聖地」を「マンガ・アニメの発信・交流拠点を有する場所」と定義。

シンポジウムに登壇した(左から)岩川さん、菊池さん(画像:秋山悠紀)



 さらに「東京以外では集客が見込めないので難しい」と言われてきたマンガ・アニメイベントを京都で成功させた菊池さんは、その経緯を説明。立ち上げ時は東京のアニメイベントが分散化していたことや京都という街のブランド力など、「京まふ」がマンガ・アニメの「聖地」として定着してきた貴重な話がありました。

 四者によるクロストークでは、豊島区の活動についてスポットが当たります。

 豊島区と言えば、手塚治虫や赤塚不二夫など著名な漫画家が居住したトキワ荘が有名です。またサンシャイン60の西側にある、女性ファン向けのアニメグッズや同人誌を扱う店舗が密集した“乙女ロード”と呼ばれる通りの存在や、2020年3月には、トキワ荘の再現施設「トキワ荘マンガミュージアム」のオープンも控えるなど、都内でも屈指のマンガ・アニメの「聖地」です。

 しかし、山内さんは「東京の中でも中心地のひとつという街の特徴を生かして、もっと解像度を上げていく必要性を感じている」と豊島区の課題を指摘。続けて、「コンテンツ産業の事業者と地理的に近いメリットを活かしてアニメイトやドワンゴなどと連携したファンイベントや、今回のような文化的にもビジネス的にも目を向けたカンファレンスの実施が大事になってくる」と今後の展開を説明しました。「かつてトキワ荘があった」「腐女子の聖地」という現在の価値以上の、よりサステナブル(持続可能)な「聖地」としての未来を見据えていました。

2020年3月オープン「トキワ荘マンガミュージアム」の存在意義

 シンポジウム終了後、「東アジア文化都市 2019 豊島」で事業ディレクターを務める山内さんに、「マンガ・アニメの都市」として豊島区が目指すことについて詳しく聞きました。

シンポジウム会場の様子(画像:秋山悠紀)



――まず、今回の東アジア文化都市2019豊島に際し、なぜ「マンガ・アニメの『聖地』をどう考え、どう生み出すか」というカンファレンス(会議)を行ったのですか。

 近年、マンガ・アニメの地域活性において、「聖地」という言葉が良くも悪くも気軽に使われようになりました。だからこそタイミングで「聖地」について改めて掘り下げ、マンガ・アニメの地域活性にあたって、都市と地方の意義づけの違いを議論する必要性を感じたので開催しました。

――山内さんが考える、豊島区が「マンガ・アニメの『聖地』」たりうる理由はなんでしょうか。

 かつて豊島区にあったトキワ荘は一側面から見ると、あの時代にマンガ業界を切り拓いた漫画家のインキュベーションプラットフォームでした。つまり、豊島区はマンガ・アニメ界を支える土台がすでにあること、さらに首都の中心地のひとつであることから、文化と産業を結びつけるプラットフォームにもなり得る。豊島区は、世界から注目されるマンガ・アニメを、文化・産業の両面で支えて価値を担保できる、随一の都市になるポテンシャルがある街だとも言えると思っています。

――2020年オープンする「トキワ荘マンガミュージアム」は、どんな役割を果たすのでしょうか。

 マンガ・アニメを過去・現在、そして未来につなぐ、またトキワ荘の再現施設として過去の文脈を適切につなぐ場所です。一方、未来のマンガ・アニメの可能性を感じ取れる場所としても機能すると思っています。「道」を切り拓いたトキワ荘の先人の歩みを伝える役割と、マンガ・アニメの次の「道」を社会実装する役割、その両面ですね。そうして生き続ける「トキワ荘」の精神は、トキワ荘そのものやトキワ荘にいた漫画家の作品を知らない若年層にも伝わるのではないでしょうか。

 近年、池袋は「女子」のアニメの街として認識されてきました。しかし2020年夏にオープンするハレザ池袋を中心とした官民連携の取り組みによって、そのすそ野はさらに広がるでしょう。世界から注目される「男性も女性も集まるアニメの街 = 池袋」として、さらに発展すると思います。

※ ※ ※

 行政の力を最大限生かし、より大きな枠組みでマンガ・アニメの「聖地」としての機能を目指す豊島区。2020年は今以上の存在感が、日本のみならず世界に発信されていくのかもしれません。


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