東京で就職も、夫は転勤族で退職。そんな私が『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んで気づいたこと

  • ライフ
東京で就職も、夫は転勤族で退職。そんな私が『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んで気づいたこと

\ この記事を書いた人 /

宮野茉莉子のプロフィール画像

宮野茉莉子

ライター

ライターページへ

大学進学した女性のキャリア形成の現実について、ライターの宮野茉莉子さんが持論を展開します。

出産した途端、途切れたレール

 現在30~40代の女性は、「女性でもいい大学に入って、大企業に就職を」といわれた世代でした。北関東の田舎に生まれた筆者も同様で、周囲には大きくわけて東京の大学、県内の大学、医療系の学校に進学、もしくは公務員に就職する友人に分かれました。

 そのレールが続いたのも「出産」まで。子どもを産んだ途端、そのレールは途切れてしまったのです。大学に進学した筆者は、その後、東京で就職。結婚後、夫が転勤族のため、退職しました。

韓国で社会現象を巻き起こした『82年生まれ、キム・ジヨン』(画像:筑摩書房)



 現在は未婚・非婚の人たちが増えていますが、まだ「結婚・出産が当たり前」といわれる時代。「大学、就職、結婚、出産」は、世間一般で言われる「乗っていれば幸せになれる安定のレール」のはずでしたが、途切れていると気付いたのは出産後でした。

 産後「ママ」となった女性は、就職が一気に難しくなります。転職エージェントの話では、就職に「土日祝休み」「17時退社」「子どもの病気による急な休み」「子どもの人数」は大きなネック。数打ちゃ当たる作戦で行かなければ、正社員はかなり難しいとのことです。

 ママの中には20代に正社員で勤務していた女性も多いため、安定や給与面を考え、「正社員に戻りたい」という声も少なくありません。それでも育児と家事の両立を考えれば、パートにならざるを得ません。「人生で一番稼いだのは20代かも」という声も思わず出てきます。

経験しなければ分からない就職・結婚・出産

 子どもの手が離れたと思えば、今度は自分が40代後半~50代に。前出のエージェントは「30代は即戦力、40代は管理経験がないと正社員は難しい」といいます。育児と年齢の天秤に揺さぶられながら、「女性は自分のキャリアは諦める」が日本の現実なのです。

 それどころか実際は新卒から男女のふるいにかけられていたことを、韓国で社会現象を巻き起こした『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)を読み気付かされました。1984(昭和59)年生まれの筆者は、キム・ジヨンと同世代。金融関係の地域限定職として就職した筆者。思えば就職の時点で総合職は男性ばかり、地域限定職は女性ばかりでした。

キャリアアップのレール上に立つ女性のイメージ(画像:写真AC)



 まだまだ女性は生きづらい日本。言われたレールを歩んできたものの、レールが途切れ「こんなはずじゃなかった!」と叫びたい女性も多いのです。

「産む前に考えて」という声もあるでしょう。ただ「就職・結婚・出産」という大きな決断を、世間の現実を知らない20代で決めるには簡単ではありません。就職も、結婚も、出産も、「経験しなければ分からない」のが本当のところではないでしょうか。

 時代は変わり、結婚すれば安泰ではなくなりました。女性も男性並みに稼ぐことが求められる現代は、出産後のレールを繋げていく必要があるでしょう。

次世代のために、自分から変えていく意識を

 30代半ばで「こんなはずじゃなかった!」という段階にきて、時代にともない価値観は変化すること、また価値観にはアップデートが必要とも気付かされました。「大学、就職、結婚、出産のレール」は、30年前の価値観なのです。

 親の立場になって思うのが、「自分たちの子どもの時代には、もっと女性が生きやすくなっていてほしい」ということ。次世代のためにも、まずは自分から自分の言葉と行動を変えていこうと思います。

 今自分ができることをあらゆる選択肢を集め、多角的な視点から考えて行動していくこと。そして子どもたちも同じく「時代とともに価値観は変わる」経験をして、途切れた後もレールを歩いていくわけですから、「自分なりのレール」を作り歩いていけるよう、接していくこと。

 正解のない世の中を、どう生きていくか。難しい問いですが、30~40代はこの問いと向き合う年代でもあるのでしょう。

関連記事