墨田区の河童伝説が伝える、美しき「水辺」への親しみと畏怖
2019年10月28日
知る!TOKYO水辺にはなぜか昔から、怪談話が生まれやすいといいます。そう、たとえば河童とか。墨田区と江東区を舞台に、怪談・オカルト研究家の吉田悠軌さんがその背景を考察します。
東京の東側エリアで水にまつわる怪談が生まれた必然
2019年10月半ばに上陸した台風19号。その勢力の大きさから、テレビやインターネットではかつてないほどの注意喚起が行われました。そのなかで話題となったのが「ここにいてはダメです」との強い警告を記した江戸川区の冊子。東京の下町、いわゆる海抜ゼロメートル地帯におけるハザードマップでした。
東京の東側、墨田区や江東区、江戸川区などは、水に縁(ゆかり)の深い土地です。それは同時に、水難事故や水害という負の側面とも向かい合ってきた土地とも言えます。ここでは「怪談」というレンズを通して、東京下町と水の歴史を探ってみることにしましょう。

都市計画としての埋め立て事業は、江戸時代から盛んに行われていました。江戸(東京)の人口増加に伴って、隅田川の向こうの湿地帯が宅地へと開発されていきます。「川向こう」という言い方があるように、川を隔てた先の新しいまちは、当時どこか暗さのあるじめじめとした土地だったのだろうと想像できます。
怪談は、水場にまつわる土地で生まれやすいものです。さらに、「境界」には怪異が起こりやすいというイメージが人類共通であるようです。水場を開拓してできた、中心部から近くも遠くもない、何とも絶妙な立地。東京の東側は江戸の人々にとって、怪談を想起させやすい「すぐ近くの異界」だったのです。
その証拠に、まず埋め立て地として開発された現・墨田区の本所(ほんじょ)には「本所七不思議」なる当時の都市伝説がまことしやかにささやかれています。さらにそれらのほとんどが、水と関係する立地を舞台としているのです。

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