子育ては大変だとわかっているのに、なぜ人は子どもを産み育てるのか

電車にベビーカーで乗れば邪魔者扱いされるような現状にありながら、なぜ人々は子どもを産むのか――。ライターの秋山悠紀さんが持論を展開します。


行けない保育園、できない仕事

 子どもができると、「これでもか」と制限されるお金と時間。独身時代に比べると羽根を鎖で体にくくりつけられているような、バンザイしたい両手をグっと押さえつけられているような感覚を覚える人も多いでしょう。

 今の日本は電車にベビーカーで乗れば邪魔者扱いされ、抱っこ紐で子どもを抱っこしていればバックルを外してくる人がいます。また、妊娠中の女性や小さな子どもを連れて電車に乗っている親がいても、皆がスマホに夢中で席を譲られない光景が珍しくありません。

 このような状況で、「子育ては大変」と最初からわかっていたにもかかわらず、人はどうして子どもを欲しがり、産み、育てようと努力するのでしょうか。

子育てのイメージ(画像:写真AC)



 筆者には現在、保育園に預けている1歳の子どもがいます。夫は仕事が忙しいため、平日の保育園の送迎含め、土日も食事の用意やお風呂、寝かしつけなどはほとんど筆者が行っています。いわゆる「ワンオペ育児」です。

 2019年7月後半、子どもが手足口病に初めて感染。その看病が、どれほど大変なのか痛感しました。下がらない熱、体のあちこちに現れる発疹、痛みのせいで常にグズグズな機嫌、ご飯も食べず夜中もギャン泣きなど、筆者は連日続く寝不足で、自分自身にも病気が移らないように細心の注意を払っていました。

 病気は約2週間で治ったものの、お盆直後にはRSウイルスに感染し気管支炎を発症。血液検査や点滴、レントゲン検査などを1日がかりで受けさせ筆者はヘトヘトでしたが、同じく約2週間で完治しました。

 さらにその数日後の9月中旬には、手足口病に再び感染。結局7月後半からの約1か月半の間、筆者は毎日のように子どもを病院に連れて行き、自宅では昼夜問わずつきっきりでした。気づけば仕事は滞り、保育園にはまったく預けられず、「あぁ、預けていないのに保育料が引き落とされる……」と不安やモヤモヤを抱える日々を過ごしていたのです。

子育ては、自己満足でエゴだけど

「人はなぜ子どもを産み育てるのか」という問いへの答えは、親のエゴであり自己満足というしかありません。母親が子育ての苦労や愚痴を吐いたときにインターネット上で目にする「自分が好きで産んだんでしょう」という意見は確かに不寛容といえますが、決して間違いではありません。

 子育てとは常に「なんで今そうなるの?」「今そんなことしないで!」「いつまで続くの?」というしんどい出来事の連続です。愛しい子どもにイライラしている自分自身に、子育てに対する世間のギスギスした視線に疲弊し、絶望さえ感じることもあります。

子育てのイメージ(画像:写真AC)



 しかしそれらすべてを吹き飛ばしてくれるのが、子どもの笑顔や成長です。それらを通して、自分が親として人として成長させてもらえるのです。他人から「子育てって、何がいいの?」と聞かれたとき、このような月並みな言葉が多くの人から語られるのは、心の底からそのように感じているからでしょう。

 2018年に放送されたドラマ「義母と娘のブルース」(TBS系)で、血のつながらない娘のみゆきに義母の亜希子が幼い頃に両親を亡くした過去を打ち明けるシーンで、このようなことを言っていました。

「私は孤独を感じていた心の隙間を埋めるためにあなたを育てた。エゴで育ててきたから、恩を感じる必要などない」

 そう言われたみゆきは、「お母さん、バカじゃないの。そういうのを愛って言うんだよ」と一蹴。

 産後間もない産褥期(さんじょくき。出産後に母体が回復するまでの期間)、メンタルがボロボロになっていたときにこのシーンを見て、究極のエゴと愛を知ることができるのなら――と、少し前向きな気持ちになれたことを覚えています。

自分の子どもは「光」であり「推し」

 子どもは自分にとってどのような存在なのかを考えてみると、ふたつの言葉が浮かびます。それは「光」と「推し」です。

 出産した直後のわが子はしわくちゃで小さく、お猿さんのような顔でしたが、筆者はなぜだか光る玉のような、キラキラとした宝石のように見えました。自分の人生にこの子はどのような希望や光を与えてくれるだろうか、また自分はこの子にどれほどの幸せな人生を与えられるのだろうかと。悶えるような陣痛やお股が裂けそうな出産の痛みも忘れて、ただぼーっと考えていました。

 保育園に子どもを迎えに行くと、たくさんの子どもたちの中で自分の子どもはひとりだけ光って見えます。筆者を見つけて「やったー!」と嬉しそうなその笑顔で、仕事の疲れが吹き飛ぶのです。

子どもとの対峙から生まれる感覚

 そして自分の子どもは最強の「推し」であることに気付きました。「推し」とは、どのようなことがあっても愛し、応援し続けたい存在です。

子育てのイメージ(画像:写真AC)



 これまでの人生でアイドルやアーティストなどに夢中になったことのない筆者は、握手会に行ったり、CDをたくさん買ったり、ライブに駆けつけたりして、彼ら彼女らを「推す」心理がまったく理解できませんでした。しかし子どもという自分の人生を捧げてでも幸せにしたい存在と毎日対峙してみると、「これが『推し』なのかもしれない」と妙に納得しました。

 子育てとはそのような「推し」が自宅にいて、しかも一緒にお風呂に入れて、一緒に眠れるのです。「推し」が生まれたその瞬間から思春期、独立までの成長を、一番近くで見守ることができるのです。このようなに楽しくて幸せな状況は、きっとほかでは経験できません。だから、どんなに辛いことが待っているとわかっていても、人はこれまで子どもを産み育ててきたのでしょう。

「子育ては辛いだけ」じゃない

 現在、巷には子育てに関する暗いニュースが溢れており、結婚や子育ては「コスパが悪い」という考えの人は少なくありません。

「子育ては辛いだけ」だけでなく、「子育ては面白い」という情報がもう少し増えてほしいと思います。国の政策や労働環境に変化が求められているのは事実ですし、子育ては毎日本当に大変です。しかしわれわれ大人は、次世代に希望を与える使命を担っています。

 子育てが大変だと知っているのに、人はなぜ子どもを産み、育てようとするのだろう――そのようなことを少しでも考えれば、子どもの愛おしさや自分の愛情を再確認でき、また毎日のしんどい子育てが多少は楽になるのかもしれません。


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