変貌する調布駅周辺 「鉄道の地下化」が生んだ3つの施設と、超有名建築家が手掛ける駅前広場の未来とは

  • おでかけ
変貌する調布駅周辺 「鉄道の地下化」が生んだ3つの施設と、超有名建築家が手掛ける駅前広場の未来とは

\ この記事を書いた人 /

鳴海侑のプロフィール画像

鳴海侑

まち探訪家

ライターページへ

鉄道の地下化で、調布駅周辺が大きく変化を遂げています。まち探訪家の鳴海行人さんがその詳細を解説します。

まちを南北に分断していた調布駅

 新宿から京王線で20分弱ほど特急に揺られると調布駅につきます。多摩地区にある人口約23万人の調布市の中心です。近年この「調布駅周辺」が大きく様変わりしつつあります。

調布駅の入口の様子(画像:写真AC)



 調布駅周辺は元々、地上に京王京王線(以下、京王線)と京王相模原線(同、相模原線)が走り、駅で平面交差しながら合流していました。利便性重視のために京王線の府中方面からの列車と、相模原線の多摩センター方面からの列車が同時にやってくることもあり、その様子は鉄道ファンをはじめ多くの人に親しまれてきました。

 こうして2路線が合流する重要な駅であったものの、ホームは狭く、まちを南北に分断していました。

 そこで2003(平成15)年度から2014年度にかけて行われたのが、「調布駅付近連続立体交差事業」です。事業では1150億円を投じ、調布駅を含む京王線の2.8kmの区間と相模原線の0.9kmの区間を地下化しました。そして調布、布田、国領の3駅を地下化するとともに18か所の踏切を解消しました。

 調布駅が地下化されたのは2012年のこと。ホームは上り方面と下り方面のフロアがそれぞれ異なる2層構造となり、ホームはかなり広くなりました。そして、駅の上に広々とした地上空間が現れました。

 この地上空間を有効活用するために京王電鉄が新しい商業施設「トリエ京王調布」を開発、2017年9月にオープンしました。施設のデザインコンセプトは「“街を結ぶ”、”人を結ぶ”、“緑を結ぶ”」とし、街のランドマークとなれるような施設づくりを目指しました。この背景には人口減少時代を迎えるにあたって、「選ばれる沿線」そして「選ばれるまち」となるために沿線価値を高めたいという思いがあります。

20~30代女性向けのブランドが多く入居

 トリエ京王調布は、鉄道用地を地下化してできた土地にA館・B館・C館の商業施設から成っています。A館はいわゆる「駅ビル」らしい商業施設で、1階は食品フロアとなっており、「成城石井」を中心に「神戸屋」「アトリエうかい」といった少し価格帯が高めの店舗が入居しています。

A館の外観(画像:京王電鉄)



 エスカレーターを上がると2階と3階はファッションのフロアで、20~30代女性向けのファッションブランドが多く入居しています。外観は幅が狭い建物のように感じますが、中は広く感じます。これにはこだわりがあり、一部の棚の高さに制限を設けて広く見せる工夫をしているそうです。

 4階はライフスタイルのフロアとなっており、より多様な年齢層へのアプローチを志向しています。キッズスペースも設けられ、子ども連れの親御さんも訪れやすくしています。最上階はレストラン街となっていて、1階と併せて食に関してはかなりこだわっている印象も受けます。

建物前には、埋め込まれた4本のレールが

 B館は駅前広場を挟んで西側にあり、家電量販店がテナントとして入居しています。これは沿線住民に帯するアンケートで要望が多かったためです。

 B館からさらに西側にC館があります。建物の前には4本のレールが埋め込まれており、これは元々地上を走っていた京王線、相模原線のレールを示すものです。また、京王線の線路跡の先には「てつみち」と名付けられたパブリックスペースが設けられています。ここは子どもたちの遊び場やちょっとした時間を過ごせる木製の大きないすなどが置かれています。

 C館は1階にカフェ「猿田彦珈琲 調布焙煎ホール」が入居しています。オーナーは調布市内出身で、8店舗目となる店舗です。普通のカフェと違うのはコーヒーの焙煎機が備えられていること。焙煎機はとても大きく、その場で珈琲がつくられていく様子をみることができます。

 2~5階にはシネマコンプレックス「イオンシネマ シアタス調布」が入居しています。

「イオンシネマ シアタス調布」の内観イメージ(画像:京王電鉄)

 館内には11スクリーン・約1650席を有し、普通のシートだけではなく、体感型のシアター「4DX」やシネマ専用最高級シートを全席に配置した「Gran Theater」があるなどかなり意欲的な設備になっています。

 そして何よりも、映画は調布にとって重要なものでした。

駅前広場も整備、完成は東京オリンピック開催後

 1930年代と1950年代に調布には映画の撮影所が作られました。そのため、市内にはには映画関連企業が立地しており、映画スターも市内の飲食店を訪れていたようです。さらには映画業界出身の市長が誕生したりと調布は映画のまちとしての面をもっています。

 調布市では「映画のまち調布」をPRするイベントを度々行っていました。今回のシネマコンプレックス設置もアンケートで最も多かったという要望を受けてのことだそうです。

「映画のまち調布」をPRする調布市観光協会のサイト(画像:調布市観光協会)



 そして、現在、調布市が主体となって駅前広場を整備しています。設計は「光の教会」や東急渋谷駅の「地宙船」、「表参道ヒルズ」などの有名建築を手がけた安藤忠雄建築研究所です。同事務所は同じく調布市内の仙川駅近くで建築群を手掛けており、その折に調布駅前広場の計画を知ったといいます。

 プロポーザル方式(複数の者からの提案)による選考を経て2008(平成20)年から広場の設計に着手し、市民と意見交換のうえ作られた「庭園広場」というコンセプトでデザイン・設計を行っています。また、調布駅前の既存樹木の保存を求める声もあり、そうした市民の声を取り入れた設計変更も何回か行いました。

 完成は東京オリンピック開催後とまだ先ですが、完成すれば緑豊かでイベントスペースや大屋根の目立つ現代的な駅前広場が現れる予定です。

 鉄道地下化により新しい駅前空間の整備がすすむ調布駅周辺。今後も変化が楽しみなまちです。

関連記事