緑豊かで生活感満載? 親しみあふれる西武鉄道「短距離路線」の魅力とは

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緑豊かで生活感満載? 親しみあふれる西武鉄道「短距離路線」の魅力とは

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小林拓矢

フリーライター

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都心から郊外へ長い編成が向かう路線といったイメージが強い西武鉄道。今回はその中でも短距離路線の魅力について、フリーライターの小林拓矢さんが解説します。

あなたの西武鉄道のイメージは?

 都心からは長い編成の列車が各地へと向かってます。10両編成、路線によっては15両編成の列車に多くの人が乗車し、長い距離を通勤などで移動するさまに東京圏の活力を感じます。

 しかし、東京都内にはそれらの路線を補完するかのような短距離路線もあります。列車の頻度は少なくても地元の人に親しまれており、小さな駅や短い編成はかわいらしいものです。

 さて西武鉄道といえば、池袋線や新宿線のような、長い編成が都心から郊外へ向かう路線とイメージする人も多いかもしれません。また、銀色で球体の先頭車両が特徴的な、池袋から飯能・西武秩父へと向かう特急車両「Laview」をイメージする人もいるでしょう。

 しかし、筆者は多摩エリアを走る短距離の路線の方が魅力的と感じています。緑豊かで、かつ生活感があふれる郊外を、各駅停車の列車が単線をゆったりと走るというのにひきつけられるのです。

 そんな路線に実際に乗ってみました。

ほぼ一直線 多摩川線は気分爽快

 西武鉄道の路線でも異色なのが多摩川線です。中央線の武蔵境駅(武蔵野市境、同市境南町)で接続するこの路線は、ほかの西武鉄道の路線とつながっていません。孤立して存在しています。

新101系赤電カラー(画像:小林拓矢)



 もともとは多摩川の砂利を運ぶことをメインとして別の会社が運営していましたが、1927(昭和2)年、西武鉄道に合併されました。

 そのためか、地図上で見ると武蔵境からほぼ一直線に多摩川へと向かっているように見えます。実際はどうでしょうか。乗ってみることにしました。

珍しい跨線橋のない駅も

 武蔵境駅は中央線の高架化に合わせて高架駅となっており、1面2線のホームとなっています。普段は3番ホーム(中央線と合わせてホームの番号が振られています)から電車が発車し、ごく一部の列車が4番ホームを使用します。

 9時30分発の列車に乗ることにしました。使用車両は新101系4両編成。赤とベージュの旧「赤電」カラーの車両です。

 高架をカーブで降りていくと、まずは新小金井駅に停車します。この駅は行き違い設備を持っており、駅構内には踏切があります。いまでは珍しい、跨線橋のない駅です。

 ここからは気分よく走ります。盛り土の上を走る列車から住宅地を見下ろしながら、あるいは掘割で咲く黄色い花を楽しみながら、列車は進んでいきます。

 2020年12月に新駅舎を開設した多摩駅は、多摩川線唯一の橋上駅舎です。近くには多磨霊園(府中市多磨町)や東京外国語大学(同市朝日町)があります。

 多磨駅の前後では架線が普通の架線ではなく、幾重にも積み重ねられたような構造となっており、迫力があります。

 競艇場前をすぎると終点、是政駅に9時42分に着きました。

古い改札が残っている是政駅(画像:小林拓矢)



 是政駅は東京競馬場の南側にあり、多摩川ともほど近いです。この駅には、簡易式の自動改札しかありません。ICカードをタッチするだけのものです。そんなローカル感あふれるものがあるのも、多摩川線の魅力でしょう。

 その上、有人改札の設備も残されています。1面1線で、降りたホームからそのまま改札というシンプルな構造が、短距離路線の終着駅にふさわしいといえます。

国分寺エリアの住宅街を走る路線

 西武鉄道の短距離路線は、国分寺を起点とするエリアにある程度集中しています。国分寺線・西武園線もそうした路線といえます。

 国分寺線は、国分寺駅から東村山駅までの7.8kmの路線です。もともとは川越まで向かう路線でしたが、西武新宿線のほうから川越方面へと向かう路線がメインルートとなり、現在は支線となっています。その名残か、国分寺から本川越へと向かう列車も運行されていましたが、2019年に東村山駅の高架化工事の関係で直通を中止しています。

 この路線には、6両編成の列車が走っています。使用しているのは、2000系です。

 10時52分に国分寺駅の中央線と並行しているホームから発車すると、北へと進路を変え、恋ヶ窪駅・鷹の台駅と停車します。住宅地の中を走り、踏切が多いのが特徴です。いっぽう、歩く人と電車に乗っている人で目線の高さがあまり変わらないせいか、開放感というよりも、親しみやすさが感じられます。

 11時03分に東村山駅に到着します。たった一駅だけですが、11時08分発の西武園線にも乗ってみることにします。2000系の4両編成です。この路線は西武園競輪場へのアクセス路線となっており、あわせて周辺住民も利用しています。

 乗車すると、結構な勾配の中を進んでいます。狭山丘陵の豊かな自然の中、住宅が多くあり、生活環境のよさを感じます。

構内が広い西武園駅(画像:小林拓矢)



 11時11分に西武園駅へと着きます。駅自体は2面3線の広いホームで、普段は2番ホームと3番ホームが使用されています。ところが、乗車した列車は1番ホームに着きます。かなり珍しいことのようです。北口は西武園競輪場の利用者などが使用し、南口は地域の人たちが主に使用しています。駅近くの桜がきれいでした。

 西武園駅から東村山駅へと戻り、所沢駅を経由して西所沢駅に向かいます。いったん狭山線に乗車し、西武球場前駅へ。そこから山口線(レオライナー)に乗り、多摩湖駅へ。いったん埼玉県に出てしまいました。

 ちなみに地図で見ると西武園駅と多摩湖駅は1kmも離れていない、ということを帰ってから知りました。

鉄道と人との距離が近い路線

 多摩湖駅で山口線から多摩湖線に乗り換える際には、ホームが先頭車両同士向かい合わせとなっており、移動は簡単です。

 多摩湖線は国分寺~多摩湖間で運転される列車と、国分寺~萩山間で区間運転される列車がほとんどで、ごく一部で多摩湖から西武新宿への直通列車が運行されています。普段は9000系の4両編成が中心です。

 12時25分に多摩湖駅を出発すると、武蔵大和駅に停車。ここから国分寺線をまたぎます。八坂駅停車後は、JR武蔵野線をまたぎます。高架でまたぐので、眺めがよく気分はすばらしい。萩山では拝島線と平面で交差し、ここからは本数が増えます。あとは住宅街の中を走っていきます。

一橋学園駅南口(画像:小林拓矢)



 12時39分着の一橋学園駅で降りてみることにしました。この駅では列車交換が行われます。島式ホームで、北口・南口があり、その双方に構内踏切があります。駅近くは商店街などが充実し、多くの人でにぎわっています。

 南口では改札のすぐ目の前に構内踏切があり、電車の存在感が際立ちます。20分後の電車に乗り、13時02分に国分寺に戻りました。

 西武鉄道の短距離路線は、各駅停車のみで編成も短いですが、鉄道と人との距離が近く、親しみやすさにあふれています。いまは珍しい構内踏切があるなど、興味深いところも多いです。機会があれば、乗ってみてはいかがでしょうか。

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