スマホとテレビのダブルパンチ? 都内小学生の睡眠時間を奪い続けるIT社会の功罪
一般的にスマホやタブレットでの視聴時間が増えると、テレビの時間が減ると考えられますが、都内の小学生は違いました。その現実について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。小学生の約36%はスマホを所持 スマートフォン(以下スマホ)の普及に伴い、スマホを持っている小学生が年々増加しています。内閣府の「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、自分専用のスマホを所持している小学生の割合は35.9%に達しています。格安スマホも次々と登場していることから、買いやすさを背景に所持率は今後も上昇していくでしょう。 眠たそうな都内の子どものイメージ(画像:写真AC) 一般的にスマホやタブレットでの視聴時間が増えると、テレビの時間が減ると考えられます。このことは、都内の子どもたちにも当てはまるのでしょうか。今回は、全国規模の調査と東京都の調査から浮き彫りになった、都内の小学生の姿に迫ってみようと思います。 インターネットの利用時間は4年で15%増 内閣府が実施する「青少年のインターネット利用環境実態調査」を見ると、平成26年度から平成30年度までの4年間で子どもたちのテレビ視聴時間が減少し、代わってインターネットの利用時間が増加していることがわかります。小学生が自分専用のスマホや家族共有の端末を使って楽しんでいるのは、ゲームや動画視聴が上位を占めています。 オンラインゲームや動画視聴に欠かせないインターネットの利用時間は平成26年度で平均83.3分だったのが、平成30年度には118.2分と4年間で30分以上も増加しています。また、2時間以上利用している児童の割合も同様に増加。平成26年度では24%、4年後の平成30年度には39.4%と15ポイントもアップし、長時間の利用が顕著となっています。この傾向は東京都に住む小学生にも見られます。 眠たそうな都内の子どものイメージ(画像:写真AC) 東京都教育委員会が毎年行っている「東京都児童・生徒体力・運動能力、生活・運動習慣等調査」の結果から、携帯等での視聴時間をみると4年間で利用時間が伸びています。 例えば、小学4年生で利用が1時間未満の児童の割合は平成26年度で70.3%、28年度は72%となったものの、平成30年度は49.1%と激減しました。同じく小学4年生で携帯等で2時間以上の視聴をしている児童は平成26年度は10.5%、28年度は10%と大きな変化はなかったものの、平成30年度に24.8%と2倍になっています。 短時間利用者の割合が減り、全学年で長時間化している傾向も見られ、テレビ視聴からスマホでの動画視聴に流れていると考えるのが妥当です。 小学4年生以上の睡眠時間は減少傾向小学4年生以上の睡眠時間は減少傾向 しかし同じ調査から、小学3年生以上でのテレビ視聴が長時間化していることがわかっています。平成26年度から平成30年度の4年間で、1時間未満の児童の割合は3%減っています。一番多い1時間から2時間の視聴も2.3%の減少を見せ、代わりに2時間以上の視聴が5.2%増加しているのです。 眠たそうな都内の子どものイメージ(画像:写真AC) 都内の小学生は、テレビやスマホでの動画視聴の代わりに睡眠時間を削っているようです。東京都教育委員会は、子どもたちの睡眠時間も調べています。 平成26年度から平成30年度までの4年間で低学年では大きな変化はないものの、小学4年生以上の児童の睡眠時間減少が顕著となっています。8時間以上睡眠している割合は、平成26年度は小学4年生で68.2%、5年生は62.6%、6年生が51.6%でした。 しかし、平成30年度では4年生が60.9%、5年生で54.6%、6年生は48.1%と軒並み減少し、6~8時間や6時間未満の割合が増加しているのです。このことから睡眠時間を削って、視聴時間の増加を補っている都内の小学生の姿が浮き上がってきます。 小学生をコントロールするのは難しい 今の小学生はテレビを見ずに、Youtubeなどの動画サイトやオンラインゲームに夢中と思われがちです。しかし東京都教育委員会の調査結果から、テレビもオンラインもスマホ等での視聴も楽しんむ小学生が増えていることがわかりました。 大人でも、楽しいことを切り上げるのはなかなか難しいものです。小学生が自分でテレビやインターネットの時間をコントロールするのは、無理難題といえるでしょう。しかし成長期の睡眠時間を削ってまで行うことではありません。家庭でルールを作って徹底し、睡眠時間を確保していくことが求められています。
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